青山景『よいこの黙示録』
みんなのせかいを よりよくするために
みんなを みちびくかかり
- 作者: 青山景
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/03/23
- メディア: コミック
- 購入: 4人 クリック: 159回
- この商品を含むブログ (46件) を見る
主犯の伊勢崎くんは「自前の神が欲しいんだ」という理由で、トリックから心理的駆け引きまであらゆる手を駆使して暗躍し、主人公・湯島朝子は片棒を担がされることになってしまう。
本当に企みに荷担してしまうのか、教師としての仕事(自己保身)その他と揺れるシーンの葛藤は瞠目です。携帯の着信バイブがそのままコマ割の枠となるとか、擬音と心理描写の双方を担っていて凄い。
『QU』や、ちょっと駄目な大人のお姉さんである主人公が、それでもちゃんと教師としての仕事や考え方をしているのは見てて面白い。教育現場での児童の扱い方と、やたら子供らしくない伊勢崎の「カリキュラム(=神様作り)」の手管など、そういう人間心理をあれこれを描き出していて、よく考えるとぞっとしてしまう面も。
総勢三十名の四年二組、その中の児童たち一人一人の物語からも目が離せません。正義感で野球少年の五十嵐くんが一巻ラストのエピソードを受け持ちましたが、今後は他のキャラの内面がどう掘り下げられ、どんな物語が現れてくるのでしょう。
教祖として担ぎ出された少女・森ユリカも、彼女と中島くんの関係、最初に蛍を呼んだときの真相などなど、台風の目となりそうな予感……。
一番掘り下げられて欲しいのは、何と言っても伊勢崎ですけどね。四年生なのにえらい博識。しかも計画を思いついたのは一年前だから……八歳? 九歳? 何者やねん。
物語の冒頭は街の人々のインタビューからなので、これからこの「宗教」がとんでもない規模になり、何らかの事件を起こしてしまうことが予測できます。それは伊勢崎の狙い通りなのか、彼自身のコントロールを離れたものなのか……。そして待っているのは破滅か希望か。
小学校を舞台にした画面は一見ほのぼのですらありますが、主人公の「精液飲むのと同じぐらい苦手」なんて言い回しなどから、ここが学校だけの「閉じた世界」ではなく、大人も子供も生きているリアルの世界だと分かります。
そのリアルにヒビを入れるのは、不思議少女・森ユリカと、異端の少年・伊勢崎。可愛らしい絵柄とは裏腹のサイコサスペンス、これから先が予測できなくて、やみつきになりそうな面白さを感じる!