神林長平『敵は海賊・海賊版』

敵は海賊・海賊版 (ハヤカワ文庫 JA 178)

敵は海賊・海賊版 (ハヤカワ文庫 JA 178)

 むむむ、コイツは面白い。
 今更な話だけれど、こりゃ中高生時代に図書室で出会って、うぉーゲロ面白れー! とか叫びつつ神林長平にはまり、むさぼるように読みまくるたぐいの作品だ。ていうかそうなりたかった。
 まず冒頭の一行からして凄い。これはこういう雰囲気のお話ですよ、ということが一瞬で理解出来る素晴らしい書き出しだ。是非見習いたいものである。こんなのを初期作品で書いちゃうんだからさすが。
 でもってキャラクターも活き活きしている。好みとしては伝説の海賊・匋冥(ヨウメイ)よりも、海賊課刑事のらてる&アプロ、それにラジェンドラの三人組が好きですね。
 アプロが猫型宇宙人ってのもそうですが、食い意地が張りまくりだったり、ラテルやラジェンドラといつも口げんかしている様が楽しくてならない。宮廷の晩餐美味しそー。
 ジャンルとしては古き良きスペースオペラで、何だか絵柄が九十年代アニメで脳内再生されてしまう。
 そして内容も奇想天外。まず、海賊・匋冥にランサス星系の宮廷女官が行方不明の王女を極秘に捜してくれとやってくる。それを引き受けた匋冥を海賊課刑事が追う、と王道っぽい導入だったのですが……。
 天使と魔鬼なんてものが出てきてありゃりゃ、こいつはSFファンタジーなのかと面食らっているうちに、並行世界に飛んじゃったり、登場人物がそれぞれ二人に増えたりしてしまう。その上ラテルには突然「娘」が出来ちゃって……。何とも冒険的! もちろん王宮の陰謀なんてのも絡んできて、最後までどうなるか分かりません。
 しかしメイシア、可哀想に……。
 クラーラといい、神林さんは猫好きなのかな? だったらちょっと嬉しい。
 ところでCAWシステム、あれってもしかして……。


 確か図書館にシリーズがずらっとあったと思うので、おいおい続きも追いかけていきたいと思います。