三友恒平『とても透明でやさしいしあわせ』

とても透明でやさしいしあわせ (IKKI COMIX rare 7)

とても透明でやさしいしあわせ (IKKI COMIX rare 7)

 以前日記で書いた、『必要とされなかった話』著者の短編集。
 思ったより絵柄の変遷が大きかったが、話としてはあまり面白くなかった。もっとこう、痛々しくて激しいのを期待していたんだけれど。
 必要とされなかった〜はもうちょっとぐっと来る場面がいくつかあったんだけれど、この短編集は現在との実力差をかんがみても、いまいちな物ばかりだった。たぶんこっちから読んでいたら、単行本にも手を出さなかっただろう。
 単行本と短編集を合わせて読むと、結論としてこの作者はもういいや、という感じ。まあ次があったらちょっと手にとって見るかもしれないけれど……煽りとかちょっと褒めすぎな気がする。

誰かのための自殺をしよう

 タイトルが中二感満載だったが、ネタを知るとどうということのない発想であった。ついでにギャグ作品。
 単発のお笑いとしてはまあいいかというところで、主人公とエセミュージシャン志望娘がこの先も二人でだらだらしていくといいなあと思う。

もりびと

 この短編集では一番好きなメルヘン。もりびとがヤバイ存在なのは予想していたが、かあちゃんが結構思い切ったことしてくれたな。ラストは少年が少女と一緒に木になるかと思ったが、そうでもなくて残念。
 ネーミングセンスがなぜか戦う司書風味で良い。

雨と風の物語

 メルヘン二本目。たぶん一番画力がひどい。
 北風があんな怖い顔デザインなのはなぜだろう……。最後いい話っぽくまとめてはいるが、どうということもない、雰囲気だけの漫画という感じであまり面白くはない。画力の悪さも萎えてくるし。

しぬまで

 一本目で想像した中二っぽい話そのもの。
 世界には主人公と少女しかおらず、他の人間がどれだけ傷つこうが死のうが知ったことじゃない。んで主人公は家族の死と必要とされない自分とかそんな感じの不幸を背負ってて、うわー……とゲンナリした。
 こういうのに共感してぐっと来ちゃう年代が自分にもあったんだろうなとは思うが、そこを差し引いてもあまり上手くはない。
 主人公がアレ過ぎて、そのうち彼女が少年を拒絶する展開になるかと思ったがそうでもなく。もうちょっとまともな神経持っているかと思ったんだが。
 こういう他者を無視して狭い世界だけで完結する話、自体は必要なこともあるし、別に否定はしないのだけれど。この二人がこうなってしまうまでの痛々しさとか、明るい諦念だったり絶望感だったり恨み節だったりがどうも物足りない。村に火を付けに行こうとする道雄のほうがまだ筋が通る。
 ラストは明るく締めているが、この二人って実はもう死んでいるんじゃないかと妄想してしまうけれど。ガス爆発起こしておいてあれがちょっとあり得ない気が。

ぼくらの町のゲーム屋さん!

 おまけ漫画。作者の実体験を元にしたエッセイなのだろうか?
 ぶっちゃけ短編集で一番面白かった。これの単行本があったら手を出してしまうかもしれない。