冲方丁『ストーム・ブリング・ワールド』1・2

 泣き虫の自分は、永遠に暗いところで眠っていればいい。二度と出てこさせるものか。

 冲方丁のゲームノベライズ新装版(出たのは結構前だけど……ずっと積んでたんだよ!)。
 なぜこれがリティクされたのかよく分からないが、それなら直木賞ノミネートの時にカオレギ新装版(今は手に入れにくいらしいから)を出せば良かったんじゃね? ストブリはMFでカオレギは富士見ですけど。
 あと1・2ってなっているけど、その3とか確実に出ないですよねこれ……上下巻で良かったんでね?
 ボーイ・ミーツ・ガールの王道ストーリーに、ゲームのシステムをちゃんと戦略性のあるバトルとして小説に落とし込んだ手腕はさすがの一言。山本ヤマトさんの絵もいいですな、挿絵なくて残念。
 全体的にお手本のような作りで、言うことがあまり無い……。涙を失ったヒロインと、笑みを失った少年主人公が出会って、守ったり守られたりしてお互い失ったものを取り戻す。超王道。
 アーティが決意を秘めて敵のもとへ赴くとか、当人にとっては何気ない言動で主人公の心を動かしたりとか、これ以上なくヒロインしてる様は実に勉強になりますね。というか、世に氾濫する駄ヒロインが本来やりたかったのは、アーティのような溌剌とした嬢ちゃんではないか……と思えてくる。斬新ではないけれど、根本的な質そのものが高い。
 冲方作品でマジックボルトー! とか叫ぶ戦闘を見ることになるとは思わんかったが、これも原作つきの宿命か。そういえばピルグリやシュヴァリエの続きはまだですか……?
 うぶちんは旧作のリティクより新作や続編をもっと頑張って欲しいものです(マルスクとか何で二種類も新版出してんだよ!)。