ののやまさき, 土屋計『エンマ』8(完結)

 …だったら オレがその時まで一緒に待っててやるよ
 一緒に机に座って 一緒にお茶飲んで
 そしたら閻魔王様も淋しくないだろ?

エンマ(8) (ライバルKC)

エンマ(8) (ライバルKC)

 堂々の大団円。……ま、最後まで楚江王が小物っつーか特にきちんと〆られることもなく終わったのが不満ではありますが。
 あいつ後で牢から出られたらしいけど、閻魔王の刑執行に飛び出してこないかと期待したらんなこと全然なかったし、結局は自分の何が悪いか分かってねーままなんじゃないかなー。
 それと帝釈天が思わせぶりにしておいて傍観者してただけと、多少物足りなさのある終わりではあります。インドラの矢が出てきたし、この人ももう一役何かあったのかもしれないけれど、それが活かしきれずに尺の都合で終わったような印象。
 ただ、明かされた紙人形制度の目的、エンマと地蔵菩薩の関係、エンマの魂の行方などが全てきっちり書かれて素晴らしい仕上がりになっていました。
 何とってもラストシーンで、初めて両目の見えたエンマのまぶしい笑顔。これぞ大団円に相応しい見開きでありましょう。まあその時点では問題が一つ残っているんですが……。
 いつもは四コマが乗っているオマケページのスペースに後日談が入っており(これ、単行本書き下ろしなんかな?)、それのおかげで今度こそ安心して閉幕となります。
 とにかくエンマ可愛いよエンマ。
 そして閻魔王様が神々しすぎる。え? なに? 何で楚江王と閻魔王が同じ種族(神族?)なわけ? ってぐらい神様。閻魔王様とエンマも、いつか再会してほしいなあ。
 作中では全然登場できなかったんですが、その閻魔王様が慕うくらいだから、地蔵菩薩様も素晴らしい人なんだろうなあ……としみじみ思います。
 地蔵菩薩様が消えた理由が蜘蛛の糸だったわけですが、地獄の亡者にもああいうのがいるのなら、確かに地獄の刑罰は必要なのか疑問ですな。
 あと今まで影になって隠れていた閻魔王様の素顔が出てきましたが、やはり優しげな顔立ちですね。エンマの両目が見えた演出とリンクしてるんだろうなあ。
 オマケ的に、これまで登場した人々が転生したその後が見られるのもちょっとしたサプライズ。あの見開きページをよくよく観察して、ああこれがあの人、こっちがあの人と探すのが楽しい。
 荊軻やっぱり子供好きなんじゃんwww保育士さんかwww(しかもギュンターまで) 料理人になったお侍二人は、料理漫画ばりの素敵なクッキングバトルを展開してくれそう。
 そして転生したエンマは……うむ、こういうのちょっと見てみたかったかも。
 紙人形制度が実施されるのか、楚江王はちょっとは悔い改めたのか、ラストの地蔵菩薩様復活はいつごろのことなのか、気になる要素はてんこ盛りですが、ともかくこれで終わりであります。
 エンマ一人でも結構各地でびっくりな怪奇現象残しちゃったし、罪人全てが紙人形になったら現世が騒がしくなりそうではありますが……それもまた良し、か?
 この作者方の次回作に期待、大です!