押切蓮介『サユリ』1
「死」をおぞましくて悲しいものにさせるほど――
神様も鬼じゃないと思うんだ
- 作者: 押切蓮介
- 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
- 発売日: 2010/09/24
- メディア: コミック
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ただまあ、全体的に性急に感じられる部分が多いのが残念なところか。一話で丹念に壊れる前の家族関係を描写してはいるが、もっと回想やなんやで引っ越してくる前の生活などの描写が欲しかった。
家族が次々と狂っては死んでいく。しかも死んだ後にも凄惨な苦しみに遭っているらしく、その点はとても怖い。
何が起きているのか訳も分からないまま、ただ学校のの霊感少女が告げる「女の人」がタイトルのサユリなのだろう、と推測できる程度だ。
特にこの作品で嫌なのは、主人公の弟・俊の運命。いまや生きているのかどうか定かではないが、とにかくこの世にはいないことだけが確定している彼だが、霊感少女には俊が苦しむ声が聞こえる。
終盤のあの四ページ、たった小学五年生の男の子が受けるべきではない責めを負わされているのが伝わってきて、その「あってはいけない」おぞましさにぞっとする。
霊に取り殺された人が、死後もその霊に捕らわれて苦しむという話はよく聞くが、ここまで強烈な描写でそれを見せられたのは初めてだ。
押切作品『椿鬼』でも、姥捨て山に人を拷問して殺しては食うという鬼畜外道が住み着いていた話があるが、俊の件ではそれを思い出した。このエピソードで怖いのは、子が親を捨て、親を捨てた子がまたその子に捨てられ、親子代々連中に生きたまま切り刻まれ串刺しにされ腸引きずりだされ、たっぷりと時間をかけて殺されてから食われていって、それが長いこと続いていたらしい、という部分だったりする。
二巻で完結ということでやや詰め込みすぎというか、家族がどいつもこいつも自分の身に起きていることにあまり言及してくれないまま死んでいくので、ちょっと物足りない感はある作品。
が、真相や決着はどうなるのか大変気になります。霊感少女は何も出来ないって無力を訴えているし、せめて俊が助かるといいんですが。