裁判の傍聴に行ってきました。

 昨日の話ですが、はるばる県庁所在地まで足を運んだ甲斐があったかな。
 小説で裁判物をやりたくて資料を集めていたのですが、まあ色々後学の役に立つだろうと思い立ちまして。傍聴自体は裁判所に行けば気軽に出来るので、手軽に貴重な体験が出来る。
 まあ中身はとにかく事務手続きの極みみたいなもんで、退屈な会議のそれに近いものがありますが……というか二回目、少しうたた寝してしまった。
 裁判所内は普通にお役所の建物ーという感じか。裏口から入ったらいきなり地下一階で、やたら手狭で寂しい感じだが、上へ行くと普通である。購買とかあるんだね。
 受付のおじいさんに話を伺うと、とても懇切丁寧に傍聴について説明してくれました。感謝。
 行った日は民事は少なく刑事裁判の多い日でした。刑事裁判といっても、中身は盗難・盗難・盗難と軽犯罪ばかりで、殺人のような激々しいのはない。
 後は詐欺罪とかそんな感じ。私が見たのは覚醒剤取り締まり法違反(新件)と、恐喝未遂(審理)の二つ。別館二階でやったんですが、二つある法廷のうち小さい方が使われていました。
 傍聴席が20人ぶんぐらいの手狭な所。法廷ってもっと広いイメージあったが、軽犯罪だとそうでもないんですね。カーテン閉まっているのが物々しい感じ。
 最初に入ってきたのは、黒い法服の書記さんと検察官。間違えたのか傍聴人席から入ってくる弁護士さん(若い女性だった)。そして傍聴人は私を入れて五人ほど。
 被告人の男性が二人の警察官に挟まれ、手錠をかけて入ってくると緊張しました。手錠には灰色の布がかけられ、青い紐で腰のベルトと繋がっています。
 中に入ると布を取り手錠とベルトを外されて着席。このあたりから「俺、ここに居ていいのかな」という気分で一杯。
 違うのよ! 私はあなたや他人の不幸に興味がある野次馬じゃないの! ただ裁判が見たいだけで、あなたの事件を観に来たのはたまたまなのよ! お礼参りとかしないでよね!
 そんなビビリ感でいっぱいの内に裁判官入廷。
 新件(つまり第一回)ということで、被告人の名前や生年月日(ちょうど40歳ぐらいのもよう)、犯罪に至った経緯や発覚への経緯が読み上げられます。
 被告の方は中学卒業後、職を転々とし前科者の友人を作り、悪い先輩に教えられて覚醒剤に手を出したとのこと。当人も三年前に刑務所から出所したばかり。
 大阪で麻薬(記憶を辿って単語を検索するとフェニルアミノプロパン、つまりアンフェタミンね)を購入し、駅のトイレやビジネスホテルで皮下注射。
 しかしホテルでラリって挙動を不審がられ、更に注射器をベッドに置きっぱなしにしたため事が発覚。逮捕に至ったという。典型的に道を外れた人生だなあ。
 被告人は終始、非常にしおらしい感じでした。着席して待っている間、自分の顔を叩いて気合いを入れたり、泣きそうに震えた声でしゃべったり。
 本日分が終わって出廷する時も、弁護士さんにお礼を言ったり凄く反省している感じ。前科持ちとは思えねえ。
 ということをデスドロップの兄貴(大学で法律系進んだ)に言ったら「(演技が)手慣れてんなあ」とのことで、妙に納得してしまった。
 起訴事実に関する弁護人の反論は特にナシ。ちゃちゃっと容疑を認めた上で、少しでも刑期を減らす方針で行くようでした。
 何か検察官の人が朗々としゃべるのに対し、声が小さくて聞き取りづらい。次の裁判も弁護人が結構なおじいちゃんで、フガフガのしわがれ声がまた聞き取りづらかったし。
 とにもかくにも、他人の人生を垣間見た感じで終了。検察の求刑は、えーと確か二年六ヶ月の懲役、七日に判決がくだるそうです。
 続けて恐喝未遂の審理。せっかくもう一件やるんだし見ていくかーと思ったんですが、さてこれが傍聴人多数でびっくり。まだ人入るのかよ! という勢いでした。
 20人分ほどあった傍聴席が全部埋まりましたよ。何かメモ取ったり何かの資料作って持って来ている人たちもいるし。被害者の会か何かなのか? ちょっと気になる。
 うたた寝で記憶が飛んだため事件の詳細はよく分からない。ICレコーダーがどうのって。被告人が傍聴席から普通に入ってきたので何でかと思ったが、こちらは保釈済みだそうな。
 つうか弁護のじいちゃん、長々と話してとても要点が掴みづらかった……。
 こちらは先の裁判では無かった証人喚問が見れました。傍聴人席から証人のおっちゃんが進み出て、宣誓、嘘つくと偽証罪になるよ、黙秘権あるよと説明されて質問タイム。
 被告人を雇っていた上司だそうですが、今の所彼を解雇するかどうかは考えてないとのこと。とりあえず裁判で決着付いてから、だそうな。何か話し慣れていた感じ。
 こちらも七日に判決出すよってことで終了。どちらの裁判も一時間あるかないかぐらいでした。修習生席があったけど空席のままだったな。
 やはりドラマのように弁護人vs検察官っつー法廷バトルはなく、ひたすら事務的なやり取りが続いた印象。一度述べられた事実内容が何度も繰り返されるので面倒も多い。
 ぶっちゃけそんな面白い物でもなかったかもしんない。でも、知って損することでもないし、勉強になった気もする。
 というか、自分からは縁遠く感じていた犯罪とかそういう世界が、ちゃんと地続きでこの現実に存在するんだな、という実感が得られたことが一番貴重だった。
 麻薬の売買があって、警察に捕まって、手錠かけられたりするそういう世界が歴然と存在しているという。知識ではなく経験として、改めて知ることが出来たわけだ。
 この「知る」と「感じる」の違いは、小説を書いていく上で大きい。自分の思考、認識としてもとても大事なこと。また傍聴に行ってみたいなあと思います。