アリエッティ観た

 買ってきたプラズマボールが、鑑賞二時間でおシャカになりました。くそう、交換なり返金なりしてもらわにゃなるまい(送料込みで四千円ぐらいした)。


 気を取り直して……『借りぐらしのアリエッティ』観てきました。おーこれだよこれ、ジブリに求めるのってこういうのだよー、でだいたい終わり。
 しっかし、原作は小学生のころに読んだので記憶が曖昧ですが、決して人間と小人が交流を持つような話ではなかった気がします。基本小人の世界オンリー。
 まあナウシカ魔女の宅急便も、原作と言うより原案ってなぐらい元の話と違うらしいので、そこはそれ。単体で充分面白かったしね。
 まずヒロインのアリエッティ。明るく活発、健康的な女の子です。運動神経がいいし、くるくるよく動く。鏡の前でおめかしして一回転とか、イヤリングの鉤でカーテン登ったりとか。
 アリエッティのお父さんも逞しい人で、「借り」のプロフェッショナルという雰囲気がカッコイイ。ちょっと無口だけど、妻に頼られ娘に憧れられるという理想的なパパ。
 一方のお母さんは心配性で弱音も多いという対比。最初おばあちゃんかと思ったけれど、頭数が減っているから晩婚だったってことでしょうか。
 家族以外の小人族・スピラーはちょっと影が薄かったかな。最後は彼のおかげで新天地が目指せるので重要なキャラだけど、単に便利な扱いされただけの気も。
 おばあさまは特に言うことがない……が、あの人のおっとりした態度が、人間と小人の関係としては一番適切なものだったと思った。
 家政婦のハルさんは、ちょっとやり過ぎ感が強かった。何がそんなにあなたを駆り立てるの、というくらい小人捕獲に情熱を燃やす。そもそも捕まえた後どうする気だったのか。
 ベタな所で売り飛ばして大もうけとか有名人とか、「何がしたいのか」を示して欲しかった感じ。とりあえず奥様に見せるためって風では絶対無かったし。
 さて最後のショウくん、アリエッティと交流を持つ人間の子供。心臓に病をかかえ、手術を控えておばあさまの家にやってきました。なんか家庭的にあまり恵まれない模様。
 そんな境遇の彼がヒロインとの交流を通じて、生きる勇気をもらったよーと綺麗に話を締めくくります。分かりやすい。でもちょっと分かりやすすぎね、台詞回しとか。
 面白い映画だったんですが、正直ショウのキャラクターがかなりまずくて困りました。
 ジブリの映画って、悪役でも脇役でも嫌いと感じるキャラってまずいなかったんですよね。ムスカでも湯婆々でもクロトワでも。が、ショウだけは嫌いになってしまった……。
 ハルさんはまだ、ジブリ悪役の愛嬌がまだあるんですよ。ショウを部屋に閉じ込めたりとか、そこまでするかって感じだったりはしましたが(笑)。
 でもショウは、「大きな者の傲慢」を全身で体現している。
 ドールハウスのキッチンセットをプレゼントしたり、親切心のつもりで小人たちの生活をかき乱すし、それが元でアリエッティのお母さんはハルさんに捕まるはめになった。
 まあそこまでは、話の展開上のことと諦めもつくんですよ。まだ。
 が、アリエッティと対面しての会話。「君たちは滅びゆく種族なんだよ」のくだりとか、何考えてんだ、こいつ自分がどんだけ酷なこと言っているか分かってねーなー怖ぇー、と。
 無邪気な残酷さが、それを向けられる対象にとってはどれだけえげつなく恐ろしいものであるか、そのことがよく分かる映画に仕上がった原因はおもにショウくんにありますw
 それでいて見た目が美少年に設定されているから、余計不愉快さが募るんだよなあ。
 彼とアリエッティが、捕まえられたお母さんを救うために力を合わせる展開は良かったです。人間の量分と小人の領分、人間視点の部屋の中、画面の隅っこで小さいアリエッティが走る構図。
 でもショウに対する不快な思いは消えないので、お引っ越しで彼に別れを告げるシーン、感動させようって所なんだろうけれど、ちっとも気持ちが乗らず。
 むしろ、射ってまえスピラー! でしたね。まあ刺さった矢が残ったら、小人の痕跡を残すことになるから、あそこで彼が弓を引かなかったのは仕方無くもありますけど。
 あーっと感想がだんだんショウへの愚痴に占められていますが、それだけ惜しかったということで。小人たちの生活振りは、本当にワクワクするギミックでいっぱいでした。
 背景の中の小物を見ては、ほうほうあれはあれだな、なるほどこういうのに使っているのか……と。食べているパンは砕いたビスケットの粉から作ったのかな?
 それに小さい世界なので、液体の表面張力がちゃんと働いている点にも感動しました。最初、お茶のシーンで何か粘性の高い物飲んでるな? って思っちゃったけどw
 ただ、そういう所でリアルなのに、あれだけ体格差のあるアリエッティとショウが、互いの声が大きすぎたり小さすぎたりせずに会話出来るのには少し不満。
 また一方、小人の受け取り方が昔と変わってきた自分に、年月の経過を感じました。
 あのサイズなら重力は人間ほど働かないよな、人間の生活を真似ているようだけれど、彼ら独自の文化ってのは? 人間に追いやられて隠れ住みつつ、他の小動物のように人間に依存する種族として生き延びてきたのかな……などなど。
 原作は結構シリーズ出ていたし、この世界の話はまた観てみたいですね。ジブリはたいがい「続編」は作らなかったけど、これはどうなんだろう?