映画『地獄』&映画『インセプション』
昨日今日と続けて観たので、この二つがいっしょくたに並ぶ。
中川信夫『地獄』
- 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
- 発売日: 2008/01/25
- メディア: DVD
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地獄というものに興味があって調べていたら発見し、かねてより気になっていた作品。ようやく視聴しました。う、うーん、これは……。
元々は夏のお約束怪談映画枠に「地獄の責め苦の映像化」を持ってきたのが発端だとか*2。60年代の作品ということで、後間もない日本の風俗がぎっしり、そこにちょっと情緒を感じますね。
画家の父親を団扇であおぎながら歌うヒロインとか、賽の河原の無駄に長いシーンとか、ところどころ雰囲気の良いシーンがある。とても日本的だけど日本じゃないような不思議な感じ。
何か粗筋からしてぶっ飛んでいまして、物語の前半はこの世の地獄、後半(というか終盤)はあの世の地獄と分かれ、後半に入るまでに登場人物が全員死にます。
良い人も悪い人も、まだ生まれていなかった赤ん坊まで含めて、全員。
物語は、大学生の清水四郎(天知茂)が、悪魔的友人・田村(沼田曜一)の誘惑から逃れようとするにつれ、次々と罪を重ねていき、最後には自らも地獄に堕ちる……というもの。
直接四郎が重ねた罪と言えば、田村がヤクザの志賀恭一(泉田洋司)を轢き殺した時、逃げる田村をすぐ止められず、結局一緒に逃げてしまったことぐらいですが……。
で、自首しようとタクシーに乗ったら、その運ちゃんが事故ってしまい、付き添ってくれた婚約者・幸子(三ツ矢歌子)が死亡。この時の運ちゃん、存在が最後までスルーされていたような。
幸子の母は哀しみのあまり発狂してしまい、四郎の元へはハハキトクの電報が届く。四郎は実家の養老院・天上園に戻り、そこで幸子そっくりの女性・サチ子(三ツ矢歌子の二役)と出会うのだった。しかし、一方では四郎を息子の仇と付け狙うやす(津路清子)が復讐をもくろんでおり……。
とこうして、因業な人物が登場しては、バタバタと死んでいきます。自分で勝手に吊り橋から落ちたり、転んで頭を打ったりと、死に方が適当すぎたりもしますが。
しまいには毒で死んだ魚を食べたり、毒入りの酒を飲まされたりして大量死。
田村貴様のせいでー! と友人? の首を絞める四郎と、その四郎を息子の仇! と締め殺しにかかるやす、の三つ連結は実に修羅場。というか一箇所に堕落した人間集まりすぎ。
刑事、記者、医者、幸子の両親、ヤクザの情婦etc,etc,…
まあそんなわけで全員死亡した後、地獄の裁きが始まります。判決出す前から首にぶっとい針とか刺さっているけど。やたら隈取りの激しい閻魔様(嵐寛寿郎)は、看板役者のカメオ出演らしい。
その後の閻魔様は声だけの登場ですが、良い声しているので、ちょっとこの映画の格調がプラスされた感じです。お前達は永遠に苦しむのだ! と言い出した時は「え、これ八大地獄モチーフなのに刑期無期限かよ!」と笑いました。まあ刑期あっても何十億年ぐらいあるが。
地獄に堕ちてからの展開は、血の池に針の山に釜ゆでにと、なるほど日本人ならなじみ深い責め苦がオンパレード。現世の死に顔は安らかなんだけどね。
ただそれだけじゃ間が持たないと思ったのか、死んだ時幸子が身ごもっていた赤ん坊まで一緒に地獄へ堕ちてしまいます。さあ赤ちゃんを救え!
「四郎よ、今助けなければその子は一生地獄で苦しむぞ」みたいなことを閻魔様が言い出しますが、これってどういうことなの……。
最後、赤ちゃん(命名:春美)が乗っていた、ぐるぐる回転する車輪が何なのかもよく分からないし。あれ拷問器具の装置か何かきゃ?
終盤は回り続ける春美と、ぐるぐるマラソンし続けている亡者たちとのカットが何度も入れ替わり、観ているこっちまで目眩がしてきます。
この監督、ビョーキだカルトだと言われているようだけど、その意味がちょっと分かるなあ。口元アップ→鬼が棍棒振り下ろす→歯が折れた血まみれの口元アップ+うめき声とか。
OPからして、棺が出てくるのはまだ分かるけど、踊る女性が「あなたァ〜」としなを作り、「ヨーイ、ドン」というかけ声が続くのは訳が分からなかったですね。
終わり方は物凄い投げっぱなしで、ヒロインは極楽へ行けたように見えます。何度も出てきた回る傘は輪廻の隠喩っぽいですが……主人公と赤ちゃんはどうなったのか。
極楽行く二人が、地獄に残された主人公に声かけるにしては、呼びかけが明るすぎるしなあ……あれも一応救われて欲しいのですけれど。
とりとめのない感想になりました。展開があちこち唐突でオイオイって思うんですが、題材が興味深くて結局引き込まれる。あと田村のキャラクターが色々面白かった。
田村は悪魔に魂売っちゃった人で、良心を持たないことから最後に一番酷い地獄の責め苦を〜って落ちに。見た目的には肉ごと皮を剥がれた清水剛造(林寛)のが無残ですけど。
あの人、それまで自由自在神出鬼没だったのが、サチ子に触れた途端おかしくなったんですよね。本当は極楽へ行く人間だから、地獄の住人が触れては毒だったのか?
まあとにかく田村は面白い。この人だけ映画と言うより舞台演劇のような、大げさな抑揚で話すし、大仰な身振り手振りも交えて濃いのなんの。
「黙れえ〜い」と刀を振り回したり、教授の罪を弾劾しつつ指さしたり、ポーズ取ったままストップモーションしたり、「逃げてみろー!」と拳握り締めて絶叫したり。
あとこの人四郎好き過ぎでしょうw 何であそこまで執着したのか、なぜサチ子に触れた途端それまでの悪魔的存在感が消えたのか、説明が無かったのは実に残念です。
映画『インセプション』
なんか久し振りにディカプリオの名前を聞いた気がする。いや普通に映画出演こなしているはずなんですが、俺の印象に残らなかっただけか。
上映時間がちょっと長め(約150分)なのと、前半のタルさもあって、中盤は寝てました……というか映画観に行って眠るのって珍しいんだけどなあ。
目を覚ましてからの後半戦は結構面白かったです。
話が進むにつれ「え、じゃああの時のあれは…?」となっていくOPが、実は今までずっと回想していたんだよと分かるあたりとか……虚無怖いねー。
寝てる人を叩き落として起こす『キック』、夢と現実の区別をつける自分専用アイテム『トーテム』などの設定も魅力的。ドリームダイブの話なので、重力がムチャクチャだったりの特殊効果も楽しめました。積み重ねた人間をふんじばって、ゆらゆら無重力中運んでいく絵とか。
ラストはコマの行方をはっきりさせてくれたほうが嬉しかったなあ。