平野耕太『ドリフターズ』1

 日本語しゃべれねぇんなら 死ねよ

ドリフターズ 1 (ヤングキングコミックス)

ドリフターズ 1 (ヤングキングコミックス)

 平野耕太最新作。「ヘルシングの後だしなあ……」とパワーダウンを危惧していたものの、それが完全に杞憂を通り越して無礼になるような出来映えでした。
 異世界に誰それが召喚されてうんたらかんたらはもはや一つのジャンルとすらなっていますが、この作品は古今東西問わず歴史上の有名人が異世界に呼ばれて大暴れ! という贅沢中二仕様。
 カバー下の落書きに漂流物(ドリフ)&廃棄物(エンズ)候補ってのがありますが、これは「俺が考えた漂流物or廃棄物」ネタがはやるに違いない、てかスレありそう。
 しかし「ナチはヘドが出るほど書きすぎた」は確かにそうだが大笑い。
 なんか事前情報の粗筋が、
本能寺の変で死んだはずの信長が異世界に迷い込み、助けてくれたエルフ(弾圧とかされている)の畑を焼き払って『これでこいつら反乱起こすだろヒャッハー』というお礼をする話」
 だったので、表紙を見て「あれ、信長若返ってる?」とかうつけたことを考えてました。スマヌ、お豊(島津豊久)。いやー何でこんな偏った情報拾ったかな、間違ってはいないけど。
 主人公の島津豊久は戦国時代の侍。知名度的にどうなのかよく分からないんですが、彼が一話で首を取ろうとした井伊長政は聞き覚えあるけど、彼は全然分からなかったです。
 まとにかく、ヒラコーキャラとしての豊久はいい男。カッコイイのもそうですが、主人公だけあって鬼のように強い。あんな槍ぶすま状態で「あほうはうぬじゃ」とかね。
 突撃前の笑顔も素晴らしかった。親父さん大好きだったり、自分は幸せ者だなーよし頑張るぞーの独白と合わせてね、何この三十路可愛い。
 第一話はまるまる戦国時代の日本なんですが、黒ベタの使い方やら槍やら血飛沫やらが相変わらず過ぎて嬉しいですな。その後いきなりあんな道*1に迷い込むけれど。お豊の後に来たのはたぶん山口多聞
 最近だと、久慈光久が短編集と狼の口とで、それぞれ戦国日本と中世ヨーロッパを見事に描き分けていて驚いたものですが、ヒラコーでもそれが見れるとは思わなかった。
 ドリフターズの次は、まるまる戦国日本が舞台の話とかやってくんないかなー。この作品、連載ではあまり話進んでないらしいですが。
 さて、召喚もののテンプレとして、彼ら漂流物は廃棄物と戦うため呼ばれたようです。歴史的に見て、戦いが終わっても帰れなさそうですけど。
「紫」が送り込んだ漂流物vs「EASY」の廃棄物という構図がありますが、対立する超常存在(つかゲームプレイヤー?)の名前がそれってのもしまらないのう。
 廃棄物を率いるのは某ピュア(Web漫画胎界主)をでっかくしたよーな「黒王」。
 こっちは普通に中二センスネームやね。Wikipediaの記述と合わせると正体は廃棄物キリストっぽいけれど、本当にそれだったら普通すぎるかも?*2
 とにかく漂流物も廃棄物もどんどんキャラが出てきてバンバン戦う。アナスタシアの後ろにいるのがラスプーチンなら、ジャンヌの後ろはジル・ド・レエ?
 ジャンヌが何かセラスを年増にしてスレさせたよーな、あるいは若返らせて入れ墨も取ったゾーリン姐さんに見える。逆に口をへの字に引き結んだ、不満そうな哀しそうな顔のアナスタシアは、過去*3に似た顔のキャラがいなかくて新鮮。
 それにしても眼鏡率低いな今回。
 攻城シーンはロード・オブ・ザ・リングを思い出しましたが、ドラゴンが航空機として扱われたり、ゴブリン*4の観測員がいたりと、妙に近代戦っぽいのが笑えるやら不思議やら。
 それにしても面白い部品で面白く組み立てたような原形質レベルでもう面白いの確定な今作、色々と凄い。ヘルシングに続くヒット作になるかしら。
 当然ながらキャラ立ちは凄いし、お豊・信長・与一の三人組の動向に目が離せません。こいつら三人が珍道中するだけで充分楽しい。これから国とか取りに行くようだけど。


 主人公のお豊は燃える&萌えるw三十路。
「妖怪首おいてけ」と言われるほど首級に拘ったりするものの、助けてくれたエルフを庇ったり普通にいい奴。性格もそうだが方言がまたラブリー。
 日本語しゃべれねぇなら死ね→タスケテータスケテー→一件落着! の強引な言いくるめに笑い、首はいらん、に続く決め台詞の格好良さにシビれ、エルフ達に仇討ちを迫るシーンなどなど見所満載。
 まあこの作品自体が見所満載なんですけれどね、一日で五回も十回も読み返してしまう。絵の魅力もそうだけれど、キャラの魅力とか映画のようなたたみかけるエンターティメントぶりとかに。


 信長は眼帯キャラになっていますが、ナチュラルに似合ってていい。ノリのいいおっちゃん*5ですが、頭が切れるので突っ込みたがるお豊に対して頭脳派ポジか。
 この人の見所といえば、やはりエルフの畑を焼き払うシーンですかね。弾圧っつーか民族浄化真っ最中って感じのエルフを反乱に焚きつける行動なんですが、恐ろしい恐ろしいw


 与一は女っ気のない三人組に華を添える美少年。最初胸が膨らんでいるように見えたよ……。最年少であることにガッツポーズしたり、一触即発だったお豊と信長に鳥持ってきて「むしり候」と場を収めたりと、盤石のマイペースさ。エルフが弓の名手って設定と与一のスキルはどっか繋がるかしら。


 他の漂流物&廃棄物も楽しい連中揃いです。
 歴史の著名人ってことでワイルドバンチ強盗団とかいるあたり、西部開拓時代の賞金首や禁酒法時代のマフィアや大航海時代の海賊も登板する可能性があるんですね。
 今現在登場しているのはハンニバルスキピオ、前述の強盗団からキッドとブッチ、そして戦闘機に乗ってやってきた菅野直。山口多聞後で出るー?
 近・現代兵器武装組は、弾薬尽きたら一気に戦力落ちるけどどうなんでしょうね。菅野とか燃料尽きたら墜落するだけですよ。謎の根性パワーで飛び続けかねないけど。
 さてどうしよう、この漫画のためにまたアワーズ購読開始しようかな。今日にでもアワーズ買ってこようそうしよう、迷い一秒未満。

*1:SLGにおけるインターミッション的な。あの書類はユニット配置の手続き。配置場所適当っぽいがな。

*2:と書いてから思ったが、ヘルシングアーカード=ブラド公がわりと初期からバレバレだったので、やはり黒王=キリストはそのまんまかもしれない。

*3:ヘルシングしか知らんけど

*4:外見が豚面なのでむしろオークって感じ

*5:「オッス オラ第六天魔王」とかね。