勝木光『ベイビーステップ』1〜12
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丸尾栄一郎、高校に入学したての15歳。別に勉強が好きなわけじゃないけれど、やらなきゃいけないことだから頑張る。下手な参考書より分かりやすいノートまで作って完璧主義。
几帳面で生真面目、それこそ最大の武器という、少年漫画では珍しいタイプの主人公です。試合前も試合中も念入りに相手のデータを分析し、課題を立て、疑問や欠点をとことん突き詰める。
こういう思考・分析キャラって、破天荒だったり天才だったりする天然・感覚キャラのかませにされたりすることが多いんですが、「策士策に溺れる」なんて言葉はエーちゃんには無縁。
ただ、地味な漫画といえば地味です。
主人公が最初から強いわけでも、劇的な背景(天賦の才とか血縁にテニスプレイヤーがいるとか秘められた才能が開花だとか。いや、視力補正はあったけど)があるでもない。
まあド素人から二年そこらでかなーり強くなっていますが、コツコツコツコツ強くなる過程が丹念に描写されているから薄っぺらくない。
序盤だけ一年ほどタイムスケール飛んでますけど、まあそこはそれ。地道な努力が一番得意っつー、「努力の天才」型主人公なんですよね。
連戦連勝なんてのも(近刊以外は)ほぼ無縁。少年漫画なのによく負ける主人公ですわ。勝てそうにない相手を前に試合中も進化し続け、着実にかじりついていく……。
他の漫画だと「おー、これはもう勝てるな」っと思う展開になっても、この漫画だと覆されてしまう。常に勝てるわけじゃないから、なおさら勝てるか勝てないか、先が読めません。
ので、ハラハラすると言うか、勝ってくれ! と応援したくなる気持ちが凄く煽られる。エーちゃんが諦めず食らいついていくから、また負けた時の悔しさといったらハンパ無い。
その上、エーちゃんは超前向きです。試合でどれだけ窮地になってもへこたれない、持ち前の生真面目さで相手を分析し続け、戦略を組み立てていく。
今、自分に出来ることを探り続け、常に勝利へ向かって最大限の努力を払うのです。
天才型のライバル・タクマに「とりあえず限界のスケジュールでやってみて 無理かどうかはその後再検討……ってことにしようかと」とあっさり言い切ったシーンは惚れる。
あまりウジウジ悩む展開は無く、ストレス無く進んでくれるけれど、エーちゃんとて落ち込むことはあります。そういう時はヒロインとか周りの人もフォローしてくれて、やはり爽やか。
ので「あれっエーちゃんもしかして人として完璧じゃね?」となって、この感想冒頭の文に行き着くわけですが。なんか割と悪人のいない世界だし*1。
ヒロインの鷹崎ナツも中々可愛らしいんですが、ラブコメ部分はほとんどオマケのよーなもの。まあ良いシーンでタクマが割り込んでいたのは笑いましたが。
そのヒロインとの対決で次巻に続く! なので、来月発売予定の13巻が楽しみです。
キャラクターでは主人公はもちろんですが、あとは宮川くんとか好きです。序盤で対戦して破った相手なのですが、十巻以上過ぎてから再戦へ。昆布茶と梅干しとか。
後は諭吉くんの試合シーンが描かれることを願います(笑)。
*1:越水がそうなりそうだったけど、結局簡単にフェードアウトしたしね