中村光『荒川アンダーザブリッジ』1〜10

 三巻と十巻がわりと表紙詐欺。

荒川アンダー ザ ブリッジ 3 (ヤングガンガンコミックス)

荒川アンダー ザ ブリッジ 3 (ヤングガンガンコミックス)

荒川アンダーザ ブリッジ 10 (ヤングガンガンコミックス)

荒川アンダーザ ブリッジ 10 (ヤングガンガンコミックス)

 聖☆おにいさんが面白かったので作者買いしてみました、既刊十冊ひとまとめに。
 これが社会人の力だよ!(いいえただの衝動買いですバカ野郎)
 とりあえず買って損した気分にはならなくてトントン。聖☆おにいさんとはまたノリが違うんですが(根本的な作風はさすがに通底していますが)、世界観に浸れるというか。
 一言で表すならメルヘンホームレス漫画、あるいはユートピア漫画でしょうか。
 子供の頃、秘密基地を作っておうちに帰らずそこに引っ越す……なーんて夢がそのまま実現したような世界。実際、作者が一巻カバー折り返しで、子供の時、橋の下に住んでみたかったと思った旨を書いています。
 橋の下と、そこから広がる荒川河川敷の『村』。そこはホームレスの生息地なのですが、牧場に教会に美容院にと妙に施設は充実し、村長の思いつきで様々なイベントが催される始末。
 その様子が凄く楽しげで、ちょっと懐かし目のラブコメであると同時に、下町人情ドラマ風でもある。そこへ織り交ぜられるギャグの数々はちょっと美川べるのっぽい。
 宗教ネタ一本だった聖☆おにいさんに対し、こちらは時事ネタパロネタにまで手を広げて、ギャグに幅が出ています。ジョジョ絵な作中漫画はGJな出来映え。
 ツッコミの切れ味なんかも、かなりツボでした。「シスターと言うよりブラザー寄り」とか「俺たちはバクじゃないんですよ」とかとか。
 そんな河川敷は、出たり消えたりする階段や、ニノの後ろ盾っぽい着物の男など、様々な力によって守られています。あの階段が消えていたシーンで、ああこの村は外界から隔絶されたユートピアだったんだな、という一抹の寂しさを覚えました。
 あと、これ買うまで作者は男性だと思っていたんですが、聖☆おにいさんと比べても、女性っぽいというか少女漫画チックな部分も見受けれますな。
 リクの顔がショタ系に変身したり、高井(主人公の部下、執事みたいなもの)のキモいほどの行様大好きっぷりとかとか……。あと亀有病だけはちょっと引いた。
 マイフェイバリッとキャラはシスター。この人の言動がいちいち面白い。ミリタリーネタが好きなのもありますが、シスター服が違和感ない大男ってのも不思議だ。
 案の定オマケ漫画で「人気投票したらシスターだけ棒グラフの棒が折り返した」とあって、さもありなんと大笑い。
 ともかくニノが実際に金星人かどうかはともかく、普通の人間ではないのは確かな模様。何だか大詰めになってきたようですが、このシリアス展開が次回十一巻でどう落ちるのか目が離せません。
 DVD借りてアニメ版を視聴するべするべ。