諫山創『進撃の巨人』1

 お前の母さんを助けられなかったのは… お前に力がなかったからだ…
 オレが……!
 巨人に立ち向かわなかったのは… オレに勇気がなかったからだ…

進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)

進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)

 凄い凄いと評判なんで読んでみたが、噂に違わぬ凄絶さでありました。画力がかなり難だけどな! でも、この作者の物語る力は、間違いなく凄い。
 物語で現実で、繰り返し演じられたシーン「私を置いて逃げて」「嫌だできない」。それがこの作者の元で再演されるにあたり、その意味を問うには充分な出来映えとなっていた。
 読み終わる頃には「この作者は面白い」という信頼さえ覚えるほどに。
 人類を絶滅寸前に追い詰めた謎の「巨人」、それに対抗するための「立体機動装備」、そして残り僅かな生存圏である「壁」。生物と言うより生体兵器といった趣の巨人たちは、ひたすら人類を殺しに向かってくる。
 その巨大さ、彼我の戦力差から来る脅威と絶望感は圧倒的。一話で巨人が現れるまでの「外は超危険だけど今は平和だからそれでいいじゃん」な平和ボケした世界も良かったんですが、それが打ち壊された時の急降下ときたら!
 そこへ来て立体機動などとケレン味のきいたギミックも持ち出し、更にそうした本筋とはまた別に、ちらほらと謎が仕込まれている。何という物語への牽引力か。
 なんだっけ、ヘルレイザーで全身に鉤引っかけられて皮剥かれるシーンあった気がするけど、あんな気分よ。褒めてるのよ、うん。あれくらい素敵に釣り針だらけなのさ!
 あと、エレン(♂)はいい主人公ですね。生まれた町が巨人に襲われ滅ぶ中、一匹残らず駆逐してやる! と言い出すその闘志。身長50mの巨人を前に誰もが身を竦ませる中、誰よりも早く行動を開始したその気骨。巨人に物療戦で勝てるわけねーべ、と冷静に頭を働かせる知恵もある。
 エレン父の怪しげな行動(謎の薬投与)とか、瓦礫の下になってしまった秘密の地下室とか、冒頭でエレンが見てた長い夢とかも中々気になります。一話のタイトルからすると、時間旅行ネタでも含むんかな。
 ああ続きが気になって堪らない、この楽しみは実に罪作りな種類の本です。