佐渡川準『PUNISHER』全七巻

PUNISHER 1 (少年チャンピオン・コミックス)

PUNISHER 1 (少年チャンピオン・コミックス)

PUNISHER 2 (少年チャンピオン・コミックス)

PUNISHER 2 (少年チャンピオン・コミックス)

PUNISHER 7 (少年チャンピオン・コミックス)

PUNISHER 7 (少年チャンピオン・コミックス)

 少年チャンピオンにて『無敵看板娘』連載終了を迎えた著者の新たな境地!
 ……打ち切りだけどね。
 著者は長年の連載で描きこなれているし、キャラクターも活き活きとしています。でも、やっぱり設定とか背景がありきたりすぎたのが問題なんじゃないでしょうか。
 五百年前に封印された『死神』の復活! かつて勇者と共に戦った戦士の末裔『八戦聖』! 主人公アルトに待ち受ける宿命とは――ですからねえ。
 魔法は魔道具を介さないと使えないとか、魔王じゃなくて死神とか、細かい違いはありましたが、正直誤差の範囲内。DQやFFがかつて通った、王道ファンタジーをやりたかったのかなあ。
 しかし。最初はどうしてもムテカンの影がちらついた物ですが、読み進んでいくうちにそれを振り切っていくのが分かって良かったんですよねえ。激昂するアルトのシーンとか。
 ただまあ、躍る描き文字がムテカンのそれと変わらず、シリアスな場面なのにギャグのドタバタっぽく見える嫌いはありましたが……。
 とにもかくにも七巻打ち切りとなったこの作品、著者も相当無念だったのか、後書きページで後々のストーリーを自ら語ってくれました。その辺賛否両論はありましょうが、七冊付き合ってキャラに思い入れの出来た私にはありがたい仕様です。それのおかげで好きになれたキャラもいますし(後述)。
 後書きの情報と併せて、あとは各キャラについて語っていこうと思います。
 ネタバレしますのでご注意!

アルト

 主人公。最初からわりと強いけど、中身はのんびり屋。ヘタレとは少し違うけど気弱か。「魔道具を使う魔道具」という正体がオマケページで明かされた。何か藤井蓮みてーだな。
 最後らへんまで、いまいち確たる目的や意志が見えないあたりが困ったちゃん。父親の仇に話が触れてから変わりだしたが、アルトのやる気なさが物語の足を引っ張る一因だった気もする。バルハークに啖呵切るシーンとか、成長が見られて嬉しかったんですが、うーん。

ミルキィ

 ヒロイン。恐ろしく社会常識のないキャラだったが、生い立ちを知ると「無理もないよな……」と同情の念が沸くばかり。しかし、よくあんな大鎌振り回すもんだ(親父の実験のせいだろうか)。
 作中では数少ない魔法使いキャラのはずだが、ちっともそれらしくないじゃじゃ馬さんでラブリー。しかし明るい外面と違って、わりとハードな過去を背負っているのでした。
 その正体は未来のラスボス。作中では一応その設定も明かされ、今後は死神の宿主として付け狙われることになる……と王道な背景が用意されている。つくづく薄幸だやな。
 ただ設定として目新しくないのがあれでしたが。初期の「死神になるのが夢!」と明るく爽やかに語る姿はちょっと新鮮だったんですけれど、あの路線でもうちょっと何とかならなかったでしょうか。
 この二人のぶつかり合いがラストになるようですが、後書きでも結末はやっぱ描かれないままで残念。

カッツ

アルトー! 俺と戦えー!」と常に主人公を追いかけてくるウザイ系のキャラ。
 ……だったのだが、ザイナーハとのぶつかり合いで株を上げた思う。スキ様にこらしめられていた頃のウザキャラMAXが嘘のように男だぜ。人種としてあの雷獣と波長が合ったのかもしれない。
 相棒の犬(犬じゃないけど)が、ムテカンに登場するあれとそっくりだ!
 勘九郎を小さくして凶暴性をプラスし、更に知性を引くとだいたいこうなる気がする。

鷹の目ウォーゼル

 カッツとは違い、カッコイイ勘九郎って感じの御仁。あれに知性と実力と眼鏡を足したような。あと剣術か。
 八戦聖の一人で、不良八戦聖をシメる役割を持つ。でありながらお茶目な面も多く、初登場時から言動がファンキー。後書きでも彼用に結構なエピソードが用意されており、著者も気に入っていたことが窺える。俺も好きだ。
 超人ワンダーは正体バレバレでしたね。

スキ王女

 最初に登場する八戦聖であり紅一点。念力っぽい天神力という能力でカッツをこらしめた。何か聖女様っぽいポジションだったが、後書きではウォーゼルへの複雑な思い出が暴露されてグッド。

空王シャフォー

 最後まで素顔の分からなかった八戦聖。ミルキィの過去を暴いた張本人だが、初対面なのにあんな精神の深くまで潜り込むとか恐ろしいことをする。人という寄り精霊か何かみたいなキャラだった。

雷獣ザイナーハ

 八戦聖悪役ポジ。外観からして悪役というか何か人間辞めてる。アルトを探しに村を訪れたついでに雷火で放火、出会ったカッツとガチバトルへ。実に活き活きしていました、ええ。

妖蛇グロゼオ

 八戦聖悪役ポジその2。ザイナーハほどじゃないが人外の魔物っぽい外観。シスコン。わりと苦労したらしい。地味に美形な気がしなくもない(目隠しー)。

銀鯨のバルハーク

 八戦聖悪役ポジその3。なのだが、前述の二人とは違ってクールビューティーなツラに設定されている。ただ、著者の頑張りが空回ってか、変に能面っぽいような顔になってましたが。
 背景の情けなさ(惚れた女性を死なせてしまい、八つ当たり気味にシー・ヴァーバリアンを襲っていた)と併せて好ましく思えなかったキャラ。
 ただ、後書きで超人ワンダーと一緒になって「超人ブレイヴァー」に変身! という設定が追加され、ちょっと好きになれましたw
 ……そういえば足下の亀か何かっぽいのは何だろう。


 八戦聖が二人足りませんが、残りの勇者アルシス、幻惑蝶のエリュミーヌは後書きのみ登場。

死神ゼロハート

 初登場時見開きのデザインは結構格好良かったと思う。あの被り物取るといまいち普通でしたが。ミルキィの父親・死神学者ゼルロットに作られたらしい。結局諸悪の根源はあの親父か!