箱宮ケイ『できそこないの物語』1〜3

できそこないの物語(1) (シリウスKC)

できそこないの物語(1) (シリウスKC)

できそこないの物語(2) (シリウスKC)

できそこないの物語(2) (シリウスKC)

できそこないの物語(3) (シリウスKC)

できそこないの物語(3) (シリウスKC)

 魔法使い・ギュールギルムの作った『魔法人形』。
 人間型から動物まで色んな姿をしていて、みんな一種類は魔法の力を持っている。そんな彼らは魔法院という組織に多額の賞金を懸けられており、世界中でその身柄を狙われるのでした。
 そんな設定を下敷きにした、ファンタジー・オムニバス漫画。とはいえ、追われる魔法人形たちの受難といった鬱方向や、魔法院との戦いというバトル方面ではなく、「ちょっと不思議な力を持つ魔法人形たちのお話」というメルヘンな趣のシリーズです。絵柄とか一時期の衛藤ヒロユキっぽい(オオザッパ)。
 一応主軸になるのは、触れる物を腐らす右手の『毒の子ジュジュ(♂)』と、髪を自在に操る『灯の子リィラ(♀)』。森の中で目覚めた(生まれた?)二人の旅から、物語は始まります。
 ……が、一巻の半分ぐらいには別の魔法人形に出会い、二人はとっとと住処を手に入れてしまうのですが。旅、あっという間に終わっちゃったよ!?
 その後は、他の世界中に散らばる魔法人形の単発エピソードが中心になります。で、合間合間にリィラとジュジュが町中へ出かけたり、学校へ入ったりと、ゆっくりとだが変化していく日常を綴っていく感じ。
 巻末には魔法人形とは無関係の作品なども収録されていますが、それも含めてちょっと不思議で優しい物語世界が作られている印象を受けました。
 お気に入りの話は、二巻の『ぐるぐる猫とコソ泥』、および巻末の『ゴーストランド』。どちらもちょっと切ない話です……前者とか猫好きの俺を色々と直撃。ロコ可愛いよ可愛いよ。 
 ギュールギルムは何のために魔法人形を作り、何がしたくて世界中にバラ撒くのか。そんな謎は残るけれど、作中では大して論じられることもありません。読者も、そうした背景があるとだけ頭に入れて楽しめばいい安心設計。
 小さかった子供の頃、世界というものがまだカッチリ定まっていなくて、少しズラしたら見えそうだった魔法使いとおとぎ話の世界。絵本が語ってくれるような物語が詰まっていて、読むとほんわりさせてくれる。
 最後までこのペースで続いて欲しいと願うばかりです。