千葉智宏『機動戦士ガンダム00P』(文庫版)上・下
「まるで人生のよう。何かを壊さなくては前へ進めない」
- 作者: 千葉智宏,富野由悠季,矢立肇
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2010/03
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- 作者: 千葉智宏,富野由悠季,矢立肇
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連載時は00本編と連動して展開していたことなどから、「イノベイド」という台詞がイノベイ…で略されたり(00F)色々旬なネタを取り扱っていた本作ですが、今回はずっと引っ張っていたネタも消化する加筆が大量!
具体的加筆箇所は、千葉社長がブログで言及なさってます(上巻)(下巻)。
大きく変わったのはグラーベ・ヒクサー、それにリボンズやビサイド関係。あちこちにリボンズ(下巻ラストまで名前は伏せられている)や、ビサイドの独白も入っており、奴らが裏でどうしてたか分かりやすい。
特にグラーベは、00P全体を通しての主人公って印象が強くなりましたね。
まず上巻でOPが加筆されたのですが、なんとそこには「人間」として司書のお兄さんしているグラーベが! 過去編ってこれかー。で、彼はヴェーダの指令を受けて人間社会から姿を消しちゃいます。
連載時はグラーベが人間かイノベかで結構やきもきさせられたけれど、さすが最初からイノベ明言してくれます。
あと、ヴェーダによる覚醒時の描写があるけれど「頭の中を電流が走り抜ける」「〜電流が通ったことで出来た細くまっすぐな穴に、静かな声が流れ始める。」って。
レイヴやドクターの覚醒もこんな感じだったんでしょうねえ(グラーベ覚醒がレイヴのそれとまったく同じ。登録番号も出たしね。なんかレイヴくんより字数が少ない気がするけんど、この登録番号はまた何かの伏線になるのかな?)。
Pと同時に00Vのムックも発売されたんですが、そのVキャラであるロベールさんとエイミーもゲスト出演しました。ロベールさんがグラーベと同僚だったとはw
あれ、しかしグラーベの名前って人間社会時とCB活動時で同じだけど変えなくていんだろうか。英語に直すと「グレイヴ・バイオレンス」になるから、イノベ名前ひでーw って思ってたのに……。
それと、グラーベはイノベにしてはやけに人情家だなということで「元は情報端末で、覚醒させられてCBに登用とか? まさかね〜」なんて考えていた時期もありましたが、そのまさかでした。
あのクールな性格は人造人間らしさの表れでもあると思っていたのにい。ヒクサーの影響を受けて「人間的な感情だな」と言うあたりとか、それだと違和感なんですけどね。
あと、グラーベの目は少ない光でもよく見えるんで、昼間はサングラスが必要って設定、加筆のハレルヤ編でもあったけれど、これは端末時代から? そういう障害の人もいるんだろうけれど。
戦闘型のレイヴが普通に暮らしていたり、ブラッドが強制コントロールで戦闘型のパワー発揮したりしているのを見ると、戦闘型の超人的身体能力は、端末やっている限りは封印されていると考えてよさそうですけど。
あと、今回は模型写真と読者コーナーはオミットされちまいました。後者はムックでも掲載されなかったけど、前者は傑作選だけカラーページで掲載。たらくさんの挿絵は全部白黒になっちゃったので、カラーで見るにはやはりムックですね。
全体に加筆がかなり多いので、小説部分はまとまった話として読みやすくなりました。
ヒクサーが強制コントロールされるまでに、アフリカでの一幕が追加されたり。874が887のボディを奪った後で、ムック版で連載時から追加された887のエピソードが入ったり。
つーかヒクサー、緑の連中にほんっとオモチャ扱いされてますね。Fでも二号ズとか出たし。こうした諸々の真相を知ったんじゃ、そりゃ00Iでビサイド(レイヴ)前にして話聞く訳がないwww
Pで起こった諸々の出来事について、ようやく真相が明かされたのもいい感じ。
プルトーネの惨劇はずっと「あれリボンズ黒幕だろ」と言われていましたが、P終盤でビサイドが出てからはビサイド黒幕説が濃厚になっていました。今回ようやくその答えが出ます。
全体の構図としては「マイスターに人間を採用させたいリボンズ」と「マイスターにイノベイドを採用させたいビサイド」が、互いに対立しつつ暗躍していたというもの(一応ネタバレ)。
なるほど、納得。翻弄された側としちゃいい迷惑ですが。
以下、作品内の小ネタにつらつらと。まずは上巻から〜。
オープニング
前述のようにグラーベの過去編。ここから彼がスカウトでマレーネ、ルイード、シャルをスカウトしていき、P一期が開幕。スカウト過程のやつは、ムックで追加されたエピソードだっけ。
上巻ではグラーベの活躍は少ないけれど、やはり存在感が大きい。
結婚式
ここのカラー挿絵は綺麗だったけれど、文庫の印刷だといまいち潰れてて残念。ムック買って置いてよかったぜ。
P一期から二期へ
連載時にあった二期開始時のOP……の前に、プルトーネ惨劇後のグラーベと874の会話が追加。上巻の終盤ではもう二期が始まるので、一期は全体としてはあまり大きく割合占めてないですね。
エージェントや技術者にイノベを採用する予定はない、とここで明言。月のイノベガンダム建造施設とかで、それ用のイノベが馬車馬のよーに働かされているイメージなんだけどな。
ちなみに組織から人間を排除して、イノベだけで編成することになった場合、イレギュラーに参加したイアンやモレノも命が危なかったらしい。しかし後追いでグラーベが調査をし、わざわざ組織にふさわしい人間と確認したそうな。ご丁寧。
ルイードが「イアンたちと遭遇するようヴェーダがはからった」んじゃないかと勘ぐるシーンがあるけれど、このへんは謎のままやねん。ここのシーンで、ヒクサーの採用が伝えられているのもポイント。この時は「人間」扱いなんだよなあ。
だからヴェーダは気づかない。
人を理解するために作り出し、使っているイノベイドが、人と同じように感情に突き動かされることを。(149p)。
ミミズだ〜って、オケラだ〜って、イノベだ〜って〜、みんなみんな生きているんだ〜♪
加筆部分でいちいち、グラーベがイノベだってことに言及されているのがなんか新鮮。
P二期開始時、リボンズはヴェーダからミッションを与えられていた。で、ラストで言及されているようにこの時代すでに、アレハンドロの所で行動していた。……出奔して拾われた振りしたんじゃないんだ?
アレハンがこの時から裏切り者やってるのは分かるんですが、Oガンダムに乗ったりしてる一方で、大使の所に居たと思うと不思議な……っつーか辻褄合わないよな? クルジス介入時はどうか知らんけれど。
出奔して〜ってのは間違いだったとしても、何かしっくりこないなあ。
FILE11
連載時・ムック版から改稿されたお話。だいたい同じだけどラストが少し追加されていて、それが楽しい。本当にグラーベ、ヒクサーに振り回されています。
ヒクサーはいざって時にグラーベをサポートする役目が与えられているけれど、それにしたってこの性格設定(女の子大好き)は誰がどの意図で入れたんだw
スカウトマンのグラーベ、計画を守るビサイドなんかは、ミッションに関連した基本人格を設定されてますが。ヒクサーは……。
FILE12
ニールの尾行をするぜの加筆。ニールと並行してライルの調査が行われていたそーです。ほほー。
FILE13
ボインボインの仲間だ。
グラーベちゃんの、リーサ・クジョウ(後のスメラギ・李・ノリエガ)に対する評。
エミリオを失ったスメラギさんは、このころ荒んだ生活してたらしい。さもありなん。
あと、連載時では突然、イノベのことを知っていると明かされたモレノ先生ですが、ここの話でイノベについて研究を進めていることが分かりました。その理由がイノベを治療することがあるかもしれないからってのが凄い。
FILE15
ヒクサー「ボインボイン〜、ボインボイン〜」
インターミッションからの加筆で、単独偵察任務に出るヒクサー。引用の台詞は、セファー撃墜後、とぼとぼ徒歩で帰路につくヒクサーが口ずさんでいたもの。
……アホの子ぶりが増大しとるやないか。
他にも「ヒクサー空間」「空気読めない感がヒクサーの強さ」「GN粒子が電波を攪乱するように、ヒクサーは、自前の能力で人間の空気を読む機能を攪乱する」などなどえらい言われように!
Fになってからは、この攪乱能力は失われた? ようですが。
しかしこの話の落ち部分はシリアスなのであった。
INTERVAL
金色には少々飽きていた。
今、金色が好きなヤツと行動を共にしているためだ。
リボンズ(名前は伏せられている)の独白コーナー。しかし都会の繁華街にいたら男娼と勘違いされるって……ひでぇw SEで追加されたアレハンとのアッーを見るだに、あながち間違ってない気もするから困る。
とりあえず、今はソレビ号の内装作業で忙し楽しい模様。
ここから下巻のターン!
FILE17
ムックなどでは「光速で却下された」ヒクサーの特訓案(「まずはイメージトレーニングから」)。今回はそれが却下されるまでのやり取りが入ってるんですが、長々と嫌みを言うグラーベってのも珍しい。文化的生命体て。
インターミッション(その2)
ムックでの追加時、エコの初ガンダム登場だった回。
加筆でエコの実力が詳しく描写されているんですが「突発的な事態に弱い(でも予定通りなら高い能力を発揮できる)」って……。ノリノリな時はトップクラスの実力を〜って設定は変更されたのかな?
FILE19
ハレルヤ登場編。ラストが少し加筆されて、グラーベがハレルヤに対応する図が出てくる。E57とは何か印象が違うな〜とはあったけれど、追って調査の部分は特に加筆されず。
インターミッション(その4)
ムックで追加されたあげゃのエピソードに、グラーベと再度邂逅する様が加筆。荒野で銃撃戦、てそんな西部劇な(地雷原とかあるけど)。
インターミッション(その6)
「そんな女ったらし、死んでいいんじゃないですか」
グラーベ女装する。の巻。
挿絵がないことが惜しまれる! しかし声帯コントロールか、ティエリアはボイスチェンジャーだっけ? ノリノリでメイクさせるシャルが、珍しく楽しそうだ。
それにしても、ここでイノベの性別について説明されていますが。イノベの性別があったりなかったり曖昧にされているのは、まだ続行なのか……。質問コーナーでティエリアの性別確定したかと思ったら、それ葬られたしな。
しかしティエリア、ブリュン、グラーベと女装した(させられた)イノベがこれで三人。リボンズはSEでアッーだったし、千葉シャチョーはイノベの性別をもてあそんでいるねこんちくしょうw!
しかしレイヴは性別アリと考えていいん でしょうか。リボンズは性別あるし、ビサイドも一応マイスターのようだし。ボンズリ様以上に人間を見下しているビサ吉なら、性別ナシもありえますが、レイヴくんの存在がなあ。
ラストバトル
激しい戦い……のはずだが、ここで小物っぷりを晒してるビサイドが、単なる影武者に過ぎないと思うと生暖かい気持ちになってくる。とりあえずヒクサーに喰らわした細工はインストールってことでOK?
リボンズがビサイドのインストール能力を欲しがっていましたが、二期でリジェネに射殺された時、ボンズリ様ったらすぐ別ボディで復活してましたよね?
ビサイドが生きていればいずれその能力を自分の物に出来る(と取れるようなこ)と言ってましたが、どういうことなんだろう。二期時点の00Iではビサイドも復活したけれど、はてさて。
しかしヒクサー「精神障害」か……。
エピローグ+
リボンズとアレハンドロが名前出しで登場。これの後に、ムックで追加されたときた漫画(もとはカラー)があったり。読者コーナーは抹消されたけど、コーナー開設時にときたさんが寄せたイラストは収録されていて嬉しい。
あと、モビルスーツ開発系譜図が四ページ。ガンダム以外にもヘリオンなど他陣営機も網羅されてんですが、いかんせん小さいのが難かw
へれすてへ
ときたさんによるオマケ四コマ漫画、上下巻それぞれ二ページずつ。
「ドクター シャルの頭が腐ってます」
「そりゃ良かった 昔のシャルに戻ったな」
モレノさんの度量パネェ……!
あとGN電柱とか、シェリリン(九歳)に「ボールペンの落書きみたいな女の子」とか。ヒクサーの女性に対する眼力は確かだなあ。
外伝はプラモだけおっかけている人には需要はないでしょうが、ストーリーを追っているなら、ムック版を持っていても買い! と断言できる、充実の内容でした。
外伝シリーズ最大の魅力は、本編との連動(連動してない部分も多いけど;)や、他の外伝作品との連携ですね。ときた買いで00F読んだ人が「他の外伝読んでないと分からない話なんてずるい」と言っていて「ご愁傷様」って感じだったんですが、雑誌を追いながらってのはまだしも、単行本だと入手しづらいムックは面倒だったわけで。
こうして手に入れやすい形になってくれたことは、ありがたい限りです。
連動との関係で伏せられていたであろうネタもちゃんと消化されて、スッキリまとめ良い感じになりましたし。
デルとレナードはどうやら00Iに出演しそうなので、「外伝の総決算」とシャチョーが公言するIの行方を楽しみにしてます!