ダグラス・アダムス『銀河ヒッチハイク・ガイド』

 時のかなたにかすむ太古の時代、先の銀河帝国の大いなる栄光の日々、
 世界は荒々しく、豊かで、そしておおむね非課税であった

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

 たまには毛色の違うSFも読んでみなくてはなるまいて。
 というワケでカルト的知名度を誇る、スラップスティックおバカSF。映画化にあたって出た新訳版です。
 大まかなストーリー自体はWikipediaで見れますが(人生、宇宙、すべての答えとか)、ブリティッシュ・ジョーク満載のすっとぼけた語り口、詰め込まれた小ネタの嵐は是非実際に読んでみるべき。
 古典傑作と呼ばれるのもむべなるかな。とにかく基本的に馬鹿馬鹿しい、脱力する。
 普通に地の文を読んでいたら、いきなり不意打ちで落ちがつく(引用参照)。急に横道に逸れたエピソードが始まったと思ったら、またギャフンな落ちがつき、何食わぬ顔で話が進行する(ヴラハーグvsガガグヴァントとかね)。
「スラーティバートファースト」のように、ネイティブでないと分からなくて、巻末で解説されるようなネタもあるにはありますが……(まあしょうがない)。でもこういう語感の名前、和製ファンタジーでたまにある気がするなあw
 マグラシアの惑星製造ビジネスは壮大すぎてびっくりしましたが、アニメ版のラッキーマンを思い出しました。確かあれ、宇宙人が地球征服する理由が「不況で惑星が倒産した・夜逃げした」などだったんで。
 しかしただバカバカしいだけでなく、マーヴィン(人間そっくりの人格を持たせて作られたロボット。根暗で重度の鬱病)の「人生 憎悪するか無視するかだ。ともかく好きになれないから」など、含蓄深げな台詞もある。
「究極の問い」に関連する終盤のエピソードでは、異星人がすっげーくだらない理由で人類を操っていたというタイタンの妖女を思い出したんですが、案の定Wikipediaでも指摘されてるなあ。
 一方で、あちこちで出てくるギミックのネーミングセンスもいい(新訳にあたって変更された「汎銀河ガラガラドッカン」とか)。ディープ・ソートとの会話で出てくる数々のスパコンとかね。
「多副腎皮質明晰子タイタン攪拌機」なんて、何だかさっぱり分からんけれど凄そうだぞ!
 意表をついて一瞬だけ笑わせるのではなく、後から読み返しても笑えるタイプが多いですね。読みながら、独り言を声に出してツッコミ入れまくった小説は久し振りです。これがまた楽しい。
 マーヴィンが意外な落ちをつけてくれたくだりでは、思わず大笑いしました。
 まだ数冊続編があるので、これは是非買ってみなくちゃいけないなあ。