福井あしび『マコトの王者』赤コーナー1・青コーナー1

 こっから始まるんや。マコトの王者になるための戦いがな!

マコトの王者(赤) 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)マコトの王者(青)  1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
マコトの王者(赤) 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
マコトの王者(青) 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

 ボクシング・ウェルター級のタイトルマッチ。新チャンピオン誕生の瞬間、戦った二人の精神がスイッチした!?
 という入れ替わり系変則ボクシング漫画。しかも意欲的なことに、一つの物語で二つのシリーズ(並列連載)という形式まで取っている。ライトノベルにおけるシュピーゲル・シリーズみたいなもんですね、あっちは出版社自体違いますが。
 十年間無敗の王者・天堂誠と、頭角を現した若き挑戦者・大地真。入れ替わり物のご多分にもれず、大金持ちの御曹司と極貧チンピラという両極端な境遇の二人。
 その上、大地(元)/赤主人公は若さゆえの勢い任せスタイルから、怪我でボロボロ、歳も喰ってる天堂ボディに。一方の天堂(元)/青主人公は若くて健康な体に、積み重ねた熟練の技術が配合されてパワーアップ!
 だが「勝者と敗者が入れ替わる」状態に納得のいかない二人は、互いに再戦を誓い合うのでした。
 青版では家族に反対されながらも経済的には恵まれ、ボクシング的にも負け知らずという勝ち組だった天堂(元)が、狭苦しいアパートで寝起きし、大地(元)の家族を守るべく借金返済のために努力を重ねる。
 中々厳しいというか倒錯的ですらある状態ですが、黙々と目的に向かって邁進する天堂(元)の姿は格好良く、静かに滾る熱さを感じさせてくれます。青版から先に読んだのもあって、赤より好きですね。
 そして赤版では、もはや満身創痍の天堂ボディに驚愕した大地(元)が、「俺はなにひとつ、アイツに勝ってへん!!」と忸怩たる想いにとらわれる。ベルトも体もお前に預けてるだけ! と再戦を約束したものの、天堂in大地の強いこと強いこと。青主人公が赤版では明確な壁となっていて、青版とは違った引き締め方をしてくれる。
 ヒロインもそれぞれにちゃんと存在していますが、こちらは赤版が好みかな。青のほうは大地を応援する三人の妹たちなので、ロリ属性完備。赤のほうは許嫁の女優となっていますが、片や親族、片や婚約者。
 手を出したら殺す! とお互い言っていますが、倫理的にも色々可能な分後者のほうがエロいですがな。いやムフフな展開にはおいそれとなりませんが。ただ、赤ヒロインは殴った相手を車田ぶっ飛びさせているインパクトが凄い。ボクシング漫画なのにそこらのボクサーより強そうとかw
 所々リンクするものの、一話の前半以外はそれぞれ独立したストーリーになっています。ので、完結してから片方を一気読み……ってことも出来なくはない。しかし一巻は同時刊行だったようですが、二巻以降も同時に出して欲しい処。
 で、入れ替わり物でありながら、上記のように精神がスイッチした当人たちがあまり絡まないという展開は珍しいかもしれませんね。
 天堂(元)は「あの男が戻るまで〜」と言いましたが、どちらの主人公も入れ替わった原因や元に戻る方法を模索することなく、互いが置かれた状況を受け容れながらその中で一生懸命やってます。
 まあ最終回でリベンジ戦やって、その際にもう一度入れ替わりが起きるのかもしれませんが……即座に予想できる落ちなので、そこをどう外すか楽しみです。最後にマコトの王者になるのはどっちだ!?