中村光『聖☆おにいさん』1〜4
『悟り』は開いておいたほうが絶対 就職に有利だと思う!
やっぱり一緒に働くわけだから信頼できる人がいいじゃない
その点悟っていれば安心だよ!
- 作者: 中村光
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/01/23
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- 作者: 中村光
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天界の聖人(神仏)イエスとブッダが、下界の日本東京都立川へ、バカンスにやってきた*1! という設定のもと繰り広げられる、ほのぼの日常ギャグ漫画。TシャツとGパンが聖人にここまで似合う物だとは思わなかったわのよ。
わざわざ世界三大宗教の雄をネタにするということは、さぞかし痛烈でブラックで加えてシモネタだったりするギャグ漫画なのであろうなあ……と以前は敬遠していましたが、さにあらず。
これが読んでみるとブラックさの欠片もなく(「天界のクレーンゲーム」とかたまにヒヤリとしたりもするけど)、悪人がいない感じの平和な世界が繰り広げられています。なにこれ心地いい……!
私は仮にも洗礼を受けたプロテスタントのクリスチャンなので、小さい頃から「イエス様」と呼んできた対象を声に出して呼び捨てにするのはちょっと違和感もあったりしますが。宗教的には全然オッケーですね。
さすがに作者は「イスラム系は出さない」と宣言しているそうですが(笑)。
全体的に立川の安アパートやその周辺での生活ギャグと、イエス・ブッダ両名の神仏ネタが二本軸なのですが、神仏ネタ関係は日本人ならだいたい分かる有名なネタも多いのであまり知識がなくても楽しめるはず。
ただ、その12の「HP一桁の時に布で顔拭くと〜」は、聖骸布のことだとしばらく気づけませんでした。あとディーバダッタってどんなんだっけ、としばらく悩んだり。手塚治虫『仏陀』や映画リトル・ブッダはまあ通じるっちゃ通じそうですが。
まずブッダとイエスのキャラ立てが秀逸ですね。
ジョニデ似で浪費癖があってアルファブロガーでドラマとゲームが好きなイエス、そんな彼を諫める倹約家で家事が得意で漫画も描いたりするブッダ。この二人がボケツッコミを入れ替えながら愉快なやり取りを見せてくれます。
というか、こんなに(萌えとはちょっと違う意味で)可愛い聖人なんて初めてだよ!
神仏ネタの使い方も作者の発想や着眼点の巧さを感じる物ばかり。
イエスの水上歩行の奇跡が「極度のカナヅチのイエスが、『もういい、歩いちゃう!!』」とやらかしたため起こっただとか、「仏の顔カウント」「苦行スイッチ」などの小ネタetc,etc…。大天使たちにはまた登場して欲しいですね(三巻のウリエル召喚が四冊で一番笑ったシーンでした)。奇跡で石をパンに変えるからって「やたらイースト菌と仲良し」なんて言われたりとか。
聖人なだけあって、テンションがあがったり落ち込んだり怒ったりすると、後光が差したり様々な奇跡が起こるのも毎回笑えます(特に献身的すぎる動物ネタとか)。ただ二巻あたりでは空中浮遊は気合い入れてやるものでカロリーもよく消費するワザだったのに、後の話ではリラックス状態のことになっていたり、そんな齟齬もちまちまあるにはありますが。
あと、この作品って三位一体は採用されてないんですね。
鳩(聖霊)=父さん(父なる神)として登場するし。母さんはマリアさんとして言及されているのになあ。大工のヨセフさんやその父(つまり祖父)は聖人として列せられているから、それに準拠するってことでしょうか。
*1:有給休暇二人合わせて月26万で生活。