緋鍵龍彦『断裁分離のクライムエッジ』1

 …我は最悪の血を継ぐもの 断裁分離のクライムエッジ

 唐傘とは異なり、こちらはぐっと対象年齢が下がった感じの伝奇バトル漫画。
 一言でいうと「これはよい中二病ですね」。罹患対象中高生の心をくすぐるワードとセンスに充ち満ちていて、狙った感が少々するものの、適齢期の自分ならハートをガッチリされていたこと間違いなし。
 抜き出した台詞もそれっぽい所から持ってきましたが、一巻の段階では日常>バトルくらいの案配。女の子の髪を切るのが大好きというフェチ魂変態主人公が、呪われているせいで際限なく伸び続けしかもその分美しくつややかな髪を持つヒロインを守るため、殺人鬼(の子孫)と戦います。で今のところのメインはヒロインとのいちゃいちゃ。
 戦闘の設定自体はいわゆるバトルロワイアル系。
 参加資格は「殺人鬼の子孫」であることであり、契約対象は先祖が殺人に使って呪いを宿した凶器「殺人遺品(キリング・グッズ)」。この呪いをおっぱじめたのがヒロインの祖先であり、ヒロインを殺せば呪いが解けるとか願いがかなうとか。
 冒頭1p目の主人公の独白(願望)そのままに合致するストーリー展開もまた中二的であります。実はあの「髪きれいだね」の見開きからすべて、戦闘も遺品もヒロインも主人公の妄想なんじゃないかという、そんな気分。そう思ってしまうのは歳だろうか。
 まともかく、タイトルの他にも「昏睡昇天のインジェクション」「破砕粉壊のスレジハンマ」といった殺人遺品のネーミングといい、病院坂姉妹の名前といい、やはり電撃文庫あたりのラノベっぽいセンスがありますな。
 そもそも主人公の年齢からして中学二年生だし。
 扉絵でキャラクター紹介と殺人遺品のステータス紹介をやっているゲーム的な演出といい、やはり計算された中二臭という感じ。そうした読者受けを誘う一方で、本作で作者が書きたいのはやはり髪フェチだろうか。
 主人公はときにヒロインにすら引かれながら、髪への愛を示してやまない。そもそも設定からして「無限に湧いて切り放題の美髪」「自分の鋏でしか切れない、独り占め必至の髪」ですからね。
 中二病黒歴史・髪フェチの方にはお勧めの一品です。……ああ、しかしヒロインが失禁しているっぽかったりとか、やっぱこの作者なんだなあ。唐傘の野尿ほど直接的じゃなくなっただけで。