イングロリアス・バスターズ見てきました(ネタバレ注意)。

 感想は続きを読む、から。
 んで、も一つテスタメントシュピーゲル届いたんですが、早速OPから鬱過ぎる上に面白いから困る。続くんだよな……こんなに分厚いのに。読んだらしばらく飢えて色々手がつかなくなりそうだから、原稿終わるまで置いておくか。
 あ……っもう十二月になっちゃうのに、今月中に電撃原稿終わらなかったぜ!
 まあこのラノ送るのやめたから、余裕は出来たんですがね。代わりに電撃に短編も送ろうかなと予定を変更。
 やっぱりタランティーノだったというか何というか(思考停止風言い回し)。いやタランティーノだから当然っちゃ当然みたいな? 選曲とか落ちとかテンションとかユーモアのセンスが主に。
 元は七十年代の映画『地獄のバスターズ』(伊)をリメイクしたそうで、BGMのセンスはその関連みたいですが。マカロニとかウエスタンな。
 しかし死んじゃいけない人が死んじゃったんですけど、これ『地獄』もこうだったのかなあ? 顔とか穴だらけになっていたのはヒトラーゲッベルスか。出てこないけどボルマンとゲーリングも助かってないよねあれ。
 映画館で映画館が燃やされる映画を観るのも妙な感じというか、ショシャナ*1の笑い顔が煙に映って阿鼻叫喚なシーンでは、ちょっと居心地が悪くなった。エンディングであのでかい顔が出てくる演出あるかなと期待していたけれど、別にそんなことなかったぜ!
 終わった後に何も残らない感じや、痛そうなシーンがそれなりにある点は俗悪と言えるんですが、俗悪の旨みや面白さがあるんでオッケー。でも、ブラッド・ピット演じるナチハンターの中尉が「ナチ百人から頭の皮剥いでこい!」って言ったのが、比喩や冗談じゃなくてマジだったのはびっくりだぜ……。ちなみに生存者には、額に切れ込みで印を入れます。
 それにしても、フーゴ*2の鞭打たれている回想はなんだったんでしょうか。
 無実の罪でゲシュタポに拷問された恨みが……とかそんな解説が入るかと思ったら、回想の数分後にドンパチで死んだのでポカーンとなってしまいました。あと、ユダヤの熊ドニーによるバットで撲殺! が一回しかなかったのも拍子抜け。
 クライマックスではばんばん人が死んでいくんですが、それ以外だと長々とした会話のシーンが多いので、意外と地味な作品でした。つかユダヤハンターのランダ大佐とアパッチ・レインの会話あたりになると、眠くなりそうだったし(私が睡眠不足だったせいもありますが)。
 ただ、宣伝で監督が言っていたように「言語の違い」による拘りが演出として全編に発揮されているのが非常に良かったです。白人だとしゃべれる言語で○○人って装ったり出来るんで、大戦中の欧州ではマナーやアクセントなどの違いからスパイを見抜いたりしていたんですが、それと同じようなシーンがあるんですね。サインの出し方とか。
 通訳を介してしゃべるシーンや、言語が分からないため危険に気づけなかったシーンなどなど。フィクションではしばしば、手続きの煩雑さゆえに言語の壁は無視される傾向にありますが、その煩雑さから生まれるドラマを本筋にちゃんと絡めているという。
 あと二次大戦物で黒人のキャラクター(マルセル)が出てくるのは珍しい気が。
 ユダヤ人のショシャナが四年間でなぜ彼と愛し合うに至ったかはよく分からんのですが、この映画全般的に内面の葛藤とか切り捨てた作風だしなあ。ランダ大佐が最後、いきなり祖国を裏切る気になったのも理由が分からんかったし。
 しかし言うのがナチなら黒人への差別発言も許容されるのね。つくづくナチスは「殺されてこそ華」よのう。まあハイル我が輩! の時代から欧米のナチス嫌悪は、欧米人自身によって茶化されては来ましたけれど。
 この映画は茶化しているって言うより、「お前らナチには何してもいいと思っているだろ?」的な意識をスクリーンに投影してやるぜ! という感じかな。ナチを殺すバスターズ側も悪に属するみたいだし、悪と悪の食い合い(でもやっていることは一方的だったから、殺し合いとは違ったなー)でした。

*1:復讐に燃えるユダヤ人女性

*2:ドイツ兵だけどゲシュタポの偉い人を殺しまくって逮捕された人。バスターズにスカウトされたナイフの達人。