祭丘ヒデユキ『シャングラッド神紀』

 オレは無神論者だぞ 超偏向イデオロギストだ!
 オレは真理のために戦っている 復讐などという個人的満足のためではない
 お前ごときと一緒にするな!!!

シャングラッド神紀 (チャンピオンREDコミックス)

シャングラッド神紀 (チャンピオンREDコミックス)

 成人コミック出身の作者による、チャンピオンRED連載作の単行本。
 その経歴だけあってナチュラルにシモネタが混ざっていたり*1、ギャグとシリアスが渾然一体となったカオスなノリを持っていたり、掲載誌に相応しいアクの強い一品です。
 舞台の地名からして、「ヒ連(ヒンドゥー梵我主義連邦神和国)」に「ヴ国(ヴッキョー神民共和国)」とイイセンスしてる。他にも「職業神敵(プロフェッショナル)」とか「臠殺」とか「お前らの名は神話にも残さない」などなどの台詞回しもイイ。
 物語は、神が国を治める神治国家世界にて、無神論者の主人公と相方の元神が、神殺しの「神敵(テロリスト)」として各地を巡ります。打ち切りエンドっぽいシメですが、一応作者にはまだ物語の構想があるそうで、出るものなら続きを読みたい。
 でもこの単行本出るのに、三年かかっているのよね……。
 そんだけ長い期間があったせいか、話によって絵のクオリティが結構変わっていることも。だいたいは好きなんですが、三話のテキトーな造形の帝釈天/インドラとか、線の細さ・画面の白さは気にかかった。
 逆に、ラストの第五話はサブタイトルといい内容といいかっ飛んでましたね。作者の経歴を否応なく思い起こさせる、堂々としたエロスの数々。「南極くん」とか、ナチュラルにリンガを咥えているカルとか(つーか○○○が堂々と画面にある時点で…)、「○○皮ひんむくぞ」発言とか。さすが秋田の赤い核実験場、少年誌とは名ばかりだ、もっとおぞましい何かの雑誌だよ。
 全体的にインド神話を下敷きにしていて、ヒ連とヴ国の間を移動すると神様の名前が変わったり細かいフォローも忘れない。んで、神と名乗っているのが実は人間であることが一話から明かされているんですが。
 移民がどうとか地球発祥とか、どうも背後にSFな世界観が広がっていそうで、そのへんはゼラズニィの『光の王』を思い起こさせるかな(まあこれと同じような設定自体は、わりとあるんですけれど)。
 でも元がサラリーマンだとか、「高校の同級生」とか言っているのを聞くと、突発的にこの世界に来てしまったんだろうか? あるいは移民船の中でリーマンや学生やってて、シャングラッドに降りてから軒並み神とか。
 キャラクターでは、カルティケーヤ(韋駄天)がお気に入りです。六つ子の女神で、六人が合体して一人の女神に変身するけれど、六人のままバラバラになって戦ったりもする。その名前から察する通り神速がウリで、戦闘力も高い。
 でもアホの子。迷ったら六人で動議して決めるけれど、六人とも結局アホ。
 主人公の相方・シャンカラ同様楕円形の顔してますが、そこに細長く尖った鼻という造形が特徴なんですが、怒りの戦闘モード時は真面目に怪物顔になって恐ろしい。普段は可愛いやつなんですが、怖い顔とのギャップがたまらない。
「六人で一人」だから若干ややこしい面もあるけれど、実は髪が数字になってたりするとカラーページで気がつきました(読了後にね)。

*1:こんなに「乳首」や「おっぱい」が話の重要なファクターとして大真面目に機能しているバトル漫画もない