曽我部修司『オイレンシュピーゲル』

 冲方丁ライトノベルをコミカライズしたもの。表紙の尻とフトモモとパンツ具合が実に危険。あと犬耳いいよ犬耳。更に表紙をめくると、ニップレス一丁セミヌードの三人娘のカラーというサービス仕様になっている。
 オイレン一巻のストーリーがきっちりまとめられており、どんな話かを知るには充分な内容。
 ただ、原作の魅力を全て伝えているとは言いがたい所。
 まあ原作付きコミカライズは制限も多いし、これだけ話をまとめられていたら及第点なほうかなあ。三人娘の尻の描き分けとか、フランツ中隊長が結構格好良かったり、原作ファン的にも見るべき所は色々ありますし。千々石も良い感じ。
 しかし冲方丁といえば、カオスレギオンで「民と土地」をテーマにしたり、マルドゥック・シリーズで「都市」を単なる背景ではない、物語の重要なファクター(もはやキャラクターのひとり)として描いたり──。
 とにかく「人と地」に拘ってきた作家です。
 シュピーゲル・シリーズでもそれは如実に表れていて、スプライトでもオイレンでも、舞台のミリオポリス(=オーストリア、ウィーン)が歴史の最前線であることが、主人公らに投影されており、不可欠な要素なんですが……。
 さーすがにコミックスじゃそのへんバッサリ切られているんですよねえ。舞台がオーストリア以外のどこかに変わってても大丈夫なんでね? ってぐらいの勢いで。仕方ないといえば仕方ないですが。
 それと別に気になったのが、無線通信とナレーションとモノローグが全部四角い吹き出しで表現されていて、区別されてないこと。せめて無線通信(いぬぶえ)ぐらい、二重枠吹き出しあたりで区別して欲しいもんです。