井原裕士『超常機動サイレーン』1〜4巻
- 作者: 井原裕士
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2005/04/27
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……と思ったら後半はわりとシリアスに傾いていましたが、爽やかな読後感の良作でした。
終わってしまうのが寂しく感じる、そんな楽しい作品。設定としてはお約束もお約束なのですが、ヒロインめるな(サイ=ドルフィン)と相手役の水凪(みなぎ。ドクターM)の初々しい恋愛模様にニヨニヨしてしまいます。
やっていることは単なる送り迎えだったり、食事に行ったりと清い交際を延々続けるばかりなんですが、カバー下の漫画でプレゼント選びに悩みまくったり、水凪に人生台無しにされた級の女へのトラウマがあったり。
で、更に水凪はめるなが敵対組織の関係者(実戦部隊以外の)だということで「情報収集」を目的に近づくんですが、なんら他意のないめるなに段々と惹かれていく過程が楽しい。……後になって一巻を読み返すと、初遭遇時の険悪さが凄い新鮮ですわ。
二人がすれ違ったり痴話ゲンカになったりするのが、婚約してからとわりと遅かったり、プロポーズした次の回にはもう両家の親が顔合わせしていたりと、一部展開が緩急落差あったりもしますが、読者を置いてけぼりにするってんじゃなく、「そういうノリの作品」として抵抗なく受け容れられる。
毎回、星統商事の裏の顔「エコエコ団」が活動するとサイレーンがそれを止めに入るのですが、戦闘で損傷した怪人たちを修理調整するのは水凪なので、お仕事をがんばると二人のデートにも支障が出たりします。
エコエコ団が若社長の道楽でやってる的な面があったので、構成員が残業続きで家に帰れないと嘆いたり、上司に無茶言われてうんざりしたりと、中間管理職と下っ端の悲哀満載な「悪の組織」事情も面白い(このへんが特撮パロの味わいですな)。
怪人たちもいわゆる人造人間で、自意識の問題とか身の振り方とかも色々出てきます。特に三巻から登場するエータは、見た目が少女なのとか、めるなとの交流なんかもあって、萌えキャラとして確立した感もありますね。
ハードSFにはさすがに及びませんが、AI・人造人間萌えには中々オイシイ。火車さんの登場で備品呼ばわりされてしょんぼりしたり、やんちゃだったイプシロンが独断行動取ったり、おまけ漫画で「心はどこから来るのか」なんて質問をエータがしたり。
水凪がめるな=ドルフィンであると知ったり、めるなが水凪の正体を知ったりするシーンは、もっとショッキングな感じになるかと思ったら、あまりそうでもなかったけれど、そこを不満に感じないあたり、この作品のまったり属性は高性能です。
後半はどんどん騒がしいことになって、シリアス展開も入ってくるし、残りページ数を見ながら「おいおいどーやって纏めるんだ!?」と思っていたら、スッキリ完結させていて作者の手腕にびっくり。このまとめの巧さが読後感をさらによくしてくれています。
うーん……主人公たちの夫婦生活とかちょっと見てみたかったなあ。
最後のオチは一抹の寂しさが残るものでしたが、結果的にはあれで良かったんじゃないかなと思います。ただ、エータがあそこで退場して最後の最後までそういう扱いになるとはびっくりでしたが。安易に復活とかにならないんだものなー。
何にせよ、いい作品に出会えたと思います。しかし星は結構なタヌキでしたな。何のかんので、キャラクター一人一人が妙にいとしいものがありました。