ジョン・スコルジー『遠すぎた星 老人と宇宙2』
「奴隷になることを選ぶのか」
「違います。この選択をしたときに、僕は奴隷であることをやめたんです」
「だが、君が選ぼうとしているのは、きみを奴隷にした連中がきみに進ませようとしている道だ」
「それが僕の選択です」
- 作者: ジョン・スコルジー,前嶋重機,内田昌之
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/06/25
- メディア: 文庫
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コロニー連合軍(CDF)は彼を使うことで、ブーティンが裏切った動機と、何をしようとしているのか、どこにいるのかつかもうとしたのだけれど、ジェレドはまったく別の一個人になってしまい、CDFはこの試みを諦める。
……というのが第一部までで、第二部からは次第にブーティンの記憶を蘇らせたジェレドが、自分自身と直面していく、そんな物語。ジョンもいいキャラでしたが、ジェレドはなんともいい主人公でした。
今回、作中で追加されたスマートブラッドの燃焼特性が、最後の最後でああ働いたのは膝を打った。……あれの死に様は結構グロそうだなあ。生半可な焼死体になってそうで。
今回は、一巻で出ていた『ゴースト部隊』を始め、世界観がさらに詳しく書かれているのが中々読み所でした。あの改変された肉体の製造工程が出てきますが、あんだけ超技術使っているのにトイレのペーパータオルは補充し忘れる人類って、人類なんですね。
ただ、彼らが人間の姿をしているようで、別に人間に近いんじゃなくて、人間に見えるようガワを調整しただけってーのは凄く恐ろしい話ではあります。この点は特殊部隊のジェーンも一般CDFのハリーも同じなのかしら。
一巻の時点でも結構オマージュを感じた本作ですが、今回は特殊部隊の新兵たちが数々のSFを十倍速で鑑賞するシーンがあって、そこで有名作品が名指しで出てくるのが笑いました。スターウォーズを見てビームサーベル欲しがったりとか。
前回は「新兵の出世物語」という、ハインライン『宇宙の戦士』と重なる筋書きでしたが、今回は上記のような経緯を経て生まれた主人公がアイデンティティを確立させる、「人造人間もの」の体裁を取っていますね。
意識の問題とか選択の自由が云々と言及されるシーンも多々ありますが、適度に切りあげているあたり、うまく娯楽作品としてバランスを保っている。そして、コンクラーベとか断種とか世界観の謎についても突っつかれ、ラストシーンのゾーイの存在など、次回作に続く要素もてんこもりでいやー即座に第三巻に手を伸ばしたい所存。
問題は、その三冊目はトールサイズのため、前二冊と並べると背丈が合わないってことだけどね! チクショウ!