冲方丁『マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮』

 ──なんで私なの?

 今さらながら読み始めました、マルドゥックシリーズ。ブックオフでSF本あさっていたら、一巻と『ヴェロシティ』二、三巻だけ置いてあるんでやんの。なにこの絶妙の配置!
 さっそく一巻を読み終わるなり、残りをbk1で注文いたしましたわよええ。
 読んでみての印象は、「野性のシュピーゲル」。あちらこちらに、オイレンシュピーゲルスプライトシュピーゲルの原型と思える設定やキーワードが散りばめられています。
 焼き殺されかけて、人工皮膚を与えられて復活したバロットなんて、「四肢の欠損していない特甲児童」ですしね。ウフコックその他に対する「操作(スナーク)」は、リヒャルト・トラクルが常々口にする「操作」との繋がりを容易に連想させます。まあ意味合いはちと異なるんですけれど。マルドゥック・スクランブル-09なんかも、身障児童の機械化を定めた法律に通じる物があるような。
 今回、敵として登場する誘拐犬バンダースナッチも、涼月たち特甲児童のチームとコンセプトが同じですね。
 我らは互いの手となり目となり……って台詞とか(実際、サイバー化で情報の共有を行って、高度な連携を可能としている)。通信と書いていぬぶえ、と読んだり。顎骨に移植とは書かれなかったけれど、地声って表現もありましたしね。
 確かシュピーゲルの一巻が出たころ、「マルドゥックシリーズのキャラとかを、ラノベに沿うよううまく萌えキャラナイズしている感じ」という感想を見たんですが、その意味がとってもよく分かりました(笑)。
 しかし冲方さんは、相変わらず近親相姦好きだな。ヴェロシティにもその手のキャラがいたような。
 手元にちょうど『冲方式ストーリー創作塾』もあるので、合わせて読んでみました。先生! 「あなたもマルドゥック・スクランブルが書ける」は、分かっていてもやっぱり誇大広告だと思います!
 あー、この部分がこれなのねー、と頷きつつ愉しく読みました。ええ。「去勢された男性存在」ってのは、ウフコックよりイースターにかかる感じ? マルドゥック市が男性的社会と設定されているのも、一貫したモチーフのゆえか。
 いまいち内容に触れているようで触れていない感想ですが、まあまだ一冊目なのでご容赦を。二巻の感想も書きますが、三巻の時に全体の感想を書くと思います。