関よしみ傑作集『魔少女転生』

関よしみ傑作集 魔少女転生 (ホラーMコミック文庫)

関よしみ傑作集 魔少女転生 (ホラーMコミック文庫)

 今回は少女フレンドにて掲載された魔少女シリーズが中心で、あとはまあ、ぶっちゃけオマケみたいな感じ。
 一話あたりのページ数が多いとはいえ、全三話で200pにも満たない内容なのに、数冊に及ぶ長編漫画を読んだような読後感を得られます。短いのに内容が濃厚なのは、関よしみ漫画の特徴。この内容の濃さ、お得ですよ!

魔少女転生第一話 闇からきた天使

 どうしたらいいの!? 玲奈が望めばみんな 玲那のために喜んで死んでいく……!?
 主人公・真奈の妹・玲那はとてもかわいらしい。その目に見つめられて「おねがい」されてしまうと、どんな願いでもかなえてやりたくなるほど。彼女にお願いされると、みんな自分の目玉も命も差し出してしまう、それも喜んで……!
 鬼女紅葉にも通じる鬼姫伝説と絡んだ、和製オーメン少女漫画版といった趣か。三歳の少女が老人の目を突き刺したりするシーンもびっくりですが、小さな子供が木から落ちたり、滑り台で首吊ったりして死ぬシーンも多い。
 凄惨な事件を起こしまくる幼女だけど、周囲に大人は「玲那ちゃんが無事でよかったよかった」と笑っているわけで、その落差がぞっとします。最後はわりと予想通りだったんだけれど、やはりドラマチック……。

魔少女転生第二話 新たなる誕生

いつも玲那のようにだれからもいちばんに愛されたかった!!」
 記憶喪失になって復活した真奈には、鬼姫の力が宿っていた……という新章スタート。前回登場していた進藤先生の変わり様はわりとショック(見た目もそうですが、すっかり人が変わっちゃってまあ。妻子があんなんなっては仕方ないでしょうが)。
 頭が痛くなったと思えば時間が飛んで……は、多重人格の症状そのままでちょっと生々しい。
 今回も、指輪を欲しいと言ったら、相手が指ごと切って、なーんてシーンの目白押しです。銀行強盗しちゃうけれど、主人公の名前は絶対出さない先生とか。満員電車でリンチされる痴漢は中々怖い。

魔少女転生最終話 支配

 いつも…… いつだってあたしのいちばん欲しいものは……
 この指のすき間からこぼれ落ちてしまう……!

 前回のあれやこれやで生き方を決定してしまった真奈。
 冒頭二ページで「オッケー! 見てて!!」の一言で飛び降り自殺が敢行されたりして、鬼姫フルパワーです。「あたしもやりたかったワ飛び降り自殺」と、ごく普通に話していたり、魔力が浸透しまくっているのがよく分かる。
 盲目の理事長という能力の通じない人も登場し、それに対抗すべく真奈の行為はどんどんエスカレートしていく。授業中にレイプとかえらいことにもなったりしますが、富士城家の人々は中々立派なもんでした。
 最後はハッピーエンドのようですが、魔少女はまだ終わらない……。

魔少女のおもちゃ箱

「ずーっとずっといっぱい いたければ おねえちゃんずっとおうちにかえんない?」
 タイトルでややこしいですが、転生とは繋がりのない別シリーズ。
 前ページの瞳ちゃんとみゆきがそっくりなので、余計にややこしい……。
 雪山で遭難したスキー客の男女、彼らがたどりつき保護された山荘には恐るべき怪物がひそんでいたのだった! という話。とりあえず、魔少女転生一話のよーに恐るべき幼女が大活躍します。きっと諸悪の根源は、あれを放置していたじいさん。
 羽根と足をもいだゴキブリと、それを触った手で作ったハンバーグがかなり嫌。

嘆きの聖母

 プロローグで、性なる夜と化しているクリスマスに憤る真理亜がいるんで、カップルを惨殺する話かと思ったらそうでもなく。基本は結婚とか堕胎をテーマにした物語でした。そのため、どうにも生臭い話題が多くなりますが、家族愛すばらしす。
 ただ、ホラーというよりは普通にヒューマンドラマで「いい話」に終始しているのが残念。

汚れた白衣

 医療ミスを扱った作品。
 こちらも聖母と同様、いい話系でいまいち。
 刺そうとしたら相手が倒れて勝手に死んだり、悪役の心臓が止まった途端、主人公の母親の心臓が動き出したりと、ちょっとご都合に思える演出が多いのもマイナス。というか悪役のイカレっぷりがちょっと……とも思う。

怠慢元年

「それにしても日本人 おもしろいくらいカンタンに 楽へ楽へと流されて行くネ」
 正月ボケに便利な「代行サービス」が相乗効果で怠けっぷりが加速して、という話。
 これは中々教訓的な内容で、身につまされるような事項がたくさん……。ただ、スウさんがハイスペック過ぎたりするのはちょっと気になる所。面倒夫妻が殺人代行サービス頼まれても、新聞記事で普通に無事が確認されたのも生ぬるい感じがしてしまう。
 特に、個人的に気になったのは主人公の母親。かつては小説家志望だったママは文芸誌に投稿して、かなりイイ線まで行っていたそうなんですが。家事を代行に任せて再び夢に挑戦!
 ……と思いきや、「苦労して書かなくても世の中にはこんなに面白い小説があるんだし」と書くのをやめてしまう。えー? 一度はイイ線まで行った人が、そんなカンタンに諦めちゃう? と首をかしげます。面白い小説に創作意欲は刺激されないんですかねえ。