八房龍之介『スーパーロボット大戦OG -ディバイン・ウォーズ- Record of ATX』1・2

「ゲンが悪いと思ってる?」
「──いや。今度こそ俺がうまく使ってやるさ。このまま貧乏クジ引いたんじゃ割りにあわねーよなお前も」

『宵闇幻燈火草紙』『ジャック&ジュネシリーズ(塊根の花、仙木の果実)』など、伝奇的な話をブラックな作風で綴る作者の、ゲームコミカライズ。古今東西のロボットアニメが一同に会してドンパチやらかすゲーム・スーパーロボット大戦は有名でしょうが、作品間の整合性をつけるためにどんどんふくれあがっていったバンプレストオリジナル設定・キャラのみで展開されています。
 ラスキン卿の『偶神クスィ・アンバー』とか、終盤の怪獣大決戦みたいな展開といい、宵闇時代から「ロボットとか特撮好きなんだろうなあ」って印象がありましたが、それを証明するように巨大ロボットが画面狭しと暴れまくる。
 実際、連載している電撃ホビーに対して、単行本のサイズがめっちゃ小さいのが残念ですね。同じ大きさにしろとは言いませんが、せめてB5ぐらいは……。まあそれでも迫力あるシーンが多々あっていいんですが、うーん。グルンガスト発射のカタパルト、もっと大きな紙面で細かい所を観察したかったものです。
 ただ、一方でオリジナル作品で見られたブラックな作風が壊滅しているのは、ファンとしては寂しい限り。
 まあ、たまに「ああ八房さんだな」って感じの言い回しとか出てくるんですが。クロニクルのほうで出た宇宙ヒラメのキモさグロさとか、老人キャラのしわくちゃ怪物ぶり(電撃ホビー六月号の、アードラーやアギラ)とかも、らしくていいです。ジーベル少佐とかの「イヤな人間」の描き方もそうかも。
 後書きは相変わらず字が細かいですね。落書きのロボにもやはり愛が溢れている。
 スーパーロボットですから、あちこちのギミックはヒロイックさ・アニメチックさがあるのですが、コクピットの中とか軍組織なんかは、なかなかミリタリーしていていいと思います。エクセレンの新型初出撃時のICBM狙撃は燃えます。細々と数値呟いて、バーニアやら羽根やらに微妙な修正を加えていったり、山ほどデータウィンドウ眺めたり、引き金引くまでの緊張感など……圧巻。
 戦艦のトップが少女艦長だったりするのも、やはりなーって感じなのですが、いざ戦闘となると額に汗してバンバン指示を飛ばす様は萌えると言うよりも燃える。二巻後半の戦闘とか。
 しかし彼女が飲んでいたホット莓みるくはまだしも、副長が飲用していた液状スパムって……(おえ)。
 基本的にずっと戦ってばかりの話で、物語がすすむにつれ何が何やら分からなくなってくるきらいはあります。
 架空兵器のミリタリー漫画読むようなものというか。まあキャラクターもきちんと魅力が出されていていいです。ムッツリ……もとい沈着冷静な熱血漢キョウスケ、知的だけどそれをひけらかさない脳天気をよそおったエクセレン、生真面目なブリット、融通のきかない堅物隊長ゼンガー。また、ちょっと出の脇役にも個性的なデザインが配されているのもいいですね。
 連載のほうではDC戦争終わりましたが、スクールとか出てくるのはいつかなーと楽しみ(王女は出てきたけど)。