ホラーM六月号

 十五周年ですってよ。メタリックな銀色にミカモンの絵が映える表紙でイイ。
ミスミソウ/押切連介
そんなお父さんをいつかキミに見せてやろうと思って…
 ブラック相場vs流美vs春花の三つ巴決戦な最終回。
 とだけ書くとバトル物っぽいですが、内容はといえば、実に救われない終わりでした。やっぱり、春花があの時しょーちゃんじゃなく、相場の「手を見に」追いかけて行ってしまったのが運命の分かれ目だったんじゃないかな……。
 最後がこうなるのは予想済みでしたが、やはりその過程が苦しい(展開として苦しいのではなくて、読者の心情として)。とうとう本性を現した相場、手前勝手に春花を非難する流美。相場の「写真」や池田君、そして例の林道と、これまでの伏線がぎっしり生きています(そういえば前回も「除雪車」がしっかり布石としてきいていましたね)。つくづく細部まで計算され尽くした作品でした。
 ただ、それだけに編集の仕事が……「押切先生の次回作にご期待下さい!」のアオリがあの見開きであって、「え、これラストーシン!?」とびびった。すごい邪魔だよあれ!
 それにしても、しょーちゃんとの別れは切ない。最後の最後であのペンダントまで……人を殺した春花は幸せになれないってことだろうけれど、人を殺さなくちゃいけなかった原因が原因なんですし。もしかしたらしょーちゃんの最後を看取っていれば何か違ったのかもしれない(少なくとも春を迎えられたかもしれない)けれど。やっぱり散ってしまったんでしょうね、あのラストは。
 続々と見つかる、これまで散っていった生徒たちの死体。あれを見た親たちはどう思ったのか、そして最後になってやってきた相場母は……? そのへんの後日談は気になりますね。何にせよ、押切先生は連載お疲れ様でした。
 またホラーMで読めるといいなあ。アオリ通り次回作に期待しています。……雑誌の存続自体が危ぶまれますけれどね。トカゲ売れてないでしょあれ。単行本三巻は6/17発売ですってよ!
もののけ草紙/高橋葉介
 本郷義昭って大正時代の人では(シルバー仮面)。ん? でもあっちは大尉だったし昇進してんのか。いや関係ないかもしらんが。でもロボット兵士ゆーてお約束通り二八号いるんでフイタ。
絵画修復家キアラ/たまいまきこ
 嫌いではないが、なぜこれがトカゲ行きでないのか。
 今回はミケランジェロが出てきたり、唐突にキアラに婚約話が持ち上がってきたり、何だか話が大きく展開していきました。
給食の飯田さん/三家本礼
 今回は給食費滞納ドキュン親をヒロインが成敗する話。
 まあ冒頭の時点でだいたい想像はつきますわな。オチのカニバリ含めて。
 ただ、ミカモンの描く「イヤな人間」がすごい良い感じ。あかねちゃんより、親のほうがね。うん。小学校は義務教育だから給食も税金でまかなえ! うむ、いかにもだな。
 どうしてモンスターなのか教えてあげる!! 退治されるべき存在だからよ!!
 そしてこのスプラッター描写。ズバッと人が殺られるところは迫力があり、これが爽快なのです。あー毎回読み切りミカモンが読めるだけでも定期購読してよかったと思いますわ。あと、「飯田はレベルが1あがった!!」に噴き出した。これはツボる。
コールドアパートメント/財賀アカネ
 連載第二回にして、第一回からの繋がりがゼロ。なんという力業。
 彼女とアパートに同居しているって点では同じですが、前回とは違うアパートメントですよね、どう見ても。しかもホラーのポイントがアパートという地所とかじゃなくて、音楽のほうですし。
 絵は好きだからがんばって欲しいんですが、なんか先行き不安だなー。
辻占売/池田さとみ
 どこまでも追いかける幻影……手塚治虫の短編でこんなのあったな。船が難破して、溺れる恋人の最後の姿が、稲光によってずーっと網膜に焼き付けられちゃった女の人の話。まあこっちは幽霊なんですけれど。
衰族館/大橋薫
 普通に悪い奴が成敗される話か。リンちゃん可愛い。
 大げさに病気を騙る君みたいな人がいるから 本当に弱っている人間が苦労する
 個人的にとてもタイムリーな話題。脱稿した小説でそのへん言及してたからなあ。「そういえば人間には病気のふりをする病気というのもあるんだっけ」とか。うんうん。
ミツバチの遺言/関よしみ
 うーん絵が古い感じですが、これは再録っぽい?
 たった十六ページなのに、全体的に不安感がただよっていて、ひりつくような乾きと寒々しい恐怖を覚えます。基本的にいい子の主人公と、視野の狭い姉と母親。疲れた父親とじいちゃん。このキャラ構成の時点でもうね。
 この人の作品を読むと、全盛期のホM思い出します。
遊霊少女凜/元町夏央
 うーんこれは……。少女漫画としてはアリだけれど、幽霊が絡んだただのラブコメって感じで怖さがないなー。なんか主人公が倒れている時の顔、鼻の下になにかあるように見えてすごい間抜けなんですが。
 しかしいきなり憑依されて別人として振る舞ってしまった主人公がイタイ。これ友情の危機ですよね。「今日一緒に帰んない?」って時の顔とかが変な少年との恋模様より、友人関係のが気になる……。
猫化け/忌木一郎
 新人デビュー作。短いけれど中々オチが良かった。人によってはすぐ見抜けてしまいそうですが、途中までエロにごまかされていたのでw 次回にも期待がもてますね。時田も新人でしたが、あっちの倍絵もうまいし。
新呪いの招待状/曽祢まさこ
 なぜ男教師だけ、Kってアルファベットで呼ばれてんでしょうか。名付けの由来も特にないし。
 最初の想像から結構予想を裏切られる展開になっていきましたが、なんか心の動きが生々しい感じ。あと、「六十年も生きてきた女があんな小娘の演技にひっかかるものか!」かっこよかったw
彼氏はケダモノ/三条友美
 久しぶりの三条さん。「病んでる絵」の犬と猫が可愛い。
 怪物の正体が何とか、なんで怪我してんのとか突っ込み所はあるが、それがどうでもいいのがいつものこと。「トクントクン」のポエム笑った。一ノ瀬も笑えましたけれど。つーか普通にしゃべれるんだな、こいつ。
ゾルベラ/時田ゆきを
 いつも思うが、この人の作品を読んだ自分をほめてやりたくなってくる。
 じゃあ何で読むのかっつーたら、カネ払っちゃったからなんだが。はぁ。
 相変わらず絵は進歩していないし、話はなんつうか少年漫画っぽくて。カニバリもお約束でひねりがないし。だいたい開始1p目から「はははは泣け! 叫べ! 愚民共が──ッ」なんて台詞がギャグ抜きで出てくる時点でもうどうしたものか。
 いばら海老ってものが存在することを知ったのが、読んで得したと思う所かな……。
神の子供/西岡兄妹
 次々と独創的に殺されていくいじめっ子たち。うーん、これはぜひとも主人公が直接ヤッてるシーンが欲しかったですなあ。ただキャラの区別がつけづらいので、冒頭で死んでいるのがいじめられっ子かと勘違いしてしまいました。顔の中身みんな同じだし。
 そしてオチが、こうくるのか……。これで小学生編は終了の予感。


 トカゲ刊行に続き、やはりホラー度は増したかな?
 しかしミスミソウ終了は大変なショックです。ただ、凜みたいにホラー度が低い連載がまた始まったことには危機を感じますね。あ、でも次回は押切蓮介読み切りがあるからいいか! 渡千枝さんも登場しますし。