ホラーM四月号

 定期購読始めますた。表紙がミカモン〜。
 アンソロジー『トカゲ』創刊に伴い、色んな作品が移動したことで、今月はホラー度アップ! いいね。
 そしてそんな中でも、ミスミソウは頭一つ抜けています。ああ、でも嘆きの天使が見れないのは辛い。

辻占売 守るべきもの/池田さとみ
 普通にいい話……なんだけれど、巻頭でやるのは違うと思う。
 ヒーリングホラーと銘打っていますが、内容は「人とは違う動物のルールは守りましょうね」という教育的なもの。悪くないんだけれど、こういう説教臭さが気になる人もいるわけでー。
地獄のてるてる坊主/三家本礼
 最近のホMはミカモンが読み切り載せてくれるので、ありがたい限りです。サタニスターは終わっちゃったけれど、また連載しないかな。……ゾンビ屋といい終盤のぐだり方からすると、こっちのほうがいいんだろうか。やっぱり短期集中連載が一番かね。
「晴れ、ときどき血の雨」って言い回しはよく聞くけれど、間に肉片を挟むセンスがいい。これは編集の仕事?
 それぞれの理由で運動会が中止になってほしい小学生が、都市伝説「アメミヤさん」と友達になり、魔法のてるてる坊主をゲット。しかしそれには恐ろしい代償が……とまあ、話はよくある筋立て。まあいつものことか。
 アメミヤさんの恐ろしさ、殺害シーンのダイナミックなスプラッターこそ、やはり作品の読みどころ。大股開きで失禁とかね……ノコギリ怖いよノコギリ。あと、29歳ののりこがちょっとヒムラーに似てるw
ミスミソウ/押切連介
 今月は、南先生決着の巻。
 卒業したかった。
 ああ、もー……救いでも何でもないけれど、この人に相応しい結末だったなあ。いじめられていた中学時代、悪意を察すると吐く癖、今まで無視し続けていた、子供が帰ってこないと訴える保護者たち。
 これまで撒いてきた布石が一挙に爆発して。
 安心できるんだ 自分の子供がイジメられるより イジメる側ならそこまで心配しなくていいってな……
 読者の倫理観から見ても確かにおかしくて、作中でも保護者たちから異常者と罵倒される南先生。けれど、彼女を責める側もまともに見えません。悪人同士がいがみあっているとかじゃなくて、これはどちらも普通の人たちにすぎない。サイコパスとかキチガイじゃなくて、ただ普通の悪意と狂気。呑まれるとこっちまでうっと来る。
 そんな中で差し挟まれる春花のターンは、切なさと美しさがあって、何だよもうこの狙い澄ましっぷりは。
 このタイミングでしょーちゃんが! とか。
 おじーちゃん逃げてー! とか、もうヒキもまた抜群。次号最終決着ってことは、いよいよクライマックスに向かっているんですね。三巻ぐらいで終わっちゃうのかしら。まあ長々と続けられる話ではありませんしね。
 てなわけで、春花vs流美は次回持ち越し。小黒さんがやっと見つかったけれど、他の人たちはまだ……。
 ……。
 ……って、次号最終回ってそんなあ! 巻頭カラー71p……果たして誰が生き残るのでしょう。ああああ。
衰族館 永遠の恋人たち/大橋薫
 珍しく男が主人公だと思ったら、やっぱそーゆーオチか……。
コールドアパートメント/財賀アカネ
 シリーズものなのか、これ……普通に読みきりでいいと思うけれど、うーん?
 表紙とアオリが微妙に詐欺な気が。期待していたのと違うというか、ちょっと肩透かし。
 絵柄が好きです、何だか登場人物たちがぬいぐるみのような、布の人形みたいなポップさがあって可愛い。でっかい猫も、どう考えても危険だし猛獣そのものなんですが、ごっつラブリー。
 で、そういう人形めいた絵ゆえの怖さといいますか。スプラッターシーンとか、何かあちこち迫力のある構図が見れる。二人の恋人が哀しく、管理人さんがまたおぞましく……正統派ですね。あとは連載でマンネリ化しないことを祈るばかり。
哀しい花嫁/平田京子
 わりとありがちな話を、ナチュラルにぶりっこした感じの主人公でやった……と思ったのですが、オチでぞっとした。凄くベタベタなんだけれど、絶妙のタイミングで王道の旨みを弾き出した感じ。えがったー。
もののけ草紙 きるじゃぷ様/高橋葉介
 あんまりにもストレートな「きるじゃぷ様」の正体に笑った。
 幽霊が語る立て板に水、な身の上話。こうした語り口のうまさは相変わらずでいいっす。
新呪いの招待状 堕ちた女神/曽祢まさこ
 うーん、手堅い。「このわたしにプロポーズするなんて!」と、えっと思わせる冒頭から、ある女性の憎悪が生まれたその理由について。オチはかなりあっさりしていたから、経緯のほうがとことんメインなんですな。もうひと味欲しかったかも。
絵画修復家キアラ 堕天使の窟/たまいまきこ
 なんでこれトカゲ行きにならなかったんだろう……。絵も綺麗で、話も毎回サスペンスにまとまっていて、面白いけれど雑誌間違えているよねーって漫画の一つだったのに(ミステリーボニータとかネムキって感じか。KATANAといい賢者の石といい)。
 あらゆる道具を奪われながら、自分の血液や大便を使ってまで絵を描いた、口のきけない囚人が死んだ。今回は、その囚人が描いた絵を修復するのですが……囚人の存在自体が結構ロマンチックだったので満足。
X-チェンジ/渡千枝
 オカマキャラ大活躍で、ぬえや的にオイシイ一本。あまりホラーっぽくないですけどね。むしろサスペンスというか、ジュブナイルっぽさがある。
 通りすぎのオカマと幼馴染みが事故。そのショックで二人の魂が入れ替わってしまい、眼を覚まさない幼馴染みには殺人の容疑がかかっていた。主人公は幼馴染みの体に入ったオカマさんと真犯人捜しに奔走する……。
 うーん、ぼくらの七日間戦争全盛のころっつうか、ラノベというジャンルが確立する前のジュブナイル期というか……。昔懐かしの少年少女物語とか、冒険小説とか、あのへんのものに近い感じがするなあ。いや、そこまでノスタルジーでもないかもしれませんが。印象として。
飼育ママ/真山創宇
 今回は少し、絵柄が耽美方面へシフトしたかな?
 いつぞやの、「自殺したいじめられっこの霊が復讐する話」よりはマシになったかなーとは思うが、なーんか物足りないんだなあ。タイトルが「飼育されるママ」「飼育するママ」って二重の意味を持たせてあったり、被害者と加害者の対象が逆転するオチといい、いいなって所はあるんですが。ロリコンでマザコン(誘拐した幼女をママにして自分の世話をさせる)ミキオの気持ち悪さとか。
 ただ、閉鎖空間で君臨する絶対の支配者のもと、じわじわ洗脳されていくものの恐怖とか苦悩とか陰湿さとか……そういうのをもっと感じられるようにしてほしかったなー。主人公の一言でさらっと団結しちゃったし。絶望感とか足りないべ。あとオチの赤ん坊が……。
 で、背景のドス黒さが浅いから、急に動き出す人肌家具がご都合で面白くない(つーかエド・ゲインかよ)。でも次回に期待だぜ。
ハイエナ少女の血とガッツ/灰野りつ子
 前回がもの凄い中途半端な所で終わっていて、面白いのか面白くないのか微妙だったんですが、今回は良かったです。
 あの料理人が何者だったのか(死神?)、なんでいまごろ夫の子供が生まれるくるのかとか、よく分からん箇所もありましたけれど。なんか、絵に力がこもっている。「まだテンドーは生きてるよ!!」って言った時の、七子の必死な顔とか。
 確か昔、霧町こひよって人が地獄ネタの漫画を描いていたけれど、すごく地獄の描写が物足りなかった。でも、テンドーがいた蔵の地獄絵図は凄惨さ・悲惨さ・残酷さ、心底「こんな世界に堕ちたくね〜」って思えるような迫力に満ちていてイイ!
「だってこの子生きてるよ」の後の絶望感とグロさ、テンドーの力を借りないと決め、追い詰められていく七子。どんどんおかしくなっていくお母さん。う〜ん、このゾクゾクする感じがまた。
 しかしイタコというよく分からない新キャラが出たり、どうも読者の知らない背景がいっぱいあるようでちょっと困る。続きはトカゲっすか……。
神の子供/西岡兄妹
 主人公も小学校高学年。うまいこと世渡りしていきますが、教室には適応できないがゆえに目を付けられたいじめられっ子もいたのです。で、このイジメの描写が恐ろしい。
 爪の間に針とか小学生のやることかよ、と。で、それを戯画化された人物が淡々とやっていくから、余計にどす黒い。何だろうね、内容の過激さに反して作品中のテンションは平坦なままで、それが凄く拗くれたものを感じさせます。
 なんでしょうね、他作品の怖さが有機物なら、この作品は無機物といいましょうか。どこか異質な怖さがある。絵全体から異世界な空気が漂います。でも、それはファンタジーな別世界じゃなくて、私たちが生きる現実の空気でもある。
 回を追うごとに面白くなってきて、徐々に引き込まれてきました。最初、西岡兄妹の面白さや良さってよく分からなかったんですが、今は気になる漫画の一つですね。