SF考察・脳量子波の謎

 絶望した! ガンダム00の二期に絶望した! けれど世界観と設定は好き、愛しちゃう。そんな自分を慰めるため、くじけそうな心をGN妄想力で破壊する、あることないことSF考察の巻である!
 と言うわけで第一回(第二回もやる気満々)はガンダム00三種の神器が一・脳量子波(あとの二つは言わずもがなのダブルオーライザー様とGN粒子である)についてだ。作中での印象は不思議電波という感じだが、まずは字面を見てみよう。「脳」「量子」「波」……「脳が発する量子の波」、うーんこれだけだと訳ワカメなのは変わらない。
 が、それで終わっちゃ考察講座の名折れ。「脳」「量子」とくればロジャー・ペンローズだ!
 このオックスフォード大学教授は脳を量子コンピューターと仮定することで、「意識」の発生を説明している。脳=量子コンピューターはトンデモ科学の分野っぽいが、わりと真面目に考察されているのだ。
 ぬえやは未読だが、興味のある方は著書『皇帝の新しい心』『心の影』などを参照されたい。
 Wikipediaからちゃっと抜粋すると、『脳内の神経細胞にある微小管で、波動関数が収縮すると、意識が生起する』んだそうな。このペンローズの量子脳仮説は懐疑の目で見られているが、さもありなん。
 量子コンピューターに頼らんでも、生物の細胞にゃ量子コン以上の計算能力が備わっているようだし(塩基計算機。AGTCの塩基の結合と酵素の働きで計算を行う、別名分子コンピューター。同時に複数の解が生成されるので、超並列処理が可能とされる。ただし解の取り出しが無茶苦茶遅いため無意味。実現は遠い)。


 さて、ともかく00世界では脳が量子コンピューターであるという前提があるものとして話を進めよう(でなきゃ脳量子波というネーミングが通らない)。つまり脳量子波は、脳みそ版無線LANということなのだろうか。劇中で脳量子波同士で言葉をかわしたり、心を読んだりしている描写から、その波長は脳波とほぼ同一だと推測される。
 ソーマとアレルヤ、リヴァイブと刹那のやり取りからすると、表面的な思考しか読めない場面が多いが、ソーマはルイスとの初対面でかなり内面に踏み込んでいた。このへんは使い手の力量なのだろうか。優れた脳量子波使いならば、海馬を探って当人も忘れている記憶を読んじゃったり出来るのかもしれない(やられたら凄い嫌だね)。
 いわゆるテレパシーの原理説明に「自分の脳波を他人と同期させるから、他人の思考が分かる」というものがある。
 脳波を測定すると、確かに対象の心理状態を推し量ることは出来る。例えば心の状態を客観的に計測する手段として開発された『感性スペクトル解析』では、脳波にN1(ストレス)、N2(悲しみ・落ち込み)、P(喜び)およびR(リラックス)に評点をつけて、統合的に心理状態を観測するのだ。デヴァインが口ではブリングの死を「不甲斐ない」と罵りながら、ヒリングに悲しみを看破されたのは、N2の脳波を観測されてしまったのだろう。


 ただ、脳波は万能ではない。現在の技術では、脳波の測定で対象がどんな言語を思い浮かべているかなど分からない。また、前述のテレパシーと同じ原理で脳量子読心が行われているとすれば、その場合、客観と主観はどうやって区別されるのだろう? 脳波が同期して同じ波形を描くということは、自身にもその波形(例えばN2の脳波)が現われることとなり、読心対象と同じ気持ちを味わうことになる。
 脳量子波にはまだそういう効能があるのかもしれないが、ヒリングの例ではデヴァインの悲しみは知ることは出来ても、一緒に悲しくなってまでいるわけではない、と判断する(該当の場面ではにこやかに笑っていた。ヒリングは感情豊かなタイプなので、顔で笑って心で泣いて、ということもないだろう)。
 ここで浮上するのが、超人機関でソーマに施された「人格上書き」処置である。これは完全に妄想と憶測の域なのだが、機関は下位人格のようなものを植え付けて(主観の分割とも言う)、下位の人格が他者の脳波と同調した時、上位人格は同調することなくそれを客観視出来るようにしたのかもしれない(このへん、「脳波の同期で主観と客観の区別」に何か良い情報があればぬえやにご教授いただきたい)。


 さて、脳量子波の考察において欠かすことが出来ないのが、GN粒子の存在だ。
 第一期ではまるで関係のない物のように思えたが、二期に入ってからリジェネの発言で、ティエリアらが「GN粒子を媒介にしてヴェーダとリンクする」ことが判明した。また、(細胞障害を起こしている人々は除いて)作中トップクラスでGN粒子を浴びている刹那が、最近新たに脳量子波に目覚めつつあるようだ。
 とりあえず「脳手術する(何らかの外科的処置が必要っぽい)」ということ以外、脳が量子波を出せるようになるかは作中にさっぱり手がかりがないのだが、唯一、GN粒子は脳量子波発生と密接な関係がある物質らしい。……しかもGN直結なら手術不要っぽいのは、何というか、超人機関の子供たちが哀れである。
 脳量子波装備がデフォルトのイノベイターたちは、体内に大量のナノマシンを持っているので、これがまた関係あるのかもしれない。ナノマシンによるブレイン・マシン・インターフェースである。超兵版のような危険もなく簡単に付与できるなら、これはユビキタスコンピューティング(高度情報化。要するに『電脳コイル』や『エア』や『アクセル・ワールド』? といった、サイバーなあれである)の実現ではないか。実際に、ティエリアヴェーダリンクの他にもガンダムナドレを「思考のみ」で操縦してみせた(小説版三巻)。これであの不思議裸空間も説明がつく(つまりヴァーチャルリアリティってこと)。
 イオリアの目的に対する仮説の一つに、「GN粒子をばらまいて人類総イノベ化(脳量子波使い化)」説がある。人と人が以前より遥かにわかり合うことで紛争を無くした世界というところだろうか。だが、ぬえやには脳量子波は、ただ通信手段が前進しただけのようにしか思えない。例え話し合えたところで、人は人だ。人は嘘をつかずに生きていけない。第一イノベイターはおおむね仲良しそうではあるが、中にはうまくいっていないのも居るわけだし。


 ともかく、GN粒子は何らかの作用でもって人間の脳に量子波を発生させる効能がある。その正体が多様性変異フォトンだか磁気単子モノポールだかもう訳ワカメなのだが、あれって実は「GN量子」の間違いだったりしませんかねどうですかね。脳量子なだけに。イオリア死後のCBで名称を間違えて伝わってしまったとかさ。
 GN粒子は万能すぎて、「実は物理法則を書き換える能力がある」と言われても驚かない自信があります。
 ただ、脳量子波使用時に「目が光る・光らない」という特徴があるが、前者はGN粒子式(イノベイター、刹那)・後者は超兵式(外科方式)ではないかと推測する。光るのはGN粒子が光っているからなんですよ(色が違うが、GNドライブの粒子は疑似と純正では赤と緑という色の違いがある。発光の原因がGN粒子のためなら、そのくらいの違いはおかしくはないだろう)。しかし目が光っている時の視界はどうなっているのだろう?


 疑問はつきないが、今回はこんな所でオサラバとさせていただく。