嬉野秋彦『彼女は戦争妖精』1
それはいわば、“ガキ”という名の傍若無人な怪物なのであった。
- 作者: 嬉野秋彦,フルーツパンチ
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2008/08/30
- メディア: 文庫
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あえて粗を探すなら、牧島姉妹の描写がもう少し欲しかったなというところですが、最後のほうの展開が分からなくはならない程度に布石もあったのでやはりそう問題でもなくまさに贅沢。
読んでいて思ったのが、ロリヒロイン・クリスタベル(外見10歳精神5歳と推定)の「こども」っぷり。
昨今のロリコン狙い撃ちなキャラとはひと味違った、なんか現実の小学一年生のよーな手の掛かりっぷりです。見方によっちゃ、大人が夢想する純真無垢を体現してるっちゃそうですが(見た目は十歳児ですし)、「あー実際小ちゃい子ってこうだよね」と思わせられる部分が多々ある。変に人外している部分もそんな多くありませんし(除く食欲)。
主人公が一人暮らしゆえ料理が得意で、何かとおさんどんしているシーンが多いのも好感。フィクションで食事や料理のシーンあるの好きなんです。中でも美味しそうなのが、伊織流ハーゲンダッツの食べ方。刻んだ苺に砂糖をふってレンジでチン、熱々の即席ジャムをバニラ味のダッツにかけていただく……これは苺が手には入ったら是非やらねば!
でもフレンチトーストにバニラはダメです。俺はシナモンがないと物足りません! レモンやメープルも欲しいな。
物語は、ウォーライク(戦争妖精)・クリスタベルにロード(鞘の主)と見込まれたおさんどん少年・宮本伊織が子供の世話にてんやわんな顛末を描いたもの。ウォーライクとは「好戦的な妖精」であり、その加護を受けた戦士や騎士のことを指すそうですが、本作の妖精さんは武器に変身します。剣に槍にハルバード。そのうちモーニングスターとかランスとかチャクラムはでないかしら。
そんな彼らは妖精の故郷・楽園(エリジウム)に帰るため、自らの記憶と力を取り戻すため、ウォーライク同士戦う運命にあったのでした……と。このように、「人外と人間がタッグを組んでバトロワ」方式は既視感を通り越して一つにジャンルとなりつつありますね。Fate. しかり、龍騎しかり。妖精と魔物の子という類似点から、当方は真っ先に金色のガッシュ! を思い出しましたが。ただ、バトルの理由がおもに「故郷に帰るため」「自分が何者なのか思い出すため」というのは珍しいかも。詳しい事情すら、とりあえず勝って生き残らないと分からない。伊織には、周囲に早瀬先生という先人がいたからその点は他よりお得っぽかったですが。
……早瀬先生はそうとう経験積んでいるようだけれど、狭い地域に集中的に出るものなんですかね、ウォーライクって。
さて、完成度の高いこの作品。わりとラノベ書く人のお手本にもいいんじゃないですかね。まずクリスが宮本家に届く所から始めずに、順序を入れ替えて序章を始め、最初の80pそこそこで主要人物は全員登場。細かいところは分からんが謎のヒロインが変身したり最初のバトルを終えたりしてて、100pも読めばもう最後まで読むしかないじゃんアナタってな手慣れた牽引力!
謎の老紳士とかヒキもついて、お美事、お美事にござる。
ちゅーわけで、早く二巻でないかなー。クリスかわえー。
つか、クリスタベルの名前って、大食らいだからタベル、なのではないかと思いました。