神野オキナ『疾走れ、撃て!』

疾走(はし)れ、撃て! (MF文庫J)

疾走(はし)れ、撃て! (MF文庫J)

 遊びに行くヨ! などシリーズ多数の著者による新シリーズ。って、二巻いつ出るんだっけ?
 異世界からやって来る謎の敵・ダイダラに侵攻される近未来の日本。日本人は16歳になると、国民皆兵の精神に従い、三ヶ月の訓練を受け、学生兵士略して学生となるのだった。とゆー、「それなんてガンパレード・マーチ?」(学兵って語も同じだし)な印象だったのですが、実際の読んで見ると、超人と超常現象(神々とか精霊手とか)てんこもりだったマーチよりも、むしろオーケストラ(白)といったほうが近いか。いや、でも次巻以降はやっぱりマーチっぽくなりそうですが。
 後書きいわく「軍隊コメディ」とのことで、軍事方面にはあまり期待しないでね、とありますが、実に謙遜なおっしゃりよう。ラブコメ部分にはわりと辟易するものがあるのですが、終盤で主人公たちが放り込まれた初陣は中々。新兵ばかりなのに殿とかヒデェぜっ。SFたメカ設定回りも結構丁寧で、現実には存在しない装甲服や数式戦車(魔法使いを乗せて魔法をぶっぱなすオミコシ)、モノライドなどの描写が細かくてワクワクさせてくれる。この辺、あまりくどくなくさらっと読ませてくれるのはさすがですね。
 文章にはちょっと「んー」な感を受ける(正直、こないだ読んだ新人さんの「この広い世界にふたりぼっち」のが巧いとさえ思う)のですが、読み終わると中々大満足。
 何の特徴もない、平凡さが売りの主人公・理宇は訓練が終わるなり七階級特進という破格の待遇でいきなり少尉になるのですが、物語がそこから始まらず、軍隊生活への初々しい不安、厳しい訓練期間などの描写が前半を占めているところがいい。訓練が始まると携帯電話も取り上げられるので、移動時間を使ってできるだけメールに返事したり。
 初陣の際の皆の不安と緊張もそうですが、現代日本の十代の少年少女が実際にこういう経験を積んで、こういう現場に放り込まれたら、という描写に現実味があります。訓練の課程はややフルメタル・ジャケットな感じで、どこまでネタなのかマジなのか判断つけづらかったですけど。
 魔導兵(および魔導士官)という魔法使いがどうやって登場したのか、敵の正体と目的は。理宇は果たして英雄となれるのか!? などなど先の展開も楽しみ。ラブコメは……巨乳眼鏡俺女系幼馴染みvs無口無表情不器用つるぺたロリなのですが、そちらにはあまり興味がなく。つーかヒロインたち、悪い子じゃないんですけれど、片方はヘッドアップディスプレイの眼鏡型端末でこっそり主人公を観察したり(前を向いたまま背後をチェック)、もう片方は主人公に売られた喧嘩を代わりに買って人を殺せるレベルの攻撃魔法を突き付けたり、どーにももにょる。
 正直ラブコメパートやキャラがもうちょっと……と思わないでもない。戦争は面白かったです、はい。