入間人間『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』1〜6巻(完結)
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん―幸せの背景は不幸 (電撃文庫)
- 作者: 入間人間,左
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2007/06/01
- メディア: 文庫
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嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん〈6〉嘘の価値は真実 (電撃文庫)
- 作者: 入間人間,左
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2008/09/10
- メディア: 文庫
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受賞時は主人公の性別が逆だったそうで、そっちバージョンが非常に興味深いところですな。
粗筋。かつて誘拐事件に巻き込まれ、激しい虐待を受けながら一年の監禁生活を体験した「ぼく(主人公)」と「まーちゃん」こと、御園マユ。他人を寄せ付けないマユは、しかし同じ過去を共有する「みーくん(ぼく)」に対してだけは無邪気に好き好きと振る舞うのだった。人として壊れている二人の、ヤンデレな日常と猟奇の物語。
そんなわけで、主人公はまーちゃんと甘々でらぶらぶな生活を平穏無事に過ごすべく、まーちゃんが起こしたり、周囲で起きたりするはた迷惑な事件の数々を解決すべく奔走というか翻弄されます。悪意に魅入られたがごとき巻き込まれ型主人公。一見するとまーちゃんがコテコテにヤンデレというか精神病みにしか見えないわけですが、いっそ突き抜けているだけにすがすがしさがある彼女と異なり、主人公のほうがよっぽどヤバイ感じ。
そうなった原因は、過去の事件に起因するわけですが、時折独白されるその仕打ちを並べていくと、なんともまあ。満足に食事を与えられなかった、与えられても毒が入っていたけど食べる物も他になかった、骨を折られた(折らされた)、立てたナイフを踏まされた、爪を剥がされた、などなどなど。なんか性的暴行を匂わせる箇所もあったような……。
で、中にはそうした過去を「特別なことでとても羨ましい」なんて考える罵迦もいます。でも実際にいるんだよね、こういう人。虐待の過去や事実を無視して、多重人格や鬱をカッコイー、便利そー、ステキーって憧れたり真似したりするようなの。あれと同じ、生ゴミのように腐った思考、ひどい臭いがする。
さて、そんなわけで、毎回ミステリやサスペンス仕立てに謎解きっぽいものがあるシリーズです。町に殺人事件が起こったり体育館立てこもりがあったり館を訪ねたら閉じ込められたりそんな感じ。探偵役はもちろん、我らがみーくん。
このみーくん/ぼくの一人称で物語は進むのですが(たまに視点が変わるが)、これが中々くせ者です。全体的に妙なキャラが多いのですが、軽妙というか人を喰ったようなというか、パロディを交えつつ、捻りのきいた形容詞をぶつけてくる。
影響としては西尾維新などのそれが伺えるのですが、先達の模倣やエピゴーネンを自覚しながら、自分らしさもまた出そうとしている。そんな文体です。ただの真似で終わらない、新しい物を作っているんですね。まあ良くも悪くも、新しいラノベらしさをふんだんに持っているので、普段ラノベを読まない層には受け付けないかもしれませんが。地の文も会話文もすべからく漫談のようで、けれどコメディになれない黒い病みがあります。
ただ、一巻で充分終わっている話を、無理やりシリーズにした印象が強いのもまた事実。
表紙は常にまーちゃんで、タイトルでもその存在感を誇示しているのですが、後へいくほど存在感が……。特に四巻五巻の前後編。あのあたりは伏見さんが完全にヒロインっつーか、もうゆずゆずが下克上ヒロインでいいよってなくらいです(まあそうなると、彼女の死亡率が跳ね上がること確実ですが。もちろんみーくんも)。
で、最終巻。
たぶん、最後のあれは「二択」じゃなくて「三択」問題じゃないかなー。でないと唐突に始まって唐突に退場した新キャラの意味が分からん。不運な流れ弾というか。あれだね、三巻のにもうとに関する処遇と似たような感じじゃないかと。
落ちがまさかそう来るとは思いませんでしたが、やっぱこれからもああいう感じの日常を続けざるをえないのが、みーまーなんでしょうなあと。就職とかどうなるか興味はありますが。
最後ということで、これまで登場したキャラのその後も綴っていましたが、中途半端な印象がぬぐえず。池田兄妹と一樹がテレビ見てたから、この調子でこれまでの登場人物が、外から立てこもり事件を見守ったり解決に奔走したりする方向になるかと思ったら全然そんなことはなく。大慌てでシリーズを畳みました、という印象。
ただ、落ち自体は人を喰っていて、やはり「らしい」ものでしたが。うん。
入間人間先生の次回作にご期待ください! というテロップが似合いそうなあんばいでしたが、俺はとっても期待しちょります。