銀の弾丸などありえない

 とりとめのない話。
 改めて、難しいよなあと。歴史の傷口を治す薬なんて無いんだよ、みたいな。
 スペイン料理から興味を持って、スペインの歴史を調べると、スペイン内戦にゃゲルニカ空爆(そしてガン無視されているドゥランゴ空爆)・世界各地から人員を集めた国際旅団などなど、面白そうな話が出てくる。空爆に関してはちょいと不謹慎かもだが。ちなみに『ロシアの子供たち』って映画では、この時の内戦で疎開した子供たち(が成長したおじいちゃんおばあちゃんたち)が出てくるドキュメンタリー映画があるそうな。観たい。スペイン内戦は第二次世界大戦の前哨戦みたいなもんで、終戦からすぐにWW2なもんだから、疎開に次ぐ疎開でもう大変。
 で、国際旅団。ヘミングウェイが参加したことで有名だそうですが、スイスじゃ、これに参加したスイス人を罰したとか。これの出典は『黒いスイス』という本で、他にもナチスにかぶれた優生学見地その他の理由から、ロマ族根絶のため児童誘拐・虐待を行ったり、徹底したユダヤ人差別をしたりというスイスの暗黒面を紹介している。でもなー、ユダヤ人差別自体は欧州に古くからあったし、迫害を逃れてきたユダヤ人を見殺しにしたり積極的にブチ殺したのは、なにもスイスだけじゃねえし、「あっち」も「こっち」も同罪じゃー。当たり前だけど、真っ白な国なんてないんだよな。けれど普段はそんなことも忘れて、ぱっと小奇麗なイメージだけを多くの国名に抱いている。
 歴史って一度調べると、止めどなく面白くて困ります。『世界ファシスト列伝』を読むと、あの時代の独逸や伊太利亜がどんだけでかい影響力を持っていたかよく分かったんだけど、そこから興味を持ってどれかの国を調べようとすると、いくら時間があっても足りない。仲の悪いクロアチアセルビアポーランドルーマニアハンガリーチェコといった東欧諸国、そして前述のスペイン。第一・第二と中立だから、軍事関連で調べてもあまりヒットなくて寂しいなあ、スペイン。
 さて、スプライトシュピーゲル4を読んでいるわけだが(北京オリンピック関連の小ネタ>御影の台詞に笑った)。それに出てくる世界統一ゲームにて、複雑怪奇の怪物『リヴァイアサン』の恐ろしさを見ました。いいことのハズが悪いことになってしまう。富める者が貧しい者を救おうとすると、かえって殺してしまうというその矛盾。あたかも、弱者を保護しようとして逆差別が起こるように*1。最も国を富ませる選択肢が、その国を地獄に突き落とすきっかけになり、世界は地獄のような有様なのに、まぎれもない「平和」そのもの。しかもそれは私たちの現実に等しく、もしかしたらありえるかもしれないのだから、たちが悪い。
 怪物を殺す銀の弾丸なんてないのだ。
 一見美しいダイヤは血にまみれ*2、某法国はアフリカを食い物にし、三国は半世紀以上経ってなおタカリを続け……それら愚行は個人から世界まで様々な枠組みの中で起こり続けている。
 ちょっと考えれば当たり前のことである、世界がどうしようもないのは。ただ、知れば知るほど実感として、具体性を伴って、それが突きつけられてくる。胸を突かれる。突き刺さってくる。そのことが哀しくてやるせなくて、負の感情を呼び起こされるのだけれど、それがまた「楽しい」。
 誰かはこの世を「苦痛多き世界」と称した。誰かは「地獄」と呼んだ。またある人は「荒野」と。ならばこの世は、怪物闊歩する魔界だ。万能で有効な解決策など、分かりやすい弱点など存在しない、不死の怪物が跳梁跋扈する荒野で地獄で化け物だらけの。ただ地道にやるしかない、それが一番難しい、そしてたぶん、それが人の道というもので、踏み外せば世界はない。そう信じる。

*1:

*2:オイレン4の事前に知ってて、作中にこのネタが出たのがちょい嬉しかったり