ホラーM8月号

 いつもホラーMを買っていた本屋がなくなって、入手に手間取りました。
 今月からホラーMは隔月刊だそうですね。ミスミソウは面白いけれど、あの展開の遅さは隔月では致命的だなあ。一方、以前から連載やっている賢者の石とKATANAが思いっきり続き物の話で終わったんですが、強烈に次回が気になるってでもないのがなー。
 ただ、隔月ということで力の入った作品が多くて嬉しい限りです。
賢者の石 デス・ストーカー/秋乃茉莉
 今回は表紙……なんだが微妙に表情がやだな〜。
 冒頭、いつものように『賢者の石』の偽物をつかまされるんですが、その赤い石がタコチューなのがくだらなすぎだ……。
 とりあえず偽物の代わりに、老人から賢者の石についての情報をもらい、砂漠へ繰り出すことへ。スリ少年との縁から、怪しげな殺人集団と一緒にアララト山へのふもとを目指すのですが、サソリの毒にやられて大ピンチ→次回へ。まあ特に心配はしていない。
もののけ草紙/高橋葉介
 今回は押しかけ弟子小兎とともにお座敷へ(洋館ですが)。
 話はどうということもないんですが、絵と雰囲気だけで充分読み応えある作品ですね。
刀 オロチ/かまたきみこ
 デス・ストーカーよりは続きが気になるかな……。 しかし三輪さん思い込み激しいっつーか迷惑っつーか自分らの都合しか考えてなくてうざいタイプですね。まあ漫画にゃよくいる非常識な人種だ、うん。あとは京崎が何かに操られているかのごとく気を利かせすぎなのがなんとも。
デビュー/有田景
「生魚ケーキv わさびじょう油でガッツリいって♪」
 今回はよかった!
 有田景は毎回手抜きでひでーなーとか思っていたんですが、いやーびっくり。根暗な本性を隠して、精一杯明るく振る舞おうとする主人公がイジメに遭うわけですが、イジメの主犯と思っていた子(親友)が実は……と。「これ以上何して欲しいっていうの?」のあたりで、もしかして本格的におかしいアレなのかと思ったらまた違くて、あの落ち。うむ、毎回こんな感じならいいんだけどな。しかし酷いクラスだ。
相羽奈美の犬/松田洋子
 ニートからストーカーに転身した主人公が、車にはねられたのをきっかけに願いを叶えてもらい、犬に変身してストーカー対象の少女の飼い犬になる話。あっさり願いがかなっている主人公が何か好きになれない。え? なんでこいつにこんな都合良く話が進むの? と。雰囲気はいいんだけど……。
願い事携帯/三条友美
 いい話っぽく終わったが、あの現場他人に見られたらアウトだよね、舞子……。
 願い事を叶えてくれる携帯電話の話──お約束としては、うまい話には穴が〜みたいになるんですが、叶えられた結果がちょいとホロリというか。しかし最近の三条さん、普通に話作りするようになったなあ。お父さんがいきなり再婚相手殺したところだけよく分からんけど。
新呪いの招待状 黒い翼の天使達/曽祢まさこ
 51p……たっぷりあるなあ。ミスミソウもこのぐらいあると嬉しいんですが、他にも連載あるから駄目なんだろうか、押切さん。
 今回は人形少女マリーと、鴉のカンナちゃんが主役。カンナちゃんは最初から最後まで天然で可愛いですねー。あと、マリーは人形だから表情が変わらないんですが、そのまま感情表現したりしているのが何かうまい。マリーのお部屋とかちょっとメルヘンな気分だ。……百年に一度の呪術師の会合を「前回」パスしたって、カイはいくつなんでしょうか。つかこの世界じゃ呪術師はみんな人外なのか?
 綺麗なビーズの指輪から始まった、女同士の友情とその決壊。「どうなるか楽しみ」の時のユリカの悪い顔がいい感じ。
ムカサリ絵馬/鉄輪ほろね
 新人さんの受賞作だそうな。
 ムカサリ絵馬とは、方言で「迎え」「去る」のムカサリ(婚礼)から来た供養のための絵馬。結婚せずしてこの世を去ったもののため、絵馬に婚礼の姿を描く。たーしか靖国神社遊就館)にも、同じような理由で花嫁人形とかありましたね。
 で、まあ。いい話。ただホラーMには合わない。毒がさっぱりないし。一般紙でもやれそうな気はするんですけどね。悪くないけど、載る雑誌間違えている感じ。 
饒舌な視線/真山創宇
 前より絵がよくなったかな? でも、自殺したいじめられっ子が、女子なのにおっさんに見える……前髪のせいかな。
 いじめられっ子がいじめっ子のみならず、いじめを見て見ぬふりしたクラスメートなど周囲まで呪い殺す話。全身押しピンは普通に拷問だなあ。主人公の「人があんなに残酷になれるなんて驚いちゃって」「血がすごいわ。保健室に行ったら?」が凄い偽善っぷりで笑える。
 ただなあ、沼怪もそうだけど、この人はストーリーが中々ありきたりから抜け出せませんね。確か蛇の話でパクリ疑惑もなかったか。物語を作ることが苦手なんだろうか……。
 あと今回の話、最後あちらの世界が出てくるあたりは少々唐突な気が。にしても現世でいじめられ、自殺し、死んでから呪い殺してその罰として地獄行き……と何だか大変だなあ。
ミスミソウ/押切連介
 相場*1、ダークサイド全開。
 これまでちょくちょく示されてきた母親との不仲理由が明かされましたが、中々壮絶。なるほど……。でも小黒さんは、なぜ相場の「歪んだ愛情」を知っているんでしょう。東亰でのこの一件とはまた別に、何かあったのかな? しかしあの親にしてこの子ありっつーか、あの両親と環境と遺伝子の相乗効果ってことですか……。
 今回は火事の一件から初めて、春花が長々と喋りました。おじいちゃんに向かって「これからのこと」を語り、「お姉ちゃんの私がいつまでもうしろ向きじゃ…だめだから…」と。その言葉が出るのも、前回までの相場の行動によるものかと思うともう、ね。
おじいちゃん「東亰(むこう)でがんばろう春花。春花と祥子とおじいちゃんの…3人で…」
       ///
相場「東亰に行ってふたりで暮らしたい人が居る」
 彼女は────俺しかいないから

 いやああああ! おじいちゃん、しょーちゃん、逃げてえええ!
 最後はvs小黒さんかと思っていましたが、小黒さんも流美も相場に比べれば全然でした。つうかもしかしてこいつが一番悪いんじゃね? 「春になったらあの林道へ」の約束をかわした相手であり、その存在が春花の救い、立ち直りフラグだと思っていたら、そいつがまたこんな……うおお。
 でもって、相場の写真好きという設定がこんな形でキいてこようとは思いませんでした。あれか、しょーちゃん助ける前に撮ったのか、火の中で。放火の時はアリバイがあるから、しょーちゃん助けたあの時しかないはず……ううう。
 このままいじめっ子を全員殺しても終わらない。相場とふたりで暮らすとしたら、それはそれで次の絶望と地獄が始まるだけ。春花の周りには、家族以外にまともな人間がどこにもいない! なんてこった。
辻占売/池田さとみ
 まあいつも通りじゃないですかねー。
 今回はページ数が多かったので、未信くんや舞子ちゃんも出演。猫又に進化した山猫親子がよかった。でもサバンナ? の風景見せてよかったのかなあ。後々引きずらなきゃいいけど。
 しかし茅の輪といい、舞子ちゃんはいつもトラブルに巻き込まれるけど、必ず誰かや何かが助けてくれますな。強い星を持っているんだろーね。
ナマズ男/坐磨屋ミロ
 再録作品。筆名は「ザマーミロ」ですかね、やっぱ。うーん、悲しいけど面白かった。
 丸っこくてかわいらしい絵柄。でも何か目つきが鋭い。なんだろうね、子供のころ旅行先で見た、土産物のイラストみたいな……懐かしい感じの絵です。いいなあ。ナマズ男はナイスミドルだと思いました。
 かの子の病気はなんなんだろう……。咳して喀血してますが、あれは殴られて口の中切っただけ? 結核なら隔離されているだろうし。
「かの子、家族仲よくするのが望みだっただろ。それを叶えてやったぜ。家族は仲よく助け合って生きるんだ」
 それで落ちが……ああ、ああ。「おまえのほしかった家族の絆だ」ってそりゃある意味そうかもしらんけどぉ。かの子が可哀想すぎる……。あれか、やっぱりちゃんと隅田川に流してやらなかったからか。「絶景かな」でやっぱナマズは人間じゃないんだなあということがよく分かった。
嘆きの天使/熊谷蘭冶
 表紙がいきなり百合SM。
 金髪のサキュバス(リタ)に陥れられ、何とか学園に帰ってきたジークリンデ。男と密会していたとして冷たい視線が彼女を迎える……が。シュヴェスター・クリストフに「この恥知らず」とか言われたくねえなあ(笑)。ドロテアがああなったそもそもの発端ってこの人ですし。マルタとエーファは凄い久しぶりに出てきたなあ。ヘレーネも久しぶり。例の絵の作者として、伯爵としてさっそく再会。ドロテアが回想で一コマしか出番ないー。
 もはやホラーではない気がするけれど、一般紙で受け付けられなさそうな絵や濃厚な雰囲気がよい。
すっくと狐/吉川うたた
 今回初めて読んでみた。実は文庫が1巻だけあったが、引っ越しの準備で棄てちゃったりして。
 で、話は。うーん……ヤマなしオチなしイミなし? 的な。
 鬼子の話。人と妖の間に生まれた子と、それを産んだ遊女を今回の主人公の境遇(自分の子をはらんだ人間の妻を亡くした)や心情と絡めているんでしょうけれど……この話だけ読んでもピンとこないなあ。あと唱の境遇もか?
 なーんか「薄い」という印象でした。日本妖怪な世界は好きだけれどねえ。
 原作を読者から募集してまでこれを掲載する意味って何?
衰族館 美しき餌食たち/大橋薫
 サブタイトルがAVみたいだw
 なんか、こー、説教くさい感じ。まあそりゃいつものことなんだけれど。今回はまた特に、ストレートすぎてさ。ただまあ、一生懸命育てた魚を思いっきり餌にされるのはびびったが。え、マジでやるんだみたいな。オチはあれでしたが。
鏡の…/柴原むかで
 おー、久しぶりのむかでさん。絵の雰囲気がまた変わったような。前は太い線だったのが、今回は細くなった。
 最初のノゾキが変な角度で首出しているんで心霊現象と思ったら、単なるノゾキでびっくり。でもって、ノゾキを謝る文面が軽すぎる気が──。というか、そもそも何でそんなことしたんだあいつは。そして「きれいだ」はなんだったんだろう。いきなり鏡の中に現れたもう一人の自分(「ばーか」)とか唐突だし。よく分からない部分が多いです。雑って言うよりは、整理がきいてないというか(それを普通は雑と言うんだけどさ)。
 雨の日と埋葬の話もそうだけど、どんでん返しをしようとしてぐちゃぐちゃになっている感じ。今回の話だと、回想の「変な答え教えてゴメン」とかから、実は田中君が陥れようとしているのかと思いました。
 最後の自分自身を罵る主人公がちょいと痛々しい。勘違いの優越感とかね、ある意味身につまされる話。

*1:旧姓は村瀬らしい