ホラーM7月号

 今月は面白い作品、残念な作品、あと原稿落としたのか(次号予告には載っていた)蘭冶が見れないとかで悲喜こもごも。
 全体としては面白かったんですけどねー。
■闇の病棟/渡千枝
 心霊スポットに入った男女が幽霊に取り憑かれ……というお約束のパターン。
 ただし入るスポットは精神病院で、題材はロボトミー手術。……経眼窩式なのに眼球摘出しないのか、こえーな。
 悪霊にとり憑かれたばっかりに霊が見えるようになり、怯えているのに両親に理解されず、精神病院に入れられるくだりがかなり怖い。そもそもの心霊スポットが精神病棟だったのにね。
 事件を解決してくれる如月君がわりと都合のよい存在なのが気になりました。
もののけ草紙/高橋葉介
 シャオツーは相変わらず引っ付いているものの、出番は最後だけ。
 今回の手の目は前の読み切りっぽい話になっていてよかったです。「やきもちを妬かれることだったのだね」が切なくて良い。この調子で続けて欲しい。
■ふたごの星/時田ゆきを
 驚いた、絵も話も前回よりぐっとよくなっている。表紙の頭がちょっと変な気がしたけど……。
 ちょっと血出すぎー、とかぐぁああぁあああ、のシーンがギャグっぽいとか、屍体の絵が変であまり怖くないとか色々ありますが、クラレンスやヴァンパイヤより面白い。あと、これは切ない物語を狙っていた感じですが「悪い記憶を消し去って楽しい毎日を送りましょう」とゆー恐ろしい会社にもうちょっと焦点を当てて欲しかったですね。手術シーン省略されているし。表紙の脳摘出みたいなのが見れるかとちょっと楽しみだったのに。
 この調子で成長を続けてくれたらいいなあ。柳田には期待できなくなっちゃったし。
軍荼利明王霊験記/花輪和一
 私は初めて読むけど、花輪先生がとっ捕まる前の作品を再掲載したらしい。
 壮絶な苦しみにあった女性が軍荼利明王のお蔭で幸せになる話。なのだが、その苦しみの過程とかがなんか邪悪で息苦しい圧力を持って迫ってくる作品。明るく明るくならねばって一生懸命笑って、どんどんヤバイ顔になっていく絵とか。苦しいけど人に知られたら狂ってしまう、誰かに話す力でも出ない、とか。
■サバイバル・チルドレン/ワタナベチヒロ
「暗闇の向こうで何か悪いことが起きている気がするんだ。弱っちいあたしをつぶそうとしている」
 んー、まあまあか? いい感じでした。
 悪化した未成年者犯罪に対処するため、島を使った厚生施設を舞台にしたサバイバリャー物語。女しか出ないな相変わらず。
 登場する少女たちはそれぞれ色んな事情を抱えてて、ちょっと病み気味。女王様の風の教官による数々の嫌がらせに耐えますが……。
「私たちは悪い人間だから? それが大人のルールなの? 私たち死んだほうがいい人間なの?」
 反旗を翻すも「所詮はガキ」。結局誰も幸せになれない。……でも、教官はあと二週間どうするんでしょうね。
■KATANA/かまたきみこ
 叔父さんの「三ツ胴」説明のシーンがグロくてまさにホラー。
 今回のヒロインが、仕方ないこととはいえ結構グダグダしていているのに、刀にちょいと斬られただけで全部ふっきっちゃうのがちょっと納得いかない。主人公も一応彼女の気持ちをほぐそうとがんばってはいるんですが。「いやだ!! もう何も考えたくない」とかお嬢ちゃんあまったれすぎじゃねーですかみたいな。
■心霊術師4/三条知美
 このシリーズ久し振りだな。
 えーと……ジャンヌ・ダルクは魔女でした。水江とジュンはドレズ(超百合)でした。ん? そういえば今回の敵ってホモか。あとは、「失敗作」の女の子の後ろに張ってあった「没」の紙と、その注意書き*1に笑いました。こういう小ネタ好きだ。
 ちなみにホMスレによると、
(α^2) - (Πα^2 / 6) - (α^2 * √3 / 2)
(正方形の面積)-(半径αの円/6)-(底辺αの正三角形)
 でグレー部分の面積は求められるそうです、とトリビア
■口売り/森戸央
 時田ゆきをもそうですが、この人も今回は面白くてびっくりした。第一声の「くすんでいる」とか、「モノローグ人生」とか、「会話の偽装」とか、妙な言い回しがあって楽しかった。人肉はダメだったのになあ。ああ、でも最後のスピーカー?だけはいただけませんが。口のお代もホラーらしい痛々しさがあっていいです。でも、無口がなんでどうして美点なのか説明されてねーような。
■かきまぜ屋/柳田やなぎ
 小林泰三玩具修理者』のパクリ。終了。
 登場人物が姉と弟、何でも直せるから死者も直せる(生き返らせる)、猫を混ぜる、修理中は歌をうたう、「さっきの話の男の子ってもしかして…」などなどの共通点があります。玩具修理者だと、クトゥルー神話の邪神をオノマトペに使っていて面白かったんですが、まぜまぜ〜かきまぜ〜ってそのまんまな歌にセンスが感じられない……。またあれが見られる! と喜んでいる主人公もよく分からなかった。
 絵が綺麗で、期待していた新人さんだったのですがねえ……。三十路も過ぎてこんな元ネタ丸分かりの話、オマージュってレベルでなく商業誌でやっちゃうんじゃダメでしょう。ていうかホラーM編集部はなめくじ少女事件から進歩してないんですね。
■ミサキ衆/明智抄
 悲しい話かと思いきやそうでもなかった。途中まで凄いホラーだったんですけど、オチでばかばかしくなってしまった(笑)。相変わらずちっちゃい女の子が可愛いなあ。ミサキ衆とか死人穴の言い伝えとかはいかにもで、小さいころの思い出とか身に覚えのある恐怖感ですね。
 中学生になったネネちゃんがたくましすぎて凄い。ミサキ衆がもう可哀想なほどに。なにげに千江ちゃんも普通じゃないですね。あんな幼馴染みに囲まれて、一人まともでしかも怖がりの主人公は本当に大変です……。モダン・ホラー成長記ってアオリの意味がよく分かった。
 にしても、蛙の話の時の女の子が転生してません? チェチェロとネネだっけ。
■辻占売/池田さとみ
 仔猫ー、仔猫かわえええー。
 今回の悪霊さんは途中ですぐ正体が分かってしまったなあ。あのおばあちゃんは少し以外でしたが。
 とりあえず仔猫たちは幸せになってほしいです。
ミスミソウ押切蓮介
「私があんな とんでもない変態愛せるわけないでしょーが」
 ああ、もう、堪らない!
 久し振りにエンカウントした春花と相場。これまで完全なる殺人マシーンとして、淡々と冷酷に、そして美しく仇を葬り続けていた彼女ですが、ついにその瞳に感情が揺れるのです。そして、持ち上げて突き落とす見開き。回想で登場するしょーちゃんがまた一層、痛々しさをあおります。
 今回は「持ち上げて突き落とす」が二段構えで存在するのですが、一段目より二段目の落としっぷりがなんとも凶悪。どっちもアップとダウンの激しさは凄いんですけどね。吉絵さんも言っていましたが、本当に春花の人生ってヒドイですよこれ。とうとういっぺんの希望も光も見えなくなりました。あとは……おじいちゃんか? しょーちゃんは一応生きてますが重篤状態が続いてますし。
 歪んだ愛情……? もしかして。もしかしたら。ああ。
 で一方、春花の襲撃に怯えていた流美は、とうとう小黒さんにも完全に見限られました。春花を逆恨みして放火した時のように、今度は小黒さんに憎悪を向けます。刺し違いとかにはならなそうですが、さてどうなるやら。というか、小黒さんが何を考えているのか分からなくなってきました。春花を虐めた理由がまた百合だったりしたら困るなあ……。
 ミスミソウ第二巻は、8月15日発売ですよー。いよいよ春花発動がコミックスで見れますな!
■追憶者/寿歩
 えーとこの人、まえ何書いていたっけ……思い出せない。新人賞出身ってあるけどこれが初めてじゃないような(時田ゆきをにも新人賞出身ってまだ書いてあったし)。ちょっと分かりにくいけれど、これはあれか、ぶつかって心だけ入れ替わりましたっていう。そこが説明不足気味な気が……まあよくあるネタですけど。ちゃんとミスリードしているし、最後主人公がたくましげなのが良かったと思います。悪人ですが。
■絵画修復家キアラ/たまいまきこ
 相変わらずホラーしてないなあと思う中世絵画ロマン漫画。
 今回は、直しても直しても崩れる女神の絵を直す話。アローナさんは結構イイ性格してますなあ。
■呪い通り商店街/稲垣みさお
 前回のショートが面白かったんですが、今回も良かった。しかしまたも呪いネタなんですね。
 呪いによって潰されるさびれた商店街が舞台で、終始物悲しさ、寂しさが漂っています。最終的に呪いは解けますが、それでも──という哀愁ある読後感がありますね。しかしおじいちゃん格好いいというか、一体何者なのでしょう(笑)。

*1:魔物に毎日、水とコヤシをやること。むやみに少女にエサを与えると…