第8話『無差別報復』


 前回から引き続き、無差別テロに対するお話。

「私設武装組織、ソレスタルビーイングによる武力介入の即時中止、及び武装解除が行われるまで、我々は報復活動を続けることとなる。これは悪ではない。我々は人々の代弁者であり、武力で世界を押さえつける者たちに反抗する正義の使徒である、か」

 声に出して読みたい犯行声明文Withアレルヤ。「やってくれるよ」と乱暴にテレビを消したり、いつになくご立腹です。
 ソレスタルビーイングにしろ、テロ組織にしろ、所詮は同じ穴のムジナ。どちらも犠牲が出るのを承知で、自らの正義のために動いているのです。大義のため人を殺す=意義があれば殺人も許されるとすると危険ではありますが、自らの正しさを信じなければ目的の遂行もできない。今回のテロ組織はCBの似姿(あるいは歪んだ鏡像)として出された感を受けましたが、こんなやり方で対抗しようという姿勢ははなはだ疑問ではあります。麻薬畑焼かれたマフィアか?
 国際テロネットワークという語に何か笑えるものを催してしまうのですが、真面目な話なんですよね、これ。山田正紀イノセンス』(押井監督の同盟映画のノベライズ。徳間デュアル文庫)に、コンビニとかそこらの店で手軽に武器が調達できる「テロリストの天国」っつー妄想だか空想だかのシーンがありましたが、なんかそれを思い出しました。
 テロを憎むロックオンは深く静かに憤り、いつも一緒のハロからも距離をおきます。苛立たしげに突き放さず、微笑んで「少し一人に」とか言うあたりが大人の態度ですね。普通にいい人だよ彼は。しかし、彼自身もまたテロリストなわけで、テロを憎むテロリストという困った図に。
 帰宅した王留美。自家用機で移動とかさすがセレブ。CB女性陣もそこに集合し、カムフラージュと言いつつ思いっきり遊ぶ体勢に入ります。後方支援だからって、オペレーターとか指揮官(一応、スメラギさん)がこんなゆるくていいんだろうか。アニメだからと言ってしまえばそれまでですが、後のことを考えるとなあ……。戦争やっているって気概に欠けるのよね。テコ入れって背景もあるんだろうけれど。
 アレルヤとクリスのエンカウント。マイスターとスメラギさん以外のCBメンバー(特に女性陣)と会話しているアレルヤって珍しい気が。イアンさんとは「ご無礼☆」があったけど。
 一方フェルトは、無口無表情の綾波長門系キャラを着実に発揮していました。ハロとの仲良さげな姿に和みますね。
 CBメンバーが船上の人となって遊んだり待機したりしている中、王留美と紅龍は情報収集にいそしみます。中々ターゲットは見つからないようですね。しかしそれはそれとして、スメラギさんからマイスターズに出撃の指示が出ます。ハロとフェルトの蜜月もここまでですが、この時すでにロックオン兄さんとフェルトの間にフラグが立っているような……。まあ今のフェルトはハロしか眼中にないようですが。このメカフェチめ。
グラハム「私は我慢弱く、落ち着きのない男なのさ。しかも、姑息な真似をする輩が大の嫌いときている。ナンセンスだが、動かずにはいられない」
 言っていることはカッコウいいんですが、なんで「対ガンダム部隊」のグラハムが、部下まで伴ってテロリストを捜索しているのでしょうか。裏で高度な政治的駆け引きがあったのかもしれません。しかしそんな疑問も、「お供しますよ、中尉!」「その忠義に感謝する!」といった漢会話でどうでもよくなってしまうのでありました。オイシイやつだ、グラハム。
 一方、貧乏姫ことマリナさんは、テロのあおりをくらって外交に行き詰まりつつありました。
シーリン「ところで、先日議会が紛糾してね、保守派の重鎮が、改革派の暴行を受けて怪我を負ったわ。市民の衝突にまで発展するのは時間の問題。あなたの旅は、これが最初で最後かもしれないわね」
 相変わらずシーリンさんにもイヤミを言われています。ていうか留守の間に国ではまた問題が持ち上がっていました。やれやれ。もはや世界中が全力で彼女の邪魔をしているかのごとし。具体的には描写されていませんが、この時のマリナの胸中にはソレスタルビーイングへの怒りや恨みが募っていたことでしょう。
 そしてルイスと沙慈のターン。まあこの二人は置いておいて、絹江さんは「イオリア・シュヘンベルクの真の目的」とやらを追っています。
絹江「戦争を根絶なんていう無茶な目的の裏には何かがある。ソレスタルビーイングが成し遂げたいと思う、本当の目的が。ただの憶測だけどね」
 まあ、普通に考えたらそういう推測に行き着きますよね。紛争根絶とかいかにも「お題目」っぽいし。不可能そうな目標を掲げている時点でもう。恐ろしいのは、イオリアがそうした常識的観点を無視して、本気で紛争根絶を目標にしているかもしれんって所ですけれど。
 さて、マイスターたちはガンダムに乗って出撃したものの、相変わらず待機モードです。アレルヤウィダーインゼリーとか飲んでますが、食事は出発前に済ませなかったのでしょうか。それとも既に小腹が空くほど時間が経ったのでしょうか。刹那なんぞ暇すぎて過去の辛い記憶をわざわざ回想しています。
若き日のアリー『彼は神のために生き、神のために死んだ。これで彼の魂は、神の御許にいざなわれるだろう』
 思いっきり洗脳してますね、騙くらかしてますね。自分じゃそんなモノ信じちゃいないくせに。本音は「俺の神はお金」ですからね。
 そうこうしているうちに、刹那にさっそく指示が入りました。テロ発生現場から一番近いから、とっちめてこい(大意)だそうで。ちなみに場所はスウェーデン、ちょうどそこにはマリナ姫も訪れており、テロから避難するその途上、さっそく刹那とすれ違います。
 怪しげな車にさっそく発砲する刹那。虚しく防弾ガラスに弾かれましたが、刹那なら銃より刃物を持たせた方が良かったんじゃないでしょうか。彼なら傷の一つぐらいつけられるでしょう。結果、ターゲットは逃すし地元警察に職質されるしでピンチです。
 そこに助けに入ったマリナ姫。主人公とヒロインの、近年まれに見る強引な邂逅ですが、まあ好意的に解釈しませう。刹那は中東系で、なおかつ今はテロで世情も不安。で、同郷人っぽい上、どう見ても子供(実年齢16歳)が警察に問い詰められる姿は、人種差別的なニュアンスが見て取れなくもありません。まあ、警官は現実的に一番怪しい不審人物を捕まえただけなんですが。
 場面変わって、公園らしき場所で話し込む二人。

 カマルくんも知ってると思うけど、アザディスタンは改革派と保守派に分かれ、国内は乱れているわ。石油の輸出規制を受けているアザディスタンの経済を立て直すためには、太陽光発電システムが必要。でも、私たちの生活が悪くなったのも、太陽光発電システムができたから。保守派の人たちは、それを快く思ってないの。
 両者の対立も止めないと、彼らがやってくるわ。ソレスタルビーイング―――狂信者の集団よ。武力で戦争を止めるだなんて。
 確かに、戦争はいけないことよ。でも、一方的に武力介入を受けた人たちは、現実に命を落としているわ。経済が傾いた国もある。彼らは自分たちのことを神だとでも思っているのかしら。

 アザディスタン王国の女王(一応国家元首)と、アザディスタンに滅ぼされたクルジスの元少年兵では話が噛み合うはずもなく。
紅龍「お嬢様、確定情報です。国際テロネットワークは、欧州を中心に活動する自然懐古主義組織、ラ・イデンラと断定」
 刹那がカマル・マジリフという偽名を使っている間に、王留美側ではようやく犯人を割り出すことに成功しました。ラ・イデンラって何語でしょう……そしてなんて意味になるんでしょう……。
 そして刹那は速攻で自分のコードネームをばらしました。お前感情的になりすぎ。偽名の意味が微塵とない! あまりにあんまりすぎて、とても信じられないマリナ姫。信じられたら怖すぎですが、「笑えない冗談だわ……」という言葉に視聴者も共感を禁じえません。
 刹那はマリナと別れ、マイスターたちに本格的な出撃命令が。GN粒子って光学迷彩もできるんですねー、戦闘中も使えたら便利そうなのに、さすがダメっぽい。
 ティエリア・アーデ、容赦せん! とばかりに、ヴァーチェは登場から10秒とかからずにテロリストを殲滅しました。ここまで速攻で目標を片付ける主役キャラもいないような。ロックオン兄さんも、容赦無用モードを発揮。デュナメスが二挺拳銃をやらかしているのを見ると、やっぱりあれは狙撃ガンダムじゃなくて射撃ガンダムだと思います。しかし、生身の人間がいるところにほんっと〜に容赦なく撃ち込んでますな。
 エクシアは戦艦を襲い、水中戦を繰り広げるハプニングに見舞われながらミッションコンプリート。あの……待機していたはずのアレルヤとキュリオスがどこにもいないんですけど……?
 ラ・イデンラはマイスターとガンダムの力で壊滅しました。あっという間だったけど、これが更に世界的大規模なものになったらどーなるんだろう。ラ・イデンラはそれなりにでかい組織だったようですが、具体的規模は不明なままですし。まあこれで、無差別テロでCBを止めようとする作戦はダメっぽいということが証明されました。
 旅客機の人となったマリナのもとに、任務から帰還する途中なのでしょうか、エクシアがその姿を現します。感情を引きずりすぎというか、そんなことしてていいのかなあ……。周囲の乗客たちが結構脳天気な反応が笑えるやら恐ろしいやら。ルイスと同じノリなんだろうか。ともあれ、この邂逅でマリナはカマル=刹那=CBにちょっと信憑性を感じてしまったようです。わざわざ自分の言葉を証明するようなことせんでもっ。