DVD『機械じかけの小児病棟』

機械じかけの小児病棟 [DVD]

機械じかけの小児病棟 [DVD]

 新人賞用に書いてる原稿について、「参考になるよー」と勧められて観たホラー映画。そうでもなきゃ、この手の作品はあまり観ない。
 つっても、あまりホラーっぽくはないです。むしろサスペンスと医療ドラマ。
 ワイト島に立つ築100年の小児病棟は、老朽化と交通の便の悪さから閉鎖寸前。いや、本当ならとっくに閉鎖しているはずだったのだが、電車事故で病床が埋まってしまったため、今も残された8人の子供たちの転院が出来ないのである。閉鎖の準備のために慌ただしい病院にやってきたのは、臨時の夜勤で病院に雇われた主人公、エイミー・ニコルズ。突如やめてしまった看護師スーザンに替わるピンチヒッターである。
 病院に代々伝わる言い伝え(のようなもの)『機械みたいな少女シャーロット』。封鎖された二階。イギリスの陰鬱な湿地帯の雰囲気。何かが見える少女患者。劇中振り続ける雨……。しっとりとした暗さのゴスい空気の中、物語は進みます。
 前半、というか最初の1時間ぐらいは展開が遅く、怪奇現象も結構おとなしめ。色々起こるには起こっているんですが、あまり派手ではないですね、血のシャワーとか出るじゃなし、なんか変な音がしたとかシーツが盛り上がったとかで。しかし終盤30分となるとババッと畳み掛けるクライマックスとなって、俄然面白くなるスロースターター。最後の〆は、大団円とはいかなかったけれど、何だかイイ話になっていて良い余韻を残します。
 ただ、ロバート先生が主人公エイミーに好意を寄せていた感じのシーンとかは、それまでの経過にそれらしいものがなくて「え?」という感じ。積み木片付けていたおっちゃんは死亡フラグっぽかったけど、あそこで唐突に死んだのも、よく意味が分からないですね。ミスリードのため? あと、酷い事件だったけど、二階封鎖するほどのものかなあ。まあホラーのお約束と思っておけばいいのでしょうか。
 主人公は今も引きずる自責の念から、子供たちを必死に守るのがいい感じですね。ただ、マギーとの交流はもう少し欲しかった気が。親が居ないって共通項はあるけれど、「マギーと仲良くなったの」ってシーンとか、ちょっとエイミーだけ言っている感じが少々。穿ちすぎかな。でも、マギーは素晴らしくヒロインしていましたね。「愛のキス」はびっくりするやら感動するやら。
 あとは、ちょっと出てきた占い師? だか、霊能者だからのおばあちゃんが語る、死者のルールが面白かったです。死んだ場所は関係ない、愛するもののそばに寄り添う。そして、死期が近い者は死者の世界に近いから、霊が見える。……終盤明らかになる『シャーロット』の顔は、怖いっちゃ怖いけど、あれだ、ウルトラマンのダダっぽくて……(笑)。うん、ちょっと笑えるかも。
 ホラーはホラーでも、マイルドなホラー。死人もちょい出ましたが、子供たちがよく骨を折る映画なので、そこだけ痛々しいかも。スプラッターさはまず皆無。まあ手術シーンの記録映像とか出ますけれど。ただ、『シャーロット』の正体が明らかになり、思い込みがひっくり返るサプライズは面白い。
 シャーロットの生前、死亡理由とか行動とかは「そこまですんのかい!」「どんだけだよ!」というイカれっぷりがあって良かったです。マンディ可哀想。
 なにはともあれ、手堅い面白さの一品でありました。