ホラーM2008年6月号

KATANA(かまたきみこ
 今回は巻頭カラー。古墳に調査が入ることになったのですが、そこから盗掘された『七支刀』のお話。
 七支刀と主人公が実は知り合いだったりするんですが……すっげーご都合っすね! 別彦が出てくる前の、古墳眺めて悦に入るシーンでせめて伏線を張っておくべきでしょう。もっとページ数が短いならまだいいんですが、わりと長々した話で、おじいちゃんとか主人公を人質に取られてんのに、サクッと解決だもんな。
 でもまあ、ああいう古代日本の雰囲気は好きだったりします。役目を果たして崩れる埴輪たちが切ない。
嘆きの天使(熊谷蘭冶)
 自らに殉じかねない 稚(わか)い狂気のいとしさよ!
 作者が飽きたのかと思う勢いで舞台がすっ飛んだ。閉鎖的な全寮制の女学院から娼館だなんて! また新キャラ出ちゃったしね。
 真珠=生けるバロックを見ると、あーランヤだーって気になりますね。フィッターも少女改造の話だったし。魔王も、足のない女性が主人公でした。
 ゾマァ男爵が普通にゲスなのに、自分では紳士気取りなのに笑った。
 穢されそうになりながら、あくまで『芸術家』たろうとするジークリンデ。だから彼女は彼女なのですね……。
 さて、伯爵はまだ、あの絵の主とサラ・ベルナールが同一人物だとは知りません。来月にはもう判明してそうですけれどね。
サタニスター(三家元礼)★最終回
 まさかの感動的エンディング!
 始まりに続くあのラストといい、サタニスターの死因といい、「沢本いづみ」という少女の成長物語としてバッチリまとまっていました。
 まー、途中の経過は色々すっとばしていたのが惜しいですけどね。伊看崎とか仲間になって活躍するにはしたけれど、単なるお便利キャラでしたし。静ちゃんも、あれと葛藤する話が一話くらい欲しかったというか、力丸戦は一話足りない感じがしましたし。
 幽骸の存在意義は、もはや毒壷の会終了のためでしかありませんでしたなあ。
 最終ページ前の見開き、壁の写真が泣かせます。
 単行本は4、5巻同時発売ですだ。前回までの超展開に買う気をなくしかけていたが、こいつはゲットだぜ!
エミちゃん(森戸央)
 この作者って設定の時点で破綻しているんだな……。人肉レストランのころから全然変わってないような。
 家事手伝いならぬ自律手伝いロボットって、何かギャグっぽい。しかも手伝い=保護者殺害(あと、勉強頑張らないと黙ってご飯減らす)。犯罪者の肉は毒がある級の荒唐無稽設定でやんすな。誰だよ、んなロボに危険なプログラム組んで殺傷力持たせたの。
 あれだけ駄目駄目だった主人公が両親死んだだけで、見事に自活して弟養って、でも弟がダラけた感じがあまり変わらないってのもなあ。駄目な奴は両親亡くしたって駄目だったりしますよ、今の時代。あと、ロボットに平気であんな大金渡す母もおかしいですよね。
新リセット(山本まゆり)
 何というマンネリ……。予定調和的というか、途中からもう先が読めてますよね。はいはいハッピーエンドって感じ。
 しかし、女子高はまだしも、制服がダサいのダサくないのという感覚はよく分からなかったり。あのロングスカートいいじゃん。
 あと、高橋先輩がちょっとアンリに見えました。
もののけ草紙(高橋葉介
 休載から復活。え……これ、主人公変わってない?
 押しかけ弟子・小兎君の話になっていますね。手の目の姉御、決めるところは決めてくれるけど、出番減ったし。大人っぽくなった彼女もまた美し素晴らしいんですけれど。前の持ち味が懐かしいなあ……。大丈夫か作者。
バンパイアは絶望を愛す(時田ゆきを)
 ぬわんじゃこりゃ。
 ストーリーも絵も受け付けない。美少年キャラの顔につく頬染めがウザいと思っていたが、今回はひときわ。何か、前より絵が雑な気もしますしね。
 ナルシストでワガママで、バンパイアに憧れる勘違いお嬢さんが、パンパイアの手で絶望に突き落とされる話……なんだが。登場人物ほぼ全員バカっぽいのでどうにもこうにも。「血まみれの腕を握らせて自分の血を体内に注いだ」とか無理ありすぎですし。
死体さん、こんにちは(三条友美
 オチで吹きましたが、充分ホラー。これは面白い!
 主人公が次々人を殺していくくだりはもはやギャグなのですが、画力と迫力があって、きっちりグロいからブラックさが出る。
 最近の三条友美は、ストーリーも頑張ろうとしているのかな? この路線で続けて欲しい。
暗黒少女メリ(ワタナベチヒロ)
 あれだね、ロリっ子がペドに狙われる展開多いね、最近。まあ小学生可愛いですが。
 ネタはおおむねプチ家出+押しかけ+ブルセラ(古い?)。パンツを売らされる小学生や、赤子の首を絞める闇小学生が見れます。なんて見事にロリ漫画。しかし主人公、懲りずに最後もかわいそう言っているなあ。別に間違ってはいないんだろうけれど。
 途中まではいいけど、終わり方がイマイチだと思う。
遅れるノロイ関よしみ
 小学生の頃、俺が立ち読みしていたホラーMは全盛期でございました。梅図に犬木、怖かったなあ。
 で、この人はその頃のホラーMを感じさせてくれるパワーがあります。絵も古いってんじゃなく懐かしいし、発想もいい。「必ず遅刻する呪い」……社会人として考えると、凄い致命的なんですよね。しかも、自分が遅刻するたびに、待ち合わせ相手が事件に巻き込まれるオマケつき。おまけに、効果が効果だけに誰にも理解してもらえない!
 最後も、呪いが解けたと思ったら、あわわわ……。
記憶の番人(有田景)
 うへぁ。
「小さいころうっかり友達を殺した」なんでしょう、この一ページ目から読む気減退の味わいは。台詞回しとか話運びとか、毎回読みやすさが足りない気がする。絵はいつもより頑張っていたかな。ページ数もありますし。
 そんでオチで小学生が中年オヤジにレイプ、と。記憶の番人、都合のいいキャラだなあ。 
新呪いの招待状(曽祢まさこ)
 いつものノリで淡々と語られる、一人の女性の人生。今回のテーマは花屋さん。
 ええっと……悪くないんだけれど、淡々としすぎて特に言うべきことがない。
占い遊び(稲垣みさお
 呪術とは、知力、体力、精神力!!
 短いページ数でガツッと読ませて面白い。なにげなく呪文が真言ですね。一回目のほうは分からなかったけど。
 アオリ文もツボでした(上記参照)。編集さんナイス!
ミスミソウ押切蓮介
 久し振りに相場君が登場しました。以前から、母親との仲が上手くいっていないことは示されていましたが、今回は決定的に、拒絶されているシーンが出てきます。今まで春花とのエンカウントにさんざん失敗していた彼ですが、今回ようやくの邂逅を果たし、次回へ続きます。相場は春花になんと言葉をかけるのでしょう。
 一方の流美は、春花の存在に怯え、とうとう死体を確認してしまいます。いじめグループじゃ大人しかった二人も容赦なく惨殺されているんですから、首謀者の彼女がガクブルで引きこもってしまうのは当然。ついでに後ろ暗いから、一度打ち込んだ110番もコールできません。小黒さんに電話しても、多分無駄だろうなあ。
 というか小黒さんは放火には関わっていませんが、彼女と春花の対決はどのようなものになるのでしょう。家族の直接的仇ではありませんが、吉絵さんと一緒にいた子らにもあの通り制裁を加えたのですから、見逃す理由などないのですけれど。
 寒々しい冬の街で起こる、グロくて悲しい悪意の物語。静かに紡がれるストーリーに毎回目が離せません。
顔浮かび(柳田やなぎ)
 前回はあまりの尻切れトンボぶりに絶望しましたが、今回はちゃんと話がまとまっていて、しかも初めてホラーらしくなって大躍進。絵は元々少女漫画らしい可愛さがあるので、これでストーリー力もついてきたらかなり楽しみな作家さんですね。
 あたし今からあなたの名前忘れるね。
 怪異の怖さ以上に、名前を呼んでいけばいないそのルールに従う友達が悲しい。
トン子ちゃん(花輪和一
 表紙が強烈。グロいというか汚いというか。その濃さがよし。
 ……この時代ってこういうのマジだったのかな?
 子供は野生みたいな育ちかたして、よく死ぬから予備としていっぱい生んでおいて、時々人買いにも売るっての。みっちゃん大丈夫かなあ。で、子供売ってんのに、結構みんなあっけらかんとしている空気が独特。……成人した子供が戻ってきて慰謝料云々は生々しいというか、そこだけ現代的で笑いましたが。
 あい子ばあの怨念玉ってまだあったんかいっ!
 最後にお嬢様の行動に何だか感動。つくづく度胸のある娘だ。