私的キャラ造形

 構想中の小説にて、キャラ造詣が煮詰まってきたので、整理の意味合いもかねて「私はこうやって小説の登場人物を作っています」という話をば。
 ある映画監督は言いました、映画を一本撮るには、その主人公についてノート一冊分は書かねばならないと。
 基本、キャラクターを作るには、まずプロフィールと役割から。
 プロフィールってのは名前とか性別とか身長とか普通に言うあれですね。まずはこれをどんどん細かく決めていく。好きなもの、嫌いなもの、ものによっちゃイメージBGMとか、人には絶対言えないイメージボイスとか(いたたたたたた)。あるいはそのキャラを象徴する言葉だったり、座右の銘だったり、枕詞なども。
 これを推し進めて、キャラに対する質問表とか作って答えさせたりもします。TRPGのキャラ作成でも時々ありますね。天羅とかメガテンとか。
 役割ってのはストーリーと密接に繋がる部分で、大概はプロフィールより先に作ります。主人公とか敵とかのポジション、目標・目的、特殊能力、背景設定などなど。作中でこういう事をさせるから、こういう設定、という具合に。
 でまあ、こうしたものはあくまで『データ』なわけで、いわばキャラの設計図。キャラそのものを作っているのとは違う。
 キャラクターははたして生むものなのか、生まれるものなのか。私の場合、まずキャラの『イメージ』がなにより先にあって、そのイメージを探るようにしてデータを作っていきます。外堀を埋める感じと言うか。色々な設定を調整していって、「あ、これはありそう」「いや、これはこの子じゃない」という具合に試行錯誤。中には思わぬ設定とイメージが化学反応を起こして、新たなイメージを作り出していったりもする。
 どれだけデータを作りこんでも、イメージが生まれないと意味がない。魂を吹き込む、なんて言うとおおげさですが、イメージを抱くことはそのままそのキャラクターが、私の中に生まれるということだったりします。強いイメージがあれば、そのキャラを活かすエピソードもぽんぽん出て、とても楽。
「あなたは誰?」と繰り返す自問自答。探すことと作ることの折衷でキャラが生まれる。そのどっちにも疲れたら(うまくいかないなら)、ストーリー上の観点から必要事項を作成していく。……ま、それでストーリーのほうも手詰まりだったらちょっとお手上げなんですがね。そうなると次は、世界観や設定周りに手を出すんですけど。
 最近までは、キャラ一人一人は、集団中でのバランスとか役割(この場合は攻撃担当、防御担当、みたいな役割)を考えはしても、細かいキャラ立てまでは考えていませんでした。一人一人が個性あればいいでしょって言う。今は、個性一つにも、他との調和を考えている部分があります。誰と誰の設定が対になっているとか、あっちが△だからこっちは□という具合に「揃える」、作中の雰囲気が統一できる(それが今現在まで出来た作品にどれだけ反映できているかは、また別の話)。歓喜の魔王だと、全部は登場しなかった騎士団連中は、わりと思いついたアイディア優先で作っていたもんだ。
 たまには初心に帰って、逆行的手段をとるのも一つの手。つまり、キャラクターのイメージに合う言葉を並べ立て、国語辞書を引きまくる。……ま、語彙の勉強にもなるからいいんじゃね、なんて。辞書程度のデータではあまり食いでがないですが、取っ掛かりにはなる。
 ・ガジェットを持たせる。作品の空気、テーマを象徴させるアイテムを。
 ・話の本筋とは関係のない設定を持たせる。やりすぎてはいけないが、そのキャラはその物語が全てではない。物語が終わっても、そのキャラの人生は続く(かもしれない)し、物語が始まる以前から、そのキャラの人生はあったのだ(違うこともあるが)。
 ・キャラクター同士の人間関係を作る。人は一人だけで生きているのではない。人格の形成に人間関係は重要である、というか、人間の性格とは人間関係があるから出来るのだとも言う。この人間関係はストーリーの作成にも密接に関わる。
 ・ある程度キャラが出来ている状態で煮詰まったら、そのキャラを自己パロするのもあり(他人に見せるのはやめましょう)。
 ・たまにはキャラに酔わないよう冷静になる。
 ・記号の組み合わせでキャラを作ってもいいじゃない。暗号化には複合化。記号を言葉に戻せば、記号の計算式から出来たキャラは、言葉で記述されたものになる。要はウシロ(背景)だ。
 ・しかし一番大事なイメージが出ない/生まれない/できない時にはどうするか。音楽を聴く。自分が作ろうとしている物語に似ていると思う物語を読む。関連のありそうな資料を読み漁る。辞書を読む。他のキャラから先に作る。まったく関係ない/相容れなさそうなものをブチ込んでみる。いっそ今まで作った設定をひっくり返してみる。今まで作った設定を削ったり誇張したりする。ひたすらデータだけ作りこんでいく。眼を閉じて自問自答、その子を探してください。
 うーん、こんなところか。
 わりと一般的なこと言っている気もするが、まあいいや。作業に戻ろう。今必要なのは、深化。