中村九郎『樹海人魚』2
「あたしはとてもわがままだわ。あたし自身が、あたしのわがままにうんざりするくらいなの。あたしはあたしなんてとっくに見放してる。絶対零度のバービードールは、世界中の誰からも、あたしからも愛されないの。そうでなくちゃ、やってられない」
- 作者: 中村九郎,羽戸らみ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/03/19
- メディア: 文庫
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前回あんなことになったミツオが参戦するまでの経緯は、あとがきにあったように「1巻っぽい」かも。
で、前より成長した感じは受けるんですが、ミツオのグズっぷりというか、鈍感具合が前回より更にひどくなっているような……。「他人の感情なんて、分かるはずないじゃないか」と言い切ったくだりとか頭痛くなった。いっそ霙にも見捨てられちまえと思わなかったり。
前巻からのキャラも、主人公勢以外にも肥後さん・ラビット・諏訪野が登場。意外な面がそれぞれ出てきましたが、実はちょいマッドなひとだった諏訪野だけ影が薄いような。ラビットが暴走したのもよく分からないし(最高速度=暴走?)。「肥後さん」は以後も続投かなあ、あのままで。
樹海人魚は不眠による衰弱死、停滞する時間、反転重力などちょっと捻ったギミックが面白かったのですが、今回もそれは健在。町中が一斉に敵に変化して襲ってくるのは、狗狼伝承(ファンタジア文庫、新城カズマ)の電柱暗鬼を思い出しました。いやちょいと偏見なんですけどさ。彷徨市の設定は凄くそそられるものがあっていい。ヤドカリの能力と名前の由来も、分かったときは仰天したし。……ただ、彼女はやられる瞬間があっさりしてて、「え、なに、終わってる?」とめんくらってしまいました。読み返さないと分からない事が多くて困る。
ジャンル:中村九郎。3巻の登場を心待ちにいたします。