高殿円『銃姫』1

「その銃で、誰を撃つ気だね?」
「おまえの言う悪人をそうやって一人一人殺して行けば、おまえの言うように暮らしがよくなると思うかい。いい世の中が来ると、本気で思っているのかね」

銃姫〈1〉Gun Princess The Majesty (MF文庫J)

銃姫〈1〉Gun Princess The Majesty (MF文庫J)

 今頃読んでみた。でも気にしない、いっつ・あ・ごーいんぐ・まいぺーす。
 エナミカツミさんの絵はいいなあ。
 その引き金を引けば、望んだ言葉を一つ、この世から消すことが出来る謎の超兵器・銃姫。それを盗んだキメラの魔銃士・オリヴァントを追って、少年セドリックとその姉エルウィング、少女アンブローシアが旅をする話。
 神によって魔力発動の力を取り上げられた人間が、銃を介して魔法を発動させる設定になっております。銃の話よりは、1話で結界破るシーンでの、魔法式(ゲール)の解説のほうが面白かったですね。魔法自体は、火とか闇とか光とかの六属性があったりとか、わりとベタですし。オリヴァントがセドリックの魔法式を読んで「この部分いらないでしょ」とか余計なアドヴァイスで神経逆撫でるシーンもいい。
 大変面白かったのですが、口絵の登場人物紹介で既にネタバレしているのが残念。セドリックの「彼には出生の秘密が〜」とか、エルウィングのオンチとかは別にいいんですが、アンブローシアの「テロリスト」は3話で読んで初めて知りたかったなあ。そのほうが1話での彼女の態度がもっと興をそそられたのに、もったいない。
 背景設定自体は少々既視感を覚えながら、紡がれる物語は人間の業深さとかが見えました。まあ、ペチカを励ましたセドリックの台詞とか、市長の最後とか、ご都合的だったり恥ずかしかったりするシーンもありましたが。3話「柔らかい銃弾」は絶品の出来。
 憎い敵がいる、あからさまな悪人がいる。でもそれを打ち倒せばいいほど世の中は簡単ではなくて、不幸な少女の前に広がったのは、今まで思い込んでいた現実よりももっと哀しい真実。1話はそんな話でした……。彼女の復讐が見当外れになった時、「この作者は!」と思ったものです。ただセドリックの台詞が恥ずかしすぎでしたが(歳のせいかしら?)。この調子できめ台詞とか大丈夫かなーと思っていましたが、3話でのアンブローシアの台詞や、彼女とのセドリックの台詞は良かったなと思います。アンブローシアの言っている事も分かるし、実際それで動いている人たちはたくさんいるわけで。でもそれだけじゃいけなくて、という。
 で、その一方、作者があとがきで言うようにこの作品は「巨乳vs貧乳」でもあります(笑)。作者女性なのに、セドリックが年頃の少年らしいご都合な夢見てますねー。おっぱいおっぱいダブルヒロイン。セドリックに迫るアンはいきなり過ぎてちょっとびっくりでしたが。
 ああ、これは既刊一気に買い集めなくちゃなー(あ、円環少女も買わないと……)。