えすのサカエ『花子と寓話のテラー』1〜3

 一番好きなのは「人間」だワサ
「寓話」は人の心の中の 人間にしか見えない存在だから…………
 虫や動物は私を見てはくれない だから動物は嫌い…………

花子と寓話のテラー (1) (角川コミックス・エース)

花子と寓話のテラー (1) (角川コミックス・エース)

花子と寓話のテラー(2) (角川コミックス・エース)

花子と寓話のテラー(2) (角川コミックス・エース)

花子と寓話のテラー (3) (カドカワコミックスAエース)

花子と寓話のテラー (3) (カドカワコミックスAエース)

 気がつくと4巻が出てたがまだ未読。でもウィキペディアさんでちょいとネタバレみちまったー。
 ヤンデレヒロインで一躍話題になった未来予知サバイバル漫画『未来日記』の作者による、都市伝説と戦うオーソドックスなホラー漫画(かな?)。オープニングから、現実化する(生きている)都市伝説=『寓話』の設定がナレーションされてちょっと鼻白んだが、基本は毎回『寓話憑き』を解決する連作短編形式なので、ちょうどよかった。
 寓話に憑かれたことが切っ掛けで、寓話探偵・亜想 大介*1の助手として働くこととなったヒロイン・平沼 カナエ*2と、亜想に憑いている寓話・トイレの花子さん*3が、おおむね1話完結で様々な寓話と対決する。
『現実化する都市伝説』という、少々既視感を覚える*4設定に、作者独自のセンスを加味しつつ、話の展開振りは王道的。主人公・亜想はカナエを危険な目に遭わせたくないがため彼女を遠ざけようとし、ヒロイン・カナエ(お約束どおり寓話に憑かれやすいトラブルメーカー体質)は亜想が好きだから、遠ざけられて寂しがる。そんな二人の間に挟まれる梨花ちゃま、もとい、花子さんもまた健気。
 他にも、亜想が寓話と人間の境界にいる存在ゆえ、寓話に対処できるとともに、寓話化する危険も秘めた諸刃の剣……という設定にも、目新しさは感じられない。それよりは、「100回しゃっくりすると死ぬ」というギャグのような冗談がちょっとツボでした。
 しかし、話は基本的ながら、視覚的表現には面白いものがあるのがいい。表紙にも出ている目玉花とか、OPでも出てきた謎の目盛りが茎になっている花とか。口裂け女の「口」と一緒に、空間が引き裂けたり、複数のドアから一斉にコックリさんが出てくる図とか。あと3巻の表紙が好きです。
 気になったのは、双子の話で白倉由美「ミルナの禁忌」(ザ・スニの連載分しか見てませんが)と似た箇所がある点でしょうか。生まれたこれなかった双子が、生まれて生きてきた片割れを責めるんですが、「あなたは……私が溶けてゆく様を見ていたのよ」なんてよく似たセリフもあるし。偶然?
「ピアスの穴と白い糸」など、心の闇に関する話では、まとまっているが少し物語り的ご都合を感じる一方、その手前の話「テケテケ」では、厭な黒さがある。1巻の「人面魚」は生理的ないやらしさを感じましたね(そこが好きだ)。まあ掲載誌(少年エース)ということを考えて、ある程度浅薄に造っている面もあったりするのだろうか?
 ホラー漫画としてみるとまあ普通といえる。白い糸が顔面から出てくる絵や、メリーさん、テケテケなどはぐっと来るものがあるが、グロ方面はあまりきつい描写ではない(これは未来日記も同様か)。未来日記コミックスに宣伝が載ってましたが、えすのファンなら読んでよしでしょう。ただ、ヤンデレ分は足りませんが(笑)。
 面白かったのは、「眉の太い梨花ちゃま」にしか見えない花子さんが、コスプレ(バニーとかゴスロリとか)してても、あまり媚びた……なんというか、ニーズにこたえてる感じがしないところでしょうか。こう、萌えからズレているといか、現実のお子様がバニーとか着た時のスタイル寸胴っぷりを思わせてリアルっつーか。もしかして無理して描いたのか(でも少し天然っぽい気もする)。
 完結編4巻はまた別にレビューします。

*1:趣味:エロマンガ蒐集

*2:夢はアイドルでもオンチ

*3:エロマンガ読み

*4:例:ペルソナ2