山田悠介『リアル鬼ごっこ』が映画化されると聞いて頭痛が痛い。

 リアル鬼ごっこは読んでいないというか、酒の一杯でもおごられにゃあ読みたくねえと思っていたんですが、こちらの『よい子のBlog(季節のフルーツ添え)』さんのレビューで具体的な内容を知って、金をもらっても読みたくねえなあと思ってきました。
 当方、曲がりなりにも小説書いている人間なのですが、携帯小説が大嫌いです。と言っても、携帯小説はひとつも読んだことないから、堂々と批判出来ないのですが、批判するために読むのもまっぴら御免です。山田悠介は売れていますが、それは優れた小説だから売れている訳じゃありませんし。だから。

377 名前: マジシャン(コネチカット州)[] 投稿日:2007/10/22(月) 18:15:52
リアル鬼ごっこはおもしろいよ。分かる人にしか分かる通向けかもしれないけど
ここで叩いてる人って山田先生が若くして売れっ子若手作家になったのを妬んで
叩いてるんでしょ?w
叩くのは口だけは達人でどうせ人に読まされる文章も書けないんでしょ

 釣りではないかと思っていても、んなカキコミには頭が痛いやら哀しいやら腹が立つやらああもう。こんなものの面白さが分かる通なんぞいらねえ。まあ妬みという面では、「一般水準にも達していない、本来なら世にも出れないような品質で売れやがって」という気持ちならあります。
 リアル鬼ごっこの粗筋:
『西暦3000年。王様が治めるこの国は人口が約1億人、そして「佐藤」という苗字を持つ人口は500万人を超えていた。
 ある日、王様は自分の苗字が「佐藤」であることに対して「佐藤と名乗るのは自分だけでいい!」と怒り、「鬼ごっこのようにゲーム感覚で全国の佐藤を捕まえ、抹殺する」という恐るべき計画を提案する』
 この粗筋だけならまあ、店頭で見て興味を惹かれるかどうかは別にして、出版されてちゃんと本屋に並んでいるような品です。『世にも奇妙な物語』的な、バカバカしい事が大真面目にやられてしまうシュールさ、恐ろしさを活かしたまっとうな作品なんだろうと想像します。だっちゅーのに、

王様の目の前に全ての料理が出そろった。豪華で目を見張るほどの大きなテーブル。
目の前には全てが金で作られているナイフやフォーク。
そして、背もたれが必要以上に天井へと伸びている豪華なイス。
全てが”豪華”これ以上の単語が見当たらない程、豪華であった。

 こげな文章を読まされた日にはもう。
 ただ、前述のブログさんで読んだレビューを見る限り、非文章媒体で、キャラの心理描写や演出や構成をしっかりやれば(つまり大枠の粗筋とキャラと設定を借りた別物にしちまえば)それなりに普通の作品ぐらいには仕上がると思います。


 ……とここまで書いて、しばし秋山編集長*1と話していたんですが。
 文章はどうあれ、山田悠介は書いている。売れている。すぐに潰れるだろうと思いきや、ずっと(って言うほど長くはないが、デビューしていく新人がどんどん消えていくこの業界としては)活動を続けている。
 一次にせよ二次にせよ、ネットの創作小説を読んで回った事もあったんだが、その中で、とにかく書いて書いて書きまくるタイプの人は、文章があまりよろしくないという印象があった。
 文章を磨いたり、練ったりするより、とにかく作品を書く。自分の中にある衝動を出力する、し続ける。そういう、荒削りなバイタリティに満ち溢れた人々が沢山いた。山田悠介は、そういう人種に属するのではと思う。
 携帯小説や、山田悠介を知った時には頭が痛かった。「こんな文章で世に出るなんて!」と。自分は読みやすい文章、巧い文章、分かりやすい文章、綺麗な文章を書こうと研鑽を積んできた。でも、それを全部「文章なんて出来なくても小説家になれんだよwwww」と突きつけられたような気分で腹が立って仕方がなかった。
 けれど、違うのだ。小説家というものは、免許も何もないので、実は「小説家です」と宣言しちまえば(そしてその心構えさえあれば)もうなれる。それと仕事があるかはまた別だが。で、「仕事のある小説家」をここでは便宜上「小説屋」とするけれど、山田悠介携帯小説作家は、小説屋(家)になろうとしてきたのだ。
 私も小説家志望だけれど、まだあまり賞には応募していなかったりする。ネットで発表する分を書いているうちに、締め切りを逃してしまうような軟弱者だ。私は小説を書いているし、巧い小説を書こうとしている。でも、それは多分小説家(屋)になろうとしている事とは、また違うのだろう。
 あれはダ・ヴィンチだったか。「30歳までにデビューできなきゃ小説家は諦めろ」という語があって、なんとなくずっとそれを意識してしまっている。デビューできなくても多分書き続けるとは思うが、自分が目指すジャンルは文学ではなくラノベなので、本当はもっと限界は早くなるだろう。
 もう20歳を過ぎた。「小説」を書くのは、文章を練るのは、設定を練るのは、準備に手間暇懸け続ける時間は終わらせなくてはならない。「小説家」にならなくちゃなのである。

*1:『回廊』のドン。つよい。えらい。ヒマ