DVD9巻〜ありがとうを、君に〜

 雰囲気はすっかり「朝帰り」(パッケージ絵)。カズキの顔が微妙な気はしたが、8巻のヴィクターに比べりゃマシだ。

24話 君が死ぬときが私が死ぬ時

 この言葉を使うのは初めてですが、これがいわゆる「神回」ってやつでしょうか。照星さんの顔アップも線が多いし、全体的に作画が綺麗。というか気合が段違い。つうかこの最終巻は全体的にクオリティが高くなっています、画も、ストーリーも。
 カズキとパピヨンの約束から今回は始まる。原作同様このシーンにも桜花さんがいるが、彼女ってパピヨンとつがいになっても似合う気がするよね。あるいは錬金術パピヨンの助手(でも後でとっこさんと殺しにきたよな)。
 一方、戦団本部ではヴィクターとバロンの戦いを見守っていた。背景モブで白衣の団員がいっぱいいるけど、この人たちもサンジェルマン病院の医者先生みたいなノリなんでしょうか。
 平気でとっこさんとの待ち合わせに遅れるカズキ。こんな奴でももうつがい。しかし是非ここで、とっこさんにタコヤキを「あーん」してあげて欲しかった……。
「この間もらった勇気、少し返そうか?」ふと思ったが、ここで返しておいてもらったほうが、後でとっこさんは立ち直りが早くなったんだろうか。まっぴーの登場で続けられなかったし。
斗貴子さんを泣かせたりしたら、その時は、怒るんだからね……」そうだそうだ、帰ってきたらこっそり平手の一つも喰らわしてやれまっぴー!
「武藤、窓の外見てみな」病院の屋上でたたずむブラボーと千歳さん。あ、ぶらぼぅ! Tシャツじゃないんだな。ギャグ要素と見做されて排されたんでしょうか。あと、カズキってここで千歳さんと初対面ですよね? 原作だとニュートンアップルで会っているけど、アニメじゃ潜入していないから。まあブラボーの彼女だとナチュラルに思っているんでしょう。実際そんなに間違っていねえし(でも、会っていないのになぜか23話でカズキの心象風景に照星さんや早坂姉弟、ブラボーと一緒に出てきているんだよね)。
「右手から!?」「別の武装錬金が!?」根来と戦部、びっくりしすぎ。つうか事前に教えておこうよ、攻撃に参加させるんだからさあ。
「行くぞテメーら! 出番だ!」このシーンで一斉に武装錬金を発動する再殺メンバーが、原作以上に男前になって見えます。本当に「戦士」の顔しているよなと。その後の増幅された武装錬金がショボイけど。ちゃんと特性がバロンに適用されていたら、凄く強いはずなんですけどね。レイビーズで頭数増やして、トレイルでレイビーズの背中から出現して奇襲。ぶっ壊されたら激戦で修復。そしてバブルケイジとブレイズ・オブ・グローリーでHPを削る……という具合にさあ。
 が、あえなく倒されたバロンのもとへ到着するカズキ一行。ここで明かされるパピヨンの協力を得た武藤プラン。ヴィクターが前段階ならこのプラン通りに進んで、一ヵ月後には全部片付いていたんだろうなあ(でもそしたら、戦団は凍結されなかった可能性もあるけど)。
 バロンの残骸の上。ここらへんは会話が随分削られていて、再殺部隊も秋水君もセリフがない。照星さんのセリフや会話も削られていて残念至極。まあ「部下は見逃してください」(今までさんざん追い掛け回してましたけど)より「逃げなさい」とみんなに言うほうがまだいいけど(どうやって逃げるのかはさておき。犬飼はレイビーズにつかまればいけるんじゃね? 戦部は自力で陸に辿り着きそうだし)。
 OPで何度も出ていた「二人の初めての共同作業」シーンがついに来る。「貫け! 俺たちの武装錬金!」音楽とあわせて実に燃えます。けれど、音楽は途切れ、物悲しい曲調に切り替わる。
「ごめん、その約束守れない」絶叫しながら落ちていく斗貴子さん。裏切りに憤る剛太、そしてパピヨン(顔が濃すぎて大事なシーンなのに笑えてくる)。ここのシーン、原作と逆にカズキのセリフに「ごめん」がもう一つ付け加えられていますが、このほうが 分かりやすくていいですね。
 母の死を見送ったヴィクトリアの上に、ヴィクターを月へと導くサンライトイエローの光が降り注ぐ。
 登場人物達に連呼される、カズキの名前。……余談だが、再殺部隊って殆どが一方的にカズキ(ヴィクターIII)を知っているだけで、カズキのほうは火渡と華ちゃんしか面識ねーんでやんの。まあ仕方ないか。
 テレパシーで会話するヴィクター達。空気の振動なんて無視です。「その覚悟、どこから?」「あの星から!」の名シーンがついにアニメで……。「今はもう、楽しかった事しか思い出せないや」のカズキが色々悟りまくっている気がしてならない。

25話 代わりなどいない

 月の下でかわされる火渡、毒島の会話。そして照星さん。この決着に納得がいかなくとも、結果として世界は救われ、現実は続いていく。だから、今は現実に対処しなくちゃいけない、と。
 この回では、ページ数の都合上描写出来なかった(と思われる)カズキがいなくなってしまった世界が丁寧に描写されている。カズキのいなくなった教室のカット。雨の日の窓から見える、ブラボーから日常組に伝えられる訃報。無言のままブラボーにすがりつき、崩れ落ちるまひろ。普段明るい彼女が、ストレートに取り乱す姿を描くのではなく、雨にけぶる窓という一歩離れた視点から無音で描写するやり方が巧い。
 平凡な人々の日常が流れていく街。それを見下ろすパピヨンは、「武藤カズキのいないこんな世界など……」と、世界を燃やし尽くす事を考えていた彼にふと戻る。けれど、視線が向くのは空にかかる月。カズキの事を思うと、本気でそれは出来ない。だから彼は彼でカズキのために出来る事を始める。
 水溜りに映る月。人々はそこ(月)にこの世界を救ったヒトがいることなど知らず、ただの胸像として蹴散らしていく。けれど、徐々に満ちていく月のカットがこの後何度も挿入されていく。時機を待つように。
 そして、カズキがいなくなって落ち込んでいる当のヒロイン。交差点で鳴きながらカズキの名前を叫ぶシーンはアニメオリジナルなんですが……うーん。斗貴子さんがカズキなしの世界を実感している感はいいんだけど、ちょっと変な人になってしまったなあ。まあ、原作でも実際にやっちまいそうといえばそうだ。
 仲間が一人欠けてしまった三バカ。まひろを心配する大浜、達観した風に言い聞かせる六枡、怒りの矛先を自転車にぶつける岡倉。それぞれの反応。……でも、自転車束で倒すと起こすの凄い大変だから、やめような。
 模擬戦闘で自分をイジメまくるとっこさん。秋水が忠告するもバリバリ無視です。しかしここのシーン、もののついでで戦団施設内が出たけど、ほんとに秘密基地って感じだなあ。斗貴子さんの部屋とか。
 剛太に手当てを受けつつ剛太を無視しながら、パピヨン殲滅への決意を固めるとっこさん。で、問題の生着替えシーンが……う、うーん。規制上下着が描けなかったから、「はいてない&つけてない」になったんだと思うけど。なんかサービス過剰で俺はヒく。現実問題としてノーパンは不潔だし。
 パピヨン殲滅の任へ赴くとっこさんの元へ、続々集う仲間達(剛太・秋水・桜花・ゴゼン)。おまいらそんなにパピヨンが嫌いか(笑)。とっこさんが元気になったのは嬉しいにしても、嬉々としてパピヨンを殺そうとせんでください。
 モザイクがかかった「ママの味」を食べるヴィクたんによる、ホムンクルス食人衝動講座。……パピヨンが人間の世界に未練を覚えるようになったら、人間を食いたくなるんでしょうか? ほとんど不死身なんだから、将来はどうなるか分からんと思うんだが。まあ、そんな暗い想像図はこの世界に似合わないけど。
 一行を出迎える復活怪人達。わっしー以外声に効果がかかってちょっと残念。花房とかオカマっぽいよー。巳田の「イカセナイ」が気持ち悪くていやん。あれ、秋水間合いより遠くを斬ったような……。
「貴様にはいるのか! 武藤カズキの代わりが!」
 とパピヨンが決めたところで次回。次回予告の中身が、これまでのカズキダイジェストっぽいあたりがいかにも最終回。

26話 ピリオド

 パピヨンの怒られるとっこさんを急襲するわっしー。剛太が助けに入るが、とっこさんはやっぱりアウト・オブ・眼中です。きっと剛太、背景で一生懸命戦っているのにね。
武藤カズキのいない世界など、何の興味ない」気持ちは分かるが、カズキが天寿をまっとうした後どうするんだろう。ソウヤを育てたりしたから、武藤家を見守る存在になる……のかな? しかしセリフの内容と状況上、全然別の意味にとられちゃったなー、パピヨン
「カズキがいなくても、カズキが命を懸けて守った世界だ!」
 しかしどうしよう、鷲尾の声が大十字九郎にしか聞こえない……! というかイトケンは殆ど九郎にしか聞こえないけど。デモンベインのせいだけじゃないと思う……まあ、脱・九郎の演技も出来るらしいですが。これなら剛太がイトケンでも似合いそうだと思ったり。
 で。パピヨンが串刺しになったりフラスコが壊れて白核鉄が出たりしててんやわんやの中、ついに月からサンライトハートの光が! あ、千歳さんのテレポートってまず武装錬金から現れるのんな。
 バスターバロン専用格納庫……? 大戦士長だけあって、専用の射出カタパルトがありまんな(なんか違う)。しかし、これ、火渡と華ちゃん(ガスマスクのレンズからちょっぴり素顔が透けたー)が同コクピット内だけど危なくないかなあ。
 真空内で土煙を立てながら戦い続けるカズキとヴィクター。カズキの回想で出てくるとっこさんの、キスシーン直前の顔がストロベリー。
「この一ヶ月で奴らも変わったようだ」なぜか原作の「百年」から変更……。うーん?
 この辺のシーンで気になるのは、やっぱりヴィクターの唐突な物分りのよさだなあ。ページ数や時間がなかったのは分からなくもないが、和月の悪人描けない病の影響も見逃せないんじゃないかと。白核鉄の影響で人間の心を取り戻したという説もあったけどね。バロンぶっ壊したヴィクターなら、地球からやってくるバロン見て「増援」だと思いかねない。だいたい重力操作せんでもヴィクターって空飛べるから、ヴィクターがバロンを迎え撃ちにいって、カズキがそれを止めようとして。でもそれは増援じゃなくカズキに会いに来た斗貴子さん。愛し合う二人の抱擁にヴィクターもまた心打たれる……なんて展開が出来たらよかったんじゃないかと思うんですよー。
「ヴィクトリアが俟っている!」と聞かされてヴィクターが驚いていますが、死んだと思ってたのね。まあアレクさんもつい最近まで生きていたとすら思ってないだろうケド。しかし眠っていたぶん、ヴィクターって年齢ではヴィクトリアに追い越されちゃったんだよなあ。そら月で尻に敷かれますよ。
 シルバースキンとっこさんと、ヴィクターカズキの宇宙抱擁。裸のまま抱き合うシーンがバストアップされると思っていたら、地球を背景にクルクル回るシーンもあったとは……。なんというバカップル。オーディオコメンタリーで福山さんが言っている「イェ〜イ、この光は摩擦熱の光じゃないんだぜ〜」が笑えて笑えて。
 わざわざパピヨンの秘密基地の傍に着陸するバスターバロン。バルスカが刺さったせいで吐血するパピヨンから白核鉄を受け取り、二人の最後の戦いが始まる。真赤な誓いは戦闘BGMにもいいねー。
パピヨンが残したデバイスを解析して……」積極的に提供したのとはちょっと違うのか。「好きにしろ」って感じでパピが放置するから、剛太あたりが回収してくれたんでしょう。そしてヴィクターは人間に再就職し、娘と同じホムンクルスに再再就職しました。ヴィクターにも人食いの衝動はあるんだろうな、やっぱ。いつの日か人間に……って言ってるし。
 戦団が凍結され、世界は平和になり、巷には蝶人パピヨンの噂が話題沸騰。インタヴューされている修学旅行男子ってイトケンかな。パピヨン連呼する学生らのセリフはよく聞くと面白い。パピヨンさまー! とか。オーディオコメンタリーで柚姉がバラしたが、柚木さんもこのシーンで「セクシャルバイオレットしてー!」と叫んでいる。最初聞いた時、彼女にして〜って叫んでいるんだと思っていた(笑)。
「もっと愛を込めて!」やはりこれだね。セクシャルバイオレットするって、空蝉みたくまたパンツ一丁になるんかな。変人バーガーの店員さんが頬を染めている気がするが、彼女も今ではパピファンっぽい。
 日常へ回帰するカズキと斗貴子斗貴子がカズキを戦いの世界に導いて全てが始まり、今全てが終わってカズキが斗貴子を日常の世界へと導く。しっかり抱きついて校門をくぐりよってからにこのストリベリーが。「ここにある核鉄は、ずっと斗貴子さんと一緒だから!」カキ氷のシーンといい、ナチュラルにプロポーズするよなカズキは。
 最終回仕様のエンディングは、アフターの内容をフキダシつきで流すもの。DVDのオマケでノンテロップ版もあって便利。一日店蝶がカラーで見れようとはw

武藤まひろの武装錬金講座 最終回

 なんか最終回ときくと、なんとなくバスターバロン(特性:打ち切り)が相応しい気がするが、題材はサンライトハートプラス。これ見て思い出したが、プラスってヴィクター化の影響で変化したんだよね。人間に戻ったカズキだが、そのうちサンライトハートもノーマルに戻るのかな。まあ精神面での成長もあるし、この先成長する事はあっても、戻ることはないとは思うが。
「お兄ちゃんはやっぱりお兄ちゃん、いつでも頼りになる、みんなの味方だよね!」まっぴーはお兄ちゃん好きだなあ。あんな兄なら無理もないが。でも、やっぱり猪突猛進だとは思っているのよね。


 アニメ版武装錬金はまだ全部見ていないのですが、原作つきとしては非常に良作であったと思います。
 アニメ化の悪夢といえば、俺にとっては藤崎竜封神演義アニメ版。画もストーリーもひどかった。テレビを見ながら「違ーう!」と叫びつつむせび泣いた……(誇張)。けれど武装錬金は、とても誠実に作られていたと思う。
 残念なのは再殺編のくだりでしょうか。アニメオリジナルシーンで、根来が真正面からきた直後に、剛太が「あの特性なら正面切てくることはありえない」と整合性のない発言をしたり。とっこさんがバルスカも出さずずっと観戦していたり。それ以前に火渡があまりにやっつけ仕事だったり。戦部vsパピは特に無理はなかったんですが。ヴィクター捜索隊の、模擬戦闘かと思うような迫力のなかった戦闘シーンとか。普通のシーンはテンポよいけど、戦闘シーンはいまいち間を持て余している感があったりとか。
 概ねいいけれど、オリジナル展開になるとアラが目だったなあ。ニュートンアップルのステキスーツカットも多くの無念の声を生みましたね。が、それを補ってラスト3話の原作再構成具合は素晴らしい出来合いでした。ジーベックスよ、素晴らしいアニメをありがとう!
 ゲーム、アニメ、小説ときて、次はOVAか劇場版武装錬金だねっ(無茶言うな)。