考察・錬金戦団と言う組織

 錬金戦団。「ホムンクルスの殲滅」「世界中に散った核鉄の管理・回収」「賢者の石の精製」「その他あらゆる錬金術の管理」を主な目的とする秘密結社である。闇の知識たる錬金術の根絶は難しく、またそれによって生み出される人喰いの怪物・ホムンクルスはほぼ無尽蔵。対して、唯一の対抗手段『核鉄』は最大で97個までしかない(うち3つは白い核鉄・黒い核鉄になって月や銀成市にいっている)。
 麻薬や銃の取締りと同じ(だが人的犠牲はそれ以上かもしれない)、終わりのない戦いに日夜挑み続ける組織である。が、それもヴィクターとの最終決戦で一段落を見、坂口照星の立案によって「ホムンクルスの再人間化の研究」と「核鉄の管理」の二つのみを継続する形で活動を凍結した。
 センスもくそもないネーミングだが、インフィニティ*1に寄ると英語では Alchemy Force. となるらしいので、それなりに翻案したのでしょう。直訳して錬金術軍とかしまり無さ過ぎだもんな。錬成軍とかでもよかったのではと思うが、軍という名称を公的機関でないのにつけるのも問題があったのかもしんない。
 さてそんな錬金戦団、とにかく謎の多い組織でございます。作者であるワッキーと963氏がちゃんと考えていないのか、あるいは考えていても出す暇がなかったのか。両方ありうるけど。ただ、早い段階で名前は決まっていたのに、なんでカズキが正式に戦士としてスカウトされても、すぐに名前が出なかったんでしょうね。一応、分かっている点は上記のほかに、
・【独自の教育カリキュラムを持っているので、適性があれば年齢を問わずどんな学習でもさせる方針がある(小説版『//』60p)】
 このため、18歳の千歳さんが教職課程を修了していたり、学校に行ってなかった斗貴子さんが岡倉たち3バカに追試の勉強を教えたり出来るようだ。戦部の運転免許(アニメ。漫画版では誰が運転してたか分からないんだよね)もそれで取らされたんでしょう。適性があれば歯科医師免許とか調理師免許も取らせてくれるんでしょうか。あと学習にはやっぱり、錬金術や神秘学のたぐいも含まれているんでしょうか。
・【戦士の適性試験内容は、『資質』『体力』『才能(核鉄から発動する武装錬金のタイプ)』の三つ。心と体と才能の三つが揃って、錬金戦団は初めて戦士としての訓練を認める(小説版『/Z』104p)】
 ……貴重な核鉄を試験のたびに使うのか? 凄ェ疑問。同書191〜192pでは「(核鉄は)所有者が激しく替わりすぎると、金属疲労を招く可能性がある」から、一人の戦士に複数のナンバーの核鉄を持たせない、とあるんだが。試験の時に一回ぐらいならいいんだろうか。あと、人によっちゃ発動の瞬間試験会場が崩壊しそうですね。バスターバロン(身長57mの巨大ロボ)とか、ディープブレッシング(潜水艦)とか、フライングバニー(戦闘機)とか。試験官だって存分に離れてないと危険極まりないったら。焼夷弾*2(ブレイズ・オブ・グローリー:by火渡)なんてのもあるしよ。科学技術を応用して、適性検査用の『ヴァーチャル核鉄』なんて出来たら便利なのにね。発動する武装錬金をシミュレートするんだよ。
・【戦団の構成員は、何らかの形で錬金術にまつわる戦いに巻き込まれ、親を失ったり、居場所を失ったりした犠牲者達である(ノベル版『//』52pほか)】
 剛太も、物心つく前に親をホムンクルスに殺され、養護施設(ホーム)から適性を認められて訓練を受ける事になったそうで。斗貴子さんもホムンクルスの犠牲者です。あ、カズキもそうか、巳田に殺されたもんな。ブラボーと火渡は不明ですが、犬飼のような「代々錬金の戦士」ってのは珍しいんだろうか? いやまあ歴史の古い組織ですから、そういう人も一定数いるはずでしょうが。
 世襲的に錬金の戦士を続け、自らを古参と自認する派と、使命に燃えるもと犠牲者たち新参組。そして数に限りがある上絶対的に少ない「錬金の戦士」という重要なポスト。その席を巡る争いと派閥同士の小競り合いってのは激しそうです。新参に突き上げられる古参とか、古参に押さえつけられる新参とか、そんな図式があったりとか。
 つーか核鉄最大100個現在97個ってのが少なすぎなんですよ。地球は大陸の数より国が多いんですよ。たった100個なんざ地球上の国家全部より何万倍も少ねーだろが! せめてもう一桁多くてもバチはあたらんぞ。錬金戦団が日本限定の組織ならもうちょっと納得がいくんですけどね。作中に出てくる核鉄を数えると、半数近くが日本にある事になるんだよなあ。実は他国の戦団って核鉄以外の対抗策持ってんじゃね?
 ちょっと戦団自体の話題からズレますが、核鉄の起源も気になりますね。パピがいきなり無から白核鉄あっさり作ってたわりに、「新しく作る事は不可能(製法が紛失してるっぽい)」だし。それでいて「武装錬金の発動」と「身体能力(治癒力含む)の強化」とやたら便利な機能を持った万能合金。またの名を「賢者の石」。順当に行ったら祖はカリオストロかサンジェルマンかパラケルススでしょうか。ただそれだとベタだし、特にパラなんてまたハガレンからあらぬ文句をつけられそうですね。ホーエンハイムってパラケルの本名だし。
 で、戦団。DVD7巻の感想でも述べたように、錬金戦団の階級はかなりアバウトです。往々にして、軍隊や組織というものは、歴史が長いほど複雑かつ多様化していくものなのに、シンプルすぎです(アメリカ軍の階級などを見てもらえればよく分かるかと)。しかし錬金戦団もほぼ準軍隊がごとき組織、その階級もある程度軍隊になぞらえられているのかもしれません。
 そこでキャプテン・ブラボーです。キャプテンとは(海軍)大尉のこと、つまりブラボーは正式には防人衛大尉だとするとなんか腑におちます、こう、イメージ的に。ただ、小説版を読むと彼は7年前(20歳)の頃からキャプテンと名乗っているので、実際の階級とは関係ないのかもしれませんが、どうせ材料のない錬金戦団です、この際捏造まじえて考察しちゃいましょう(もう遊んでます)。
 さて、大尉といえば中隊(=4個小隊)指揮官です。だいたい90人くらいですね。しかし錬金の戦士は最大97人なので実際に指揮できる人数はもっと少ないのでしょう。例えば戦士長時代の照星さんはブラボー・火渡・千歳のたった三人で構成される『照星部隊』の隊長を務めていました。ただ、新しく戦士長になった火渡*3は、千歳・毒島・戦部・円山・根来・犬飼以上6名の指揮を執っています。実は照星部隊ってのはあともう3人くらいいて、でもカズキ達に会うまでに殉職しているのかもしれません。実際そうだとしたら、わざわざブラボー達もそんな話題出さないでしょうし。
 なお、大尉というのは警察組織で言うと警部くらいの偉さになります。対して警部補は少尉くらいで、中尉がその間。ここまでが尉官で、その下が下士官と兵になります。戦士という階級は錬金戦団において、下士官と兵どちらの区分になるんでしょうね。ちなみに伍長なら巡査部長、二等兵なら巡査ぐらいだと思ってください。なお、鵺屋の印象ではブラボー=戦士長が大尉級なら、照星さん=大戦士長は大佐ぐらいになるんじゃないかと思います。カーネルバロンですね。ケンタッキーチキンのおじさんのカーネルは名前じゃなくて名誉大佐の称号です。
 さて、「戦士長」がだいたい6人ぐらいまでの指揮権を持つとしまして。軍隊でいうと分隊指揮官です、実際は大尉よりぐっとさがって軍曹〜曹長くらいになりますね。つまり下士官なので、この推測だと戦士はそのまま兵になるようです。だから実際に大尉、にあたるのが大戦士長(照星さん一人で錬金の戦士90名を動かせたら、それはほぼ将軍か元帥レベルの気もしますが)。まあ所帯の規模が少ないってのもあるんでしょうけど。そんなわけで結論、錬金戦団における階級は、

大戦士長=尉官級
戦士長=下士官
戦士=兵

 という感じの認識でOKかなと。少なくとも原作の印象その他だと。つうか実際問題正確な規模が分からないし。ただ、これぐらいかなと考えればOKな気がする。まさか再殺部隊は12号までいますとか言われても困るんよ。まあ、戦士という階級が下手に下士官から兵までカバーする大雑把な呼び名であってもなんだしな。
 ちなみにこの上に佐官級や将官級にあたる階級が存在したとしても、それは錬金の戦士とはまた違うと思います。戦わないで指揮だけとる奴に貴重な核鉄もたせて肥やしに出来ませんものね。査問委員会(軍法会議*4)ってのもありますし。
 しかし、作中でブラボーは班規模の指揮しか執っていませんね。彼が特定の部隊を率いているって話もないし(そして斗貴子さんが何かの部隊に所属していたっぽい事も言われてなかったような)。小説版で赤銅島に三人も戦士を投入したのに対して、銀成市には斗貴子さん一人です。あとで核鉄ナンバー52の戦士も来てますけど、斗貴子さんが斥候だったとして、隊長のブラボー含め3人でLXEと戦おうとしてなかったかな。戦士(核鉄)の貴重さを考えると、作戦は指揮官含めて「3人」が基本単位なのかもしれません。逆に言うと、(ヴィクター決戦前で人手不足のくせに)倍の7人も投入されたカズキ再殺の任務は戦団も気合を入れていたって事になります。
 また、再殺部隊の「6人」が部隊の基本規模だとすると、それを率いる戦士長という存在はほぼ片手で足りるだけの数しか存在しない事になるのかもしれない可能性があります。作中登場の核鉄は、

I(1)/『フェイタルアトラクション』/大戦斧(グレートアックス)/ヴィクター=パワード ※黒核鉄
II(2)/?/アレキサンドリア=パワード(※白核鉄化)→武藤カズキ
III(3) = LXX(70)に偽装/『サンライトハート』→『サンライトハートプラス』突撃槍(ランス)/武藤カズキ ※黒核鉄
XI(11)/『錬金力研究所』/秘密基地(シークレットベース)/?
XII(12)/『激戦(ゲキセン)』/十文字槍(クロススピアー)/戦部厳至
XIV(14)/『シークレットトレイル』/忍者刀(ニンジャトウ)/根来忍
XVII(17)/『破壊男爵(バスターバロン)』/全身甲冑(フルプレートアーマー)/坂口照星
XX(20)/『ブレイズオブグローリー』/焼夷弾(ナパーム)/火渡赤馬
XXII(22)/『エンゼル御前』/弓矢(アーチェリー)/早坂桜花→錬金戦団により回収
XXIII(23)/『ソードサムライX』/日本刀(ニホントウ)/早坂秋水→錬金戦団により回収?
XXX(30)/『サテライト30(サーティ)』/月牙(ゲツガ)/ムーンフェイス(ルナール・ニコラエフ)→錬金戦団により回収
XXXII(32)/『バブルケイジ』/風船爆弾(フローティングマイン)/円山円
XXXIX(39)/『エアリアル=オペレーター』/防毒面(ガスマスク)/毒島華花
XLIV(44)/『バルキリースカート』/処刑鎌(デスサイズ)/津村斗貴子
L(50)/『ルリヲヘッド』/兜(ヘルム)/アレキサンドリア=パワード
LI(51)/『アンダーグラウンドサーチライト』/避難壕(シェルター)/ヴィクトリア=パワード
LII(52)/『******・********5』/3人目の錬金の戦士→『ピーキーガリバー』/右篭手(ライトガントレット)/金城→ブラボー→斗貴子→『シルバースキンA・T』/ブラボー
LV(55)/『モーターギア』/戦輪(チャクラム)/中村剛太
LXI(61)/『ノイズィハーメルン』/鉄鞭(スチールウィップ)/陣内→『ニアデスハピネス』/黒色火薬(ブラックパウダー)/パピヨン(蝶野攻爵)
LXVI(66)/『ジェノサイド・サーカス』/ミサイルポッド/?
LXX(70)/『アリス・イン・ワンダーランド』/チャフ/D・バタフライ(蝶野爆爵)→パピヨン→『エンゼル御前A・T』/早坂桜花
LXXIV(74)/『ライトニングペイルライダー』/三叉鉾(トライデント)/武藤ソウヤ
LXXVII(77)/『ディープブレッシング』/潜水艦(サブマリン)/艦長(名前不明)
LXXVIII(78)/?/?/航海長(名前不明)
LXXIX(79)/?/?/水雷長(名前不明)
XCII(92)/『キラーレイビーズ』/軍用犬(ミリタリードッグ)/犬飼倫太郎
XCV(95)/『ヘルメスドライブ』/探知機(レーダー)/楯山千歳
C(100)/『シルバースキン』/防護服(メタルジャケット)/キャプテン・ブラボー(防人衛)
?/『フライング・バニー』/戦闘機/?
?/『バーバリアン・ハウンド』/探知犬(ディテクタードッグ)/故・犬飼老人
?/『ギガントマーチ』/戦闘鎚(ウォーハンマー)/西山君

 以上の数字は、人型ホムンクルスや信奉者と持っていた物や未回収だったものも含むわけですが、えーっと。『原作24個』+『アニメオリジナル2個』+『ノベルオリジナル4個』+『ゲームオリジナル1個』計31個*6
 『核鉄最大100個』の原則を踏まえると、戦団ってあと幾つ核鉄あるんだ? 未登場70個の何割が行方不明・回収済み・使用中なんでしょうか。つーかやっぱ錬金の戦士最大97人とか人材少なすぎだよ錬金戦団ッ!
 まあ100年パワード一家の捜索とかしていた関係で、日本は戦団にとってそれなりに重要な土地のようですし。もう20個ぐらい日本にあるとして、格鉄の半分が亜細亜に……。その場合でも、防人火渡含めて、戦士長ってやっぱ5人ぐらいしかいないんですかね。というか、もしかしたら「戦士長」なんて作中に登場した二人しか存在しないのかもしれない。HAHAHA。
 結論:やっぱ和月は戦団の細かい設定なんて決めてないんだ! ちくしょー。

*1:『完全公式ガイドブック 武装錬金∞―ブソウレンキン インフィニティ―』。でも俺は未読。

*2:の炎?

*3:原作73話 照星「そろそろうまくやれるかと思って任せてみたら…」

*4:再殺部隊は反逆者の始末ってのが主な任務っぽいのですが、命令不服従で処刑ってのもあるんですかね。

*5:ノベル版のネタバレになるため伏字。

*6:犬飼の核鉄だけは、故・犬飼老人の物を引継いだ可能性もありそうですが。