野口賢, 冲方丁『サンクチュアリ-THE幕狼異新- 』1 その他最近読んだ漫画

”侍”…その一言で身が燃える 魂魄が冴え渡る
 一介の村民に過ぎねえ己に与えてもらった
 決して醒めねえ”夢想(ゆめ)”さ!

サンクチュアリ-THE幕狼異新- 1 (ジャンプコミックス デラックス)

サンクチュアリ-THE幕狼異新- 1 (ジャンプコミックス デラックス)

 冲方丁原作、幕末異能バトル漫画。
 遠見の近藤いさみ(♀)、鬼を召喚する土方副長、予知(さとり)の沖田、火属性の藤堂、氷属性の永倉、壁抜け山崎、ヒーリング担当斎藤、鉄壁防御の島田、気息を読む山南、かまいたち井上、幻術の谷――と新撰組ファンにはおなじみの面々がいかにもな超常能力を持って、これまた怪異なる『八瀬童子』と暗闘を繰り広げる。
 確か先月出たはずなのだけれど、冲方スレ(ラノベ板)では影が薄く、はてダでもあまり言及されていない。ような気がする一本。まあ新撰組で異能バトルという題材からして手垢がついてますしね。
 冲方ファンなのでとりあえず買っておくか、ぐらいのもので、内容はまあ悪くないんですが。絵柄が劇画寄りで、実は若干キャラの顔が見分け付きづらいです。
 白髪鷲鼻にデザインされた山崎とかはまだ分かりやすいんですが、藤堂と土方並べられても、あちこちページをめくって「あ、こっちか」となる始末。
 なんというか漫画的な分かりやすい記号が足りないデザインしているというか、ぶっちゃけ地味かもしれない。敵となる八瀬童子自体は、そもそも根本から化け物の風体してるんでまだ分かりやすいですが。
 話の方は、新撰組のキャラと能力紹介に終始している部分が多く、物語がしっかり動くのは次巻からというところ。うぶちん原作漫画といえばどれもこれも完結しない印象なんですが今回は大丈夫なんですかね。
 それはそうと汁粉の話とか荷物持ちとか、日常の端々での会話は活き活きして、着実なキャラ立てをしてくる。んで漢字の多い技名とか呪文とか蘊蓄とか、『黒い季節』を書いたうぶちんだけはあるよなーなどと思ったり。
 冲方丁原作というだけでも買いなんで、次巻も楽しみにするとします。 

矢上裕アゲハを追うモノたち』1

 怪しいヤツは端から 脱が〜す!!

 エルフを狩るモノたちで連載デビュー、大ヒットした著者の自家パロディ的な新作。もう二巻出てるらしいけれど、次巻は別にいいかなあ。
 内容はエル狩の主人公とうり二つ(作者も、傷痕を足せばこの主人公になると断言)の恭介が、脱獄死刑囚アゲハを追うというもの。で、アゲハ(美女)は変装の名人ですが背中に蝶のタトゥーがあるので、怪しいヤツを片っ端から脱がしてタトゥーを確認し、アゲハを見つけ出すんだぜ! とゆー……。
 えーとあの、変装の名人ならタトゥーを隠すぐらいはするんじゃないかとツッコミたいがどうか。エル狩は魔法的な手段でプリントされた文字を探すためだったから整合性あったんですけどねえ。
 作者がこれの前に出した作品『打撃女医サオリ』(未読)は人気が奮わなかったのか二巻で終わってしまい、自ら出世作のパロディを行うという姿勢には色々と勘ぐりたいものがある。
 しかし脱がしまくる設定のため明るいお色気がぽんぽん飛び出しつつ、ギャグも抜かりがない。ミス銀河の何段仕込みだっていうネタの周到さとかも、さすがベテランという感じです。
 で、それだけ出来るのになぜ今さらリサイクルな作品を世に出そうとするのかで頭を悩ませるわけで。後書きでも作者自身、そのことには爽やかに言及しているしなあ。
 あとはまあ、絵の変化が気になりました。絵柄自体は同じなんですが、記憶より粗いような印象。ぶっちゃけ、軽く下書きっぽいような雑さを感じなくもない。
 余談。舞台がテラフォーミングされた火星なんですが、登場人物は皆あの重力に適応してしまっているのか、それとも火星の重力自体いじるチート開発だったのか。それだけ私、気になります。

大和田秀樹『ムダヅモ無き改革』4

 それだけは…それだけは!! 歴代265人の全教皇が許さぬ!

ムダヅモ無き改革 (4) (近代麻雀コミックス)

ムダヅモ無き改革 (4) (近代麻雀コミックス)

 今回の目玉は、スーパーアーリア人!!!!ですかね。
 きくたけリプレイでの「アーサー王アーリア人だ!」とかに腹抱えて笑った覚えがありますが、この展開は腹筋を雑巾絞りしないと死ぬかと思った。しかしあんなヒトラーたんやだお……。
 とりあえず話の大半はヒトラーvs教皇についやされてました。ああベネディクト16世が最後のエメラルド‥スプラッシュに。とうとう量子力学とかイタコとか持ち出して来ちゃったよ。
 ヒトラーに勝ったという面子には蝶納得ですが、まああの連中以外はありえませんよね。どいつもこいつも悪役面で笑う。欲を言えばOVAでのマオ主席並の迫力が欲しかったかも(だって三人とも微妙に顔の中身が同じ)。
 そして今回はイゾルデたんのパンチラサービス×2つき。パンツにもハーケンクロイツなんだ……。ロンメルさん次回死にそうだなしかし(つか生き返らせてたのか)。
 今回のオマケは擬人化牌の四コマ(かわいい)と、プーチン外伝、そしてなぜか北斗の拳漫画。拳王親衛隊も可哀想だな……w

松本規之古橋秀之『黒きレ・ヴォルゥ~仮面の怪盗少女~』上下

黒きレ・ヴォルゥ~仮面の怪盗少女~ 上 (ドラゴンコミックスエイジ)黒きレ・ヴォルゥ~仮面の怪盗少女~ 下 (ドラゴンコミックスエイジ)
黒きレ・ヴォルゥ~仮面の怪盗少女~ 下 (ドラゴンコミックスエイジ)
黒きレ・ヴォルゥ~仮面の怪盗少女~ 上 (ドラゴンコミックスエイジ)
 数年ぶりに『タツモリ家の食卓』を読み返し、初読当時よく理解できなかったSF設定やらなんやらを見て改め古橋作品の魅力に開眼。そーいや漫画原作やっているらしいぜーと早速購入。
 したら原作やのうて原案・設定協力だったんですが、古橋ティストがそこはかとなく感じられるので結果オーライ?
 内容は、まあホームズvsルパンに見せかけて、実はルパンvsナチスという古き良き時代の冒険活劇。舞台は主に豪華客船。ポン刀メイド、鉄兜メイドズ、女装少年、武術の達人ホームズ、&ワトソン(♀)、サイボーグドイツ軍人などなどの面子が勢揃い。
 主人公のアリエルは父・ルパンの死を受けて彼の伝説を絶やさぬため二代目ルパンとして活動する女の子。双子の弟・モーリスの協力を得て精力的に行動します。
 アリエルはちょっと前向きというか強気というか行動的過ぎて、私はやや苦手なヒロインですね。モーリスに感謝していたり、彼に何かあるとブチ切れたりと依存性を見せたりはしているからまだ緩和はされてますが。
 一方のモーリスは、なんでそんなにアリエルを手伝いまくるのかよく分からないのが不満。アリエルの目的意識はメチャクチャはっきりしているんですが、モーリス当人の意志はいまいち伝わってこなかった。
 そういえば「空でも飛ばない限り〜」のシーン、アリエルは何か凄い身体能力でも秘めているのかと思ったら違ったw あのシーンって何か分からないようギミック使ってましたっけ?
 あとバネ足の仕掛けを見てスプリンガルドを思い出す。
 さて、一番好きなキャラはドルー・スピーズ伯爵でした。
 最初は単なるおバカ貴族と思いきや、裏の顔を見せたり食わせ者だったりして。大佐に啖呵切るシーンは最大の見せ場のはずなんですが、あれがもうちょっと迫力とか演出を付け足して欲しかったなーと不満な限り。
 海の男になるようだが、体力とか付いていくのかしら……。
 他、なぜか美女になっているワトソンとか、バリツ使いで武術の達人になってるホームズとか、メイドさんのサムライぶりとかまあ好きだねえ〜という感じで。バリツの解説シーンはどうしても笑ってしまう。
 全体のストーリーはやや慌ただしく、ちょっと物足りないような気もします。続編を出そうと思えば出せる材料は揃ってますが、出るかどうかはあまり期待しないでおこう。
 終始テンションの高さを保っているので、何も考えずバーッと読むには適してる。痛快娯楽快作というところですね。二時間モノのOVA見たような感じかな。
 そういえば一人、なんで居たのかよく分からんキャラがいまいたが、後書きを読むとあの人ってつまり――……、