手元にある小説ハウツー本まとめ。

 気がつくと結構たまっていたので、ここらで纏めてみることにしました。
 ちゃんと読んだ物もあれば読んでない物もあり、お役立ち度はそれぞれ。小説なんて独学で充分だぜー! なんて思っていた時期もあったけれど、行き詰まってくると先達はどうやってきたんだろうと知りたくなるものでして。
 ただまあ、起承転結がどうのアイデアの出し方がどうのって小手先の技術自体はいらないんですよね。一応十年来書いてきていると……そういう話ってネットで探してもすぐ拾えるし。
 だから業界の情報とか、作家へのインタビューとか、精神論・心構えのほうが読み応えあります。ストーリーメーカーみたいに、覚えておくと役に立つ技術なんかもありますけど。
 長くなったので畳んでみました。

冲方式ストーリー創作塾

冲方式ストーリー創作塾

 多分、最初に買ったやつ。購入は三年ぐらい前だったか。新人賞への投稿を初めて二年目だけど、最初に投稿した作品(通称・黒暇)を書くときお世話になった。まあ結果は一次落ちだったんですけどね。
 えっと、正確には初投稿じゃなかったんですが、一回目の投稿作品(電撃一次落ち)は、サークルで書いた連載小説を長編に纏め直して送ったものでした。だから純粋に、投稿用かつ長編作品ってのは黒暇が初めてだったという。
 持っているハウツー系では、数少ない全編読み込んだ本。冲方丁好きってのもありますけれど、プロットとか載っているのが興味深くて良かったです。プロット以外にも、作品をつくるまでの思考過程とか色々あって。
 内容的には精神論であって、終わり近くにあるQ&A以外はあまり技術的な話はやってません。とはいえ、小手先の技術論だけなら学生時代に図書館で読んだから別にいらんし。
 文庫本買ってないけどどうしようかなあ。


冲方式アニメ&マンガ ストーリー創作塾

冲方式アニメ&マンガ ストーリー創作塾

 上記の続編。買ってはみたけれど、今度はほとんど読んでいない。まあ冲方らしい文章見るのは楽しいんですが(立ち上がるとは〜のくだりとか)。ボクシングする主婦の企画を立ち上げる脳内会議の様子とか、一部をつまみ食いだけして終了。
 前作は小説中心だったのですが、こちらはアニメ脚本や漫画原作関係の話。やはり精神論であって技術論ではない。声優のスケジュールその他の都合もろもろをいかにくみ取って脚本を書くかとか、ちょっとしたクイズなんかが混じっているのが苦手。


物語工学論

物語工学論

 新城カズマ好きなので買ったけれど、続編出るんかなこれ。
 内容はほぼ読了。これについては、以前の日記でちょっと書いたのでそっちをそのまま引用する。

 ああ、角川といえば新城カズマ『物語工学論』を購入しました(プルートゥ八巻セットと一緒に)。入門編ということでキャラ造りのお話なんですが、類型として示される七つのタイプが実に懐かしいw
 本書に登場するのは、「さまよえる跛行者」「塔の中の姫君」「二つの顔を持つ男」「武装戦闘美女」「時空を超える恋人たち」「あぶない賢者」「造物主を滅ぼすもの」、です。PBM界隈やTRPGをかじった方なら聞き覚えあるんじゃないかな?
 エルスウェア(新城氏の会社)が主催していたPBM『狗狼伝承』では、用意された類型の中からメインとサブを一つずつ選ぶというキャラクターメイキング方式をとっていました。
 で、上記の七つの他にあったのが御簾の陰に立つ者・詐称する道化師・幼い後継者・魔法使いの弟子・導く賢者。他に双子・兄弟たちってのもあったけれど、これは時空を超える恋人たちと併合されたような気がする。あとあぶない賢者、はこっちではあぶない博士、でした。
 で、TRPG『特命転攻生』(キーヴィジュアルを広江礼威が担当している)にもこの類型論が見られるんですが、こちらはキャラクターメイキングではなく、敵キャラを設定するためのチャートに使用されたのみでした。使用されているタイプは工学論とほぼ同じですが、「塔の中の姫君」が「捕らわれの者」、「あぶない賢者」が「あぶない科学者」、「兄弟たち」や「双子と両性具有」が追加されています。あと男、が者、とか。もの、が者、とか微妙な変化とかも。
 狗狼伝承が00年、特命転攻生が01年なので、結構年季の入った論ですな(いや普通か?)。
 ちなみにこの本は、オビに「賀東招二のオススメ!!」とありまして、巻末にお二方の対談も載っています。
 そこでの新城さんとのやりとりで、

新「君の今後の予定は? 『フルメタ』最終刊いつ出るの?」
賀「この本が出る頃(2009年8月)に出ているかどうかは……たぶん出てません。」

 なんてのがあって思わず苦笑。なんか今スランプですとか他人事じゃないのであれですが、新城さんとカンヅメなのか……散歩男爵(新城氏のHP)で対談の後日談的なものが載っているようだし、久しぶりに閲覧してみようかな。
 って、気付いたらMixi&はてダに移動なのか。

 そして出てきたのはドラグネット・ミラージュ改稿のコップクラフトだったという……。シノフの絵好きだったのにい。100万ドルの恋人から続きが読めるのはいいんですけどね。しかしこのお二人も付き合い長いな。
 個人的に一番面白かったのは、補章B「物語について」でした。
 冒頭には「本書を実用書として使用するにあたっては、以下の文章を必ずしも読む必要はない」ってあるんですけどね。物語とは何か、キャラクターとは何か、言葉とは。そういった素朴な疑問に立ち返ってのお話。新城的哲学と思えばいいのかな?
 あと、各キャラクター類型には「この類型にあてはまるキャラのパターン」表がついていて、これが中々便利そう。
 それと巻末の参考資料一覧「これだけは読んでも/観ても損はない、「物語づくり」の勉強になる先行作品群」もためになります。紹介の仕方が新城さんらしいユニークな文で、なおかつ紹介された資料が読みたくなることうけあい。


 こちらも新城カズマ。「ラノベとはなんぞや? 私が書いているのは本当にラノベなのか? 私はラノベが書きたいのか?」と悩んでいた時期、購入してみた。小説ハウツー本とはちっと違うね。


プロ作家になるための四十カ条 (ベスト新書)

プロ作家になるための四十カ条 (ベスト新書)

 なんか著者の名前に聞き覚えがあるなあと思ったら、以前見かけた「お金を取ってプロットとかの批評をしてくれるサイト」の人だった。しらべるとなんか恐ろしい噂ばかり出てくるんだが……(目ん玉飛び出るストロングスタイルって、どこまでマジなんだろう)。
 新人賞は減点方式とかそれなりに面白いこと書いてあったんで、一通り読んだような覚えがある。もちろんだがライトノベルではなく、一般小説向きのハウツー本。


 一時お世話になった作品。内容は九割方読んだんじゃないかな。30の質問に答えるだけで物語が作れる」というストーリーメーカーQ&Aはわりと話題になった覚えがある。
 確かラノベ作家志望者にもよく紹介されるんじゃなかったかな。実際は答えるのにかなり手間がかかるし、そもそもどういう話が書きたいかってヴィジョンがないとどうしようもありませんが。
 本書の後で魔王14歳さんのレビューを読んで「これは創作論じゃなくて批評論」というお言葉でぬえやは目が覚めた、なんて苦い思い出のある一冊。でもそうよね、キャラクターメーカー同様、姥皮とか民族学やら神話論やらのレベルまで考えていちいち創作している人は(普通)いないわな。 しかしキャラクターメーカーはストーリーメーカーほど熱心に読んでない。


ライトノベル作家のつくりかた―実践!ライトノベル創作講座

ライトノベル作家のつくりかた―実践!ライトノベル創作講座

 ライトノベル作家へのインタビューがおそらく本書の目玉。なぜか二巻が出ているが、別のインタビューでも掲載しているのかな。
 全七章中、二章から五章(六章は座談会)は既に知っていることばかりだった(ラノベ業界ってこういうのだけど、それでも作家になりたい? とか、創作の基礎知識とか、応募と持ち込みの心得とか)。
 つか表紙に応募や持ち込みのコツ教えますって、それただのルール・マナーレベル……。
 ただしカバーを外してひっくり返すと(カバーの下ではない)、浅井ラボライトノベル作家人生スゴロクというオマケがついていきます。
 ああ、あとこれの紹介でFrieve Editor知ったんだったなあ。


五代ゆう&榊一郎の小説指南 (ホビージャパンMOOK)

五代ゆう&榊一郎の小説指南 (ホビージャパンMOOK)

 指南とあるんだが、基本は五代さんと榊さんが編集者をまじえて対談していいる形式。気になるところだけつまみ食いしました。で、一番面白いのが「実践編」で、「三題噺」に挑戦し、お話を作っていく過程。
 榊さんのは企画書形式で載っていますが、本書の後半は三題噺をもとにした五代さんの小説が締めている。普通に面白いSF(かつ悲恋)だったし、あとついでにノベルジャパン大賞講評会ってのも収録されているんで。お値段分は取れたかな?


物語編集力

物語編集力

 松岡正剛が書いていると思って買ったら、監修だけだったという罠。通販ではちゃんと情報を確認しましょう。


書きあぐねている人のための小説入門 (中公文庫)

書きあぐねている人のための小説入門 (中公文庫)

 これと一緒に佐藤亜紀『小説のストラテジー』を注文したけど、まだbk1に入荷されない。
 でもまあ、これもかなり面白いです。今、ちまちまと読み進めている最中なのですが、まずマニュアル本ではない。「ストーリーのしっかりしたエンターティメント小説」を書くものじゃないみたいですしね。
「登場人物に役割をあたえるな」「書くとき頭を小説モードにするな」などなど、入門と名がついているのとは裏腹に、初心者からある程度書き慣れた人まで指南してくれる内容です。
 哀しい話を感傷的に書くなとか、それまで自分が考えていた小説観とは違うものが豊富で、面白い。異質すぎて受け入れられないということもなく、じっくり考えていると、確かにそうと納得できる、著者の小説に対する深い考えが述べられている本です。
 ただまあ、一般的なラノベを書こうとするには向かない内容の本ではあるかも。


 まとめてみると、結構な量になりました。物語編集力、五代ゆう榊一郎の〜、アニメ・マンガ・ストーリー創作塾、ラノベ作家のつくりかた、あたりはほとんど読んでなくてひどい(笑)。
 しかしハウツー本はマンセーしてないで、複数読み比べて適度に覚えたり忘れたりするぐらいがちょうどいいのよ。
 でも最近は、ネット上のラノベ作家志望が集まるサイトの内容をハウツー本として出版したりするんですよねえ。長年ワナビを続けたものの偏執と、実績のなさとが絡み合って非常にあやうげなんですが、そこまでしてハウツー出す必要あるのかしら。ラノベ業界。まあその本が出たのは少し昔のことだし、いいか。
 でも地元って結構田舎だったのに、そんな所さえ少し大きな書店のラノベコーナーにもハウツー本が置かれているのを見ると、どうしようもなく生暖かい気分になるのよさ……。