ジョン・スコルジー『老人と宇宙(そら)』

「じゃあ誓約だ」わたしはいった。「いついかなるときも、心はオイボレ団とともに。見てろよ、宇宙」

老人と宇宙(そら) (ハヤカワ文庫SF)

老人と宇宙(そら) (ハヤカワ文庫SF)

 75歳以上の男女しか入隊できないコロニー連合軍の戦い! 作者がライター業を経てブログからスカウトされ作家デビューという経歴といい、「『宇宙の戦士』21世紀版」というアオリに相応しい作品でした。
 脳内コンピューター・ブレインパルや、高度なナノテクを応用した戦闘スーツ、およびライフルなど各種の高性能な装備。そして多様なエイリアン種族といったギミックの数々が面白い。ビーントークの名前で軌道エレベーターも出てきますしね。
 入隊できるのは老人だけということで、ちゃんと兵士として戦えるような技術も用意しているんですが、そうした「奇をてらった」だけでなしに、ちゃんと説得力を持たせているのがいいです。
 戦えるよう「全面的なオーバーホール」を受けた兵士たちは、もはや人間ではない。それでも、コロニーや地球の人々に愛情を覚え、そのために戦うことを理解出来る精神。それを、長年の経験と理性に求めた結果が老人の採用なのでした。
 また、主人公が歳経た男性であるって感じが随所にあるのもやはりいいです。最初のほうだけですが、息子との関係とか。亡くなった妻のこと、その結婚生活のことをしんみり思い出していたりとか。
 ジョンの愛妻家っぷりが素晴らしいし、それだけにキャシーさんは素敵な女性だったのだろうなあと伝わってくる。学生時代からの知り合いってのは中々ロマンチックに過ぎる気もしましたが。
 75歳にしてはわりと精神が柔軟すぎる気もしましたがw
 新兵教練が意外と早く終わったり、主人公がどんどん戦功あげてもてはやされるのもまた、「今風」なのかもしれない。二連射ルーチンの件は重大なポイントでしたが、まさに「あまり手柄を立てすぎると嫌われる」。
 別に主人公マンセーがきついと言うわけではなく、気になる人は気になるかも? というレベル。ジョン・ペリーは好きですよ。
 また、宇宙の戦士だと主人公の友人で一緒に志願したカールがさらっと死んで、あの人なんだったんだろうという感じだったんですが、本作では主人公の仲間が遠い戦場で死んでいく描写にもちゃんとページ割かれていたのが良かったです。
 ゲイのアランは「星座」で一気にキャラ確立して好きになったなあ(しかし「三角関係」てあーたw)。トマスが死んだ時は、異星で変なもの食ったせいだと思ってましたサーセン。あれは悲惨すぎる……。スーザンも悲惨さはかなりのものでしたが(全身火傷で化け物に飲み込まれ深海の水圧で…)。そしてマギーの勇気に乾杯、この人無口系キャラの印象ばかりだったのに。
 宇宙の戦士はどうも思想的・政治的な部分が強かった感じですが、後書きのほうであるように本作は「娯楽作品」をもっと意識した造りなのが読みやすくていいです。平行宇宙についての言及とか、SFしてるぜという。
 ラストも爽やかでしたし、戦争は続くけどハッピーエンド。六月に三巻も出たばかりですし、続きを買おうと思ってます。